二世帯住宅が完成し、娘夫婦と新たな同居生活をスタートさせたある女性。建築費や住宅ローンはすべて娘夫婦が負担してくれているとのことで、「自分も少しは力になりたい」との思いから、以下の相談がありました。   「娘夫婦に毎月10万円ほど渡して、ローンの足しにしてもらいたいのですが、問題ないでしょうか?」   家族への感謝や協力の気持ちから始まるお金のやり取りですが、家族間でも金銭を渡す場合、税務上“贈与”と判断されるリスクもあることをご存じでしょうか。   今回は、このようなケースで贈与になる場合・ならない場合の違いや、トラブルを避けて安心してお金を渡すための工夫について解説します。

「家族だから大丈夫」は思い込み? 税務上は要注意!

家族間のお金のやり取りだから……と、つい軽く考えてしまいがちですが、実は注意が必要です。たとえ親から子へ、善意でお金を渡した場合でも、その金額や渡し方によっては贈与税の対象になることがあります。特に、一定額を継続的に渡すようなケースでは、税務上どのように扱われるかを事前にしっかり把握しておくことが大切です。
 
では、「毎月10万円を住宅ローンの足しにしてもらいたい」と渡す場合はどうでしょうか?
 
ここで重要なのは、そのお金が“何のために”支払われているのか、つまり使い道です。同じ10万円でも、生活費の分担として渡しているのか、ローン返済の援助として渡しているのかによって、税務上の扱いがまったく異なる結果になることもあるのです。
 

支払いの意図で変わる? 考えられるケースをチェック!

1. 家賃として支払う場合
 
娘夫婦名義の住宅に住んでいるため、家賃としてお金を渡すケース。この場合、住まいの使用料=対価性のある支払いとみなされ、基本的には贈与には該当しません。
 
ただし、注意したいのは支払額が地域の相場と大きくかけ離れていないかどうかです。例えば、近隣相場では5万円程度なのに毎月15万円を渡しているとなると、贈与とみなされるリスクもあります。
 
2. 生活費の分担として渡す場合
 
食費や光熱費など、日々の生活にかかる費用をお互いに負担するという形であれば、これは家族間の「扶養義務」の範囲内の支出として扱われます。この場合も、贈与税の課税対象にはなりません。ポイントは、あくまで「生活に必要な費用」としての妥当な範囲であることです。
 
3. ローン返済の援助として渡す場合
 
娘夫婦が支払っている住宅ローンの足しに……という名目で、毎月10万円を“気持ちとして”渡している場合は要注意です。このようなケースは、“贈与”とみなされるおそれが大きくなります。特に、年間110万円を超えると、娘夫婦に贈与税の申告義務が発生する可能性があるため、慎重な対応が必要です。
 

「名目よりも実態」税務署はここを見ている!

■「何に使ったか」が重要!
 
「娘家族のローン支払いが大変そうだから」という善意からのお金でも、実際の使い道がローン返済だったり、金額が大きすぎたりする場合には贈与と判断される可能性が高いです。“実際にどう使われているか”が重視されるのです。
 
■扶養に入っていると安心?
 
娘夫婦の扶養に入っていると、「生活費として渡していれば問題ない」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。
 
たしかに、扶養関係にある家族間で、通常の生活費を負担することは贈与にはあたりません。しかし、それを超える金額を継続的に渡していたり、受け取った金額を実際はローンの返済に使っていたりする場合は、扶養関係があるかどうかにかかわらず、贈与とされることがあるので注意が必要です。
 
■トラブルを防ぐには「見える化」がカギ
 
最も確実なのは、お金のやり取りの記録を以下のような方法で残しておくことです。

・銀行振込で支払う
 
・メモや覚書を残して「何のための支払いか」を明記しておく
 
・「家賃相当額」「生活費の負担割合」なども可能であれば整理しておく

こうした記録があることで、「これは贈与ではありません」と説明できる根拠になります。
 
逆に、記録が残っていないと「実質的に贈与していたのでは?」と誤解されやすくなるため、最初から見える形でやり取りしておくのが安心です。
 
これらがあれば、税務署から問い合わせがあった際にも冷静に対応できます。
 

まとめ

「少しでも力になりたい」そんな善意からのお金の支援も、税務の視点では贈与とみなされることがあります。家族間だからこそ、誤解を招かないように、あらかじめ整理しておくことが大切です。
 
毎月10万円を渡すという行為も、家賃や生活費の分担であれば贈与になりません。でも、「ローンの援助」や「感謝の気持ち」としての継続的な支払いであれば、贈与税の対象になる可能性があります。
 
お金を渡すときには、「これはどんな意味を持つお金か」「どのように使われる予定なのか」を今一度整理してみましょう。そして、必要に応じて税理士など専門家への相談も検討してみてください。
 

出典

国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
 
執筆者:富澤佳代子
1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP®認定者/中小企業診断士