日本では年金制度が整えられており、一定以上の年齢になると、年金が受給できるようになります。受給開始年齢も、年金額を決定する要素の一つです。   なかには「いつ死ぬか分からないから」という理由で、年金の受給年齢を早めようとする人もいるでしょう。今回は、年金の繰上げ受給を選択する人の割合などについて紹介します。

年金を繰上げ受給している人の割合

厚生労働省年金局の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の繰上げ受給を選択した人は、約15万6000人でした。割合にすると、受給権者の0.6%です。国民年金の繰上げ受給を選択した人は、約174万人となっています。割合は、受給権者の27.0%でした。
 
※老齢厚生年金の繰上げは老齢基礎年金の繰上げと同時に行う必要があります。
 
ちなみに、厚生年金の繰下げ受給を選択した人は約32万2000人(受給権者の1.2%)、国民年金の繰下げ受給を選択した人は約11万8000人(受給権者の1.8%)となっています。
 
厚生年金の繰上げ受給率は、平成29年度は0.2%でしたが、毎年1ポイント程度ずつ上昇しています。一方で、国民年金の繰上げ受給率は減少傾向です。平成29〜30年度は30%を超えていましたが、令和元年度に29.5%となり、令和3年度ではさらに低下しました。
 

年金の繰上げ受給のメリットは?

年金は、原則として65歳から受給できます。しかし、繰上げ受給を選択すると、最短で60歳から受給可能です。ここでは、年金の繰上げ受給の選択によるメリットをまとめてみましょう。
 

・早めに受給を始められる

「いつ死ぬか分からないから」という理由で年金の受給を早めるのは、選択肢の一つとなるでしょう。支払い続けた保険料を早めに受給し始められる点は、繰上げ受給のメリットです。
 
仮に65〜70歳ほどで亡くなってしまうとすれば、早めに受給を開始しておく方がよいでしょう。もちろん、何歳で亡くなるのかは分からないため、実際に得をするかどうかは結果次第です。
 

・貯蓄の切り崩しを遅らせられる

老後の生活のために貯蓄をしている人は少なくありません。60代前半で、まだ働きながら年金を受給すれば、人それぞれではありますが、貯蓄の切り崩しを遅らせられるでしょう。特に、自営業者や非正規労働者で、収入が十分でなかったり不安定であったりする人にとってメリットとなりえます。
 

年金の繰上げ受給のデメリット

年金の繰上げ請求を一度すると、取り消しや修正は行えません。それ以外にも注意点がいくつかあります。ここでは、年金の繰上げ受給のデメリットをまとめます。
 

・一定の減額率が続いてしまう

年金の繰上げ受給を選択すると、本来受け取れるはずの年金から減額されます。受給開始のタイミングにより減額率は異なりますが、この減額率が一生涯適用されてしまう点には注意が必要です。亡くなる年齢によっては、受け取れる年金の総額が減ってしまいかねません。
 

・障害年金を受け取れなくなる

繰上げ受給をしたあとに障害状態になったとしても、原則、障害年金は受け取れません。
 
障害年金は、老齢年金の支給開始前、つまり65歳以前に障害を負ってしまった人(その原因となる病気などの初診日が65歳未満の人)に対する社会保障制度です。年金の繰上げ受給をすると65歳に達したとみなされるため、事後請求ができなくなります。
 

・国民年金への任意加入や保険料の追納ができない

年金の繰上げ請求後には、国民年金に任意加入ができず、追納もできなくなります。年金受給額を増やせる手段がなくなってしまう点にも注意しつつ、繰上げ受給をするかどうかを決めなければいけません。
 

老後のことを考慮したうえで繰上げ受給を決断しよう

年金の繰上げ受給を選択する人は、厚生年金では1%以下、国民年金では30%弱でした。ただ、厚生年金の繰上げ受給率が増加傾向にあるのに対して、国民年金の繰上げ受給率は減少傾向にあります。
 
年金の繰上げ受給は早くに年金が受け取れる一方で、毎月の受給額は本来よりも減ってしまう点はデメリットでしょう。メリットとデメリットを丁寧に比較したうえで、繰上げ受給を選択するかどうかを判断しなければいけません。
 

出典

厚生労働省年金局 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー