一定の要件を満たした会社員は一般的に年休や有休と呼ばれる「年次有給休暇」を取得できます。実際に勤務しなくても賃金が発生し、体調を崩して働けない時だけでなく、休みをとって旅行をするといった使い方もできます。   有休は「1日単位」だけでなく、会社によっては「半休」や「時間休制度」が導入されて午前や午後、あるいは1時間単位で休めるケースもあります。臨機応変に休みをとれるのはうれしい一方で、休んだことで仕事がたまって就業時間内に終わらせるのが難しいこともあるかもしれません。   本記事では、半休制度を活用して「午前休」を取得して午後から勤務したものの、翌日の会議資料作成のために2時間残業したケースを想定します。このような場合は残業代がつかないのか、それとも請求できるのでしょうか。

有給休暇は実労働時間に含まれない

「年次有給休暇を取得すると実際に働いたものとみなして処理される」と考えている人もいるかもしれませんが、有給休暇は実労働時間には含まれません。欠勤ではなく法定労働時間を勤務したものとして給料の計算はされますが、実際に働いているわけではないからです。例えば「1日有休」を取得すると、当日実際に勤務した時間は「ゼロ」です。
 
そもそも有給休暇は本来必要な労働の義務を免除して心身のゆとりや疲労回復などにつなげるために付与されるものであり、実際の労働時間に算入するのは趣旨に反するといえるでしょう。労働基準法でも「有給休暇を実労働時間に含める」趣旨の内容は規定されていません。
 

有休取得して残業したら「残業代」は発生する?

今回のケースのように、1日のうちの部分的に有休を取得した場合、通常よりも業務が遅れて就業時間を超えて残業しなければならないこともあるでしょう。その場合は一般的に残業代といわれることが多い割増賃金を会社側が支払わなければならないのでしょうか。
 
結論からいえば、実際に勤務した時間と法定労働時間の関係によって割増賃金の支払いが必要かどうかは決まります。例えば、今回は以下のようなケースを想定してみましょう。
 

・所定労働時間:9時から18時(休憩1時間)
・午前休取得時間:9時から14時
・午後の労働時間:14時から20時(実労働時間6時間)

 
通常は、実際に働いた時間が法定労働時間を超えると25%以上の割増賃金を支払わなければなりませんが、今回は6時間なので基本的に支払う必要はありません。一方で、所定労働時間を超えて勤務しているので、会社側は「通常の賃金」を支払う義務があります。
 
つまり一般的に「残業代」と呼ばれる割増賃金を受け取ることはできませんが、割増がない通常の賃金は働いた分だけもらえます。
 

就業規則を確認する

基本的には「1日の実労働時間が法定労働時間を超えなければ、割増賃金の支払いは不要」ですが、就業規則に別途規定がある場合は割増賃金を受け取れる可能性もあります。
 
就業規則の規定内容と労働基準法や民法などの法令で定められている内容が異なることがありますが、労働基準法92条1項により「法令又は当該事業場について適用される労働協約」に反してはならないとされています。
 
同法13条においても「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効」とされているため、就業規則で定める内容が労働基準法の規定を下回る場合は法令基準が優先されます。
 
一方で、就業規則の内容が労働基準法の規定を上回ってはいけない決まりはありません。そのため例えば、「始業前や終業後に労働をした場合は割増賃金を支払う」といった「労働者にとって有利な規定」があると、実労働時間にかかわらず「残業代」がもらえる可能性もあります。
 
勤務先の就業規則を確認し、よく分からない場合は総務や人事担当者に問い合わせてみましょう。
 

まとめ

本記事では、半休制度を使って午後から勤務したものの、当日中に終わらせなければならない業務があり残業した場合は「残業代」が発生するのか解説しました。
 
1日の実労働時間が法定労働時間内におさまっていると、たとえ定時を過ぎて働いたとしても「割増賃金の支給対象にはならない」可能性もあります。就業規則や雇用契約書なども確認したうえで、不明点は担当者に聞いてみてください。
 

出典

厚生労働省年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。
厚生労働省 しっかりマスター労働基準法-割増賃金編-
e-Gov法令検索 労働基準法
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー