夫が自営業者の場合、残される家族への保障は手厚いとはいえません。夫が亡くなったときに、どのようなお金がどのくらい受け取れるのだろうと不安を感じる人もいるでしょう。   第1号被保険者の夫を亡くした、18歳未満の子どもがいない妻が受け取れる可能性のあるお金の一つに「寡婦年金」があります。   本記事では、寡婦年金とはどのような制度なのか、受け取れる人の条件や支給額、寡婦年金以外の選択肢があるときの考え方を分かりやすくまとめました。

寡婦年金を受け取れる条件

寡婦年金とは、自営業者などの第1号被保険者であった夫が亡くなったときに、遺族年金を受け取れない妻に対して60〜65歳になるまでの間に支給される年金です。寡婦年金を受け取るには、夫と妻の双方が、次に挙げる条件を満たしている必要があります。
 

■夫の要件

・死亡日の前日時点で国民年金の第1号被保険者としての保険料納付期間および免除期間が10年以上ある
・老齢基礎年金・障害基礎年金の受給歴がない

 

■妻の要件

・夫との婚姻期間(事実婚を含む)が継続して10年以上ある
・夫の死亡時点で60歳以上
・夫の死亡時点で夫に生計を維持されていた
・老齢基礎年金を繰上げ受給していない

 
表題の女性の場合は、婚姻期間と年齢の要件は満たしています。そのため、夫側の要件に加えて、夫に生計を維持されていたこと、老齢基礎年金を繰上げ受給していないことの2つを満たしていれば、寡婦年金の受給資格があります。
 

寡婦年金はいくら受け取れる?

寡婦年金の支給額は、夫が65歳から受け取る予定だった老齢基礎年金の金額の4分の3です。
 
65歳から受け取る老齢基礎年金の金額は、40年間1回も欠けることなく満額の年金保険料を納めた場合の年額79万5000円が最高です(令和5年度の場合)。寡婦年金の支給額は老齢基礎年金の4分の3なので、年額59万6250円が最高額となります。月額に直すと5万円未満でしかなく、それほど大きな金額が見込めるものではありません。
 
仮に亡くなった夫が年金保険料を20年しか納めていなかった場合は、受給予定の老齢基礎年金は満額の半分の39万7500円です。このケースの寡婦年金は年額29万8125円、月額にして約2万5000円となります。
 

【注意】寡婦年金と遺族年金・死亡一時金・自分の年金は併給できない

年金には、「1人1年金」の原則があります。同時に複数の年金を受給する権利が発生した場合は、いずれか一つを選択して受給しなければなりません。
 
例えば、自営業者の夫が亡くなったときに18歳未満の子がいれば、妻には「遺族基礎年金」の受給権も発生します。遺族基礎年金額は、「79万5000円+子の加算額」(67歳以下の方)で寡婦年金より大きいため、このケースでは遺族基礎年金を選択するのが一般的です。
 
また、第1号被保険者の遺族が受け取れる可能性があるお金に「死亡一時金」がありますが、これも寡婦年金との併給はできません。死亡一時金は、12〜32万円が一度限り支給されるだけのため、多くの場合で寡婦年金を選択するほうが得になります。
 
しかし、自分の年金を60〜65歳になるまでの間に繰上げ受給する場合は、事情が変わります。老齢年金の繰上げ受給を選択すると、寡婦年金の権利は失われます。繰上げ受給によって得られる年金額と寡婦年金を比較して、メリットのあるほうを慎重に判断しなければなりません。
 
ただし、繰上げた老齢基礎年金と死亡一時金は同時に受給可能です。そのため、あえて死亡一時金を選択して自分の年金を繰上げ受給する方法も選択肢となるでしょう。
 

寡婦年金やその他の年金・一時金の条件や支給内容を確認しよう

自営業者の夫が老齢年金を受給する前に亡くなった場合、保険料納付期間や婚姻期間などの条件を満たしていると、妻は60〜65歳になるまでの間に寡婦年金を受給できる可能性があります。
 
寡婦年金は遺族年金や死亡一時金、自分の老齢年金などとの併給ができません。ほかの年金の支給内容をよく確認したうえで、どのお金を受け取るのが最も得なのかをよく検討することが大切です。
 

出典

日本年金機構 寡婦年金
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 死亡一時金
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー