老若男女問わず、老後の生活がどうなるか思案している人は少なくありません。若い世代であれば「今から十分な老後資金を貯めておきたい」と考えるはずです。定年を間近に控えた世代であれば「もうすぐ給与収入がなくなるので支出の調整をしなくてはいけない」と不安になっているかもしれません。   今回のケースでは、67歳の父親の病気が原因で年金のみの収入になってしまう家庭が登場します。一定額の貯金があるとはいえ、年金だけでは難しいのではと心配になっているようです。   本記事では、年金のみの収入で夫婦2人世帯が生活していくことは難しいかどうか、政府統計を基に解説します。

夫婦2人のみ無職世帯の収支状況

総務省統計局の「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯における1ヶ月の平均的な収支バランスは以下の通りです。
 

・実収入:25万2818円
・非消費支出:3万356円
・消費支出:25万6521円

 
非消費支出と消費支出を合計すると、28万6877円です。実収入との差額は「マイナス3万4058円」とのことです。
 

貯金800万円でマイナスをカバーできる?

仮に前述のマイナス収支が続くとすれば、年間40万8696円ものマイナスが発生します。
 
今回のケースでは貯金が800万円あるとのことですが、19年と少し経つと、貯金が底をついてしまう計算になります。
 
ただし、このシミュレーションは800万円の貯金にのみ焦点をあてた場合です。今回のケースでは、病気によって退職したことで退職金が発生する可能性も考えられます。その場合は取り崩せる金額が大きくなるため、実際には20年以上カバーできるかもしれません。
 

支出の内訳によっても状況は変わる

前述の収支バランスは平均データであり、個々の状況によって収支バランスは変わります。表1に、本データの消費支出の内訳をまとめました。
 
表1

費目 月平均額
食料 7万6352円
住居 1万6432円
光熱・水道 2万1919円
家具・家事用品 1万2265円
被服及び履物 5590円
保健医療 1万8383円
交通・通信 2万7768円
教育 0円
教養娯楽 2万5377円
その他の消費支出
(諸雑費・交際費・仕送り金など)
5万2433円
合計 25万6521円

出典:総務省統計局「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」を基に筆者作成
 
表1では食料にかかる支出が最も多く、「その他の消費支出」「交通・通信」「教養娯楽」「光熱・水道」と続いています。
 
家庭によっては、食料にここまで多くの消費が発生していないかもしれません。あるいは、交際費や仕送り金がほとんどない可能性もあります。
 
逆に、表1の内訳よりも出費が多くなっている費目があるかもしれません。今回のケースでは父親が病気になっているため、「保健医療」に多額の支出が出てくるおそれがあります。
 
いずれにしても、支出状況によっては貯金800万円と年金収入のみだと、収支バランスは黒字にも赤字にもなりえます。
 

不測の事態を考えて定年後の生活設計をしよう

定年後に別の場所で働こうと思っていても、今回のケースのように病気や事故といった不測の事態が発生して、働けなくなる可能性があります。退職金の有無や程度によっても状況は変わりますが、不測の事態に備えて定年後も可能な限り働いておくことは、よい選択肢といえるでしょう。
 
医療費の負担を軽減するために、生命保険の契約について考えておくことも助けになります。あるいはNISAやiDeCoなど資産運用についても幅広く検討し、老後資金の一助とできるかもしれません。
 

貯金800万円は20年前後で枯渇するおそれがある

平均的な収支データを見ると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯においては、1ヶ月の収支バランスがマイナスです。毎月約3万4000円のマイナスが発生し、19〜20年も経過すれば800万円の貯金がなくなってしまうかもしれません。
 
ただし、退職金や生命保険で受け取れる額によっては、貯金800万円と年金収入のみで生活をやりくりできる可能性はあります。あるいは支出をおさえることでマイナス収支を避けられるかもしれません。
 
定年後に起きるかもしれない不測の事態に備え、定年後の再就職や保険への加入、支出の見直しなどを考慮することがすすめられます。
 

出典

総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支 <参考4> 65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 表2 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)及び65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支 −2024年−(19ページ)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー