皆さまはご自身が『退職金』をいくら受け取れるかご存じですか?  FP(ファイナンシャルプランナー)という仕事は、生涯のお金の設計図「ライフプランニング」を受注することがありますが、そんな時、ご依頼者の退職金の金額を知っている人はほとんどいません。   『退職金』とは、一生涯で一番まとまったお金を受け取る機会という人も多いでしょう。今回は将来のために、退職金について考えてみたいと思います。  

退職金の金額と位置づけ

退職金とは、会社を退職する際に「慰労金」の意味も含め、支給される賃金のことですが、どの会社でも必ず支給されるとは限りません。また、法律で金額・支給率が定められているわけではないので、自分の退職金を知らない人が多いのも仕方ないでしょう。
 
しかし、「一生涯で必要なお金の計算」をする際に、この退職金の金額がわからないと正しい数字がつかめません。退職金が1000万円なのか、300万円なのか……金額により、将来のお金の設計が変ってくるのです。
 
かつて「会社に骨を埋める」という言葉が美徳とされていました。これは、一生涯この会社に捧げきる覚悟を言葉に表したもので、日本人は転職することを嫌っていました。
 
しかし令和時代となり、その認識は変わってきています。就職サイトをいくつか調査したところ、多くのサイトで「20代の転職率は3割」「20代の3人に1人は3年以内に転職している」というデータが掲載されています。
 
そうすると、退職金についての認識も変わってくるでしょう。かつての時代では、長年の勤務の功労賞として、また、老後の生活資金としての意味合いが大きかったと思います。
 
しかし、今や一生涯同じ会社に勤務する人も少なくなり、若いうちに退職金を受け取る人もでてきました。現役の途中で受け取ると次の仕事への「準備金」または「臨時大型ボーナス」という認識でしょうか?
 
あまりに勤務期間が短い場合は、退職金が支給されないケースもありますので、事前に確認しておきましょう。
 

退職金所得制度

そもそも退職金には「老後資金」という意味合いがあるので、「退職金所得制度」という制度があります。他の所得税とは別計算となり、税金が優遇されているのです。
 
また下記のように、2つの受け取り方法を選択できるのですが、どちらがお得なのでしょうか(※会社によっては「一括払いのみ」というところもありますので、確認してください)。
 
■一括払い
→退職金を一括で受け取る
 
■年金払い
→退職金を年金として分割として受け取る(定年退職の場合)
 
若いうちの退職金を受け取るなら「一括払い」ですね。最近では、定年時の退職金を「一括払い(一時金)」、「年金払い」、「一時金と年金払いを併用」という受け取り方法も出てきました。最もお得に受け取るには、税金の優遇制度を考えてみると良いと思います。
 
【一括払い時の退職所得にかかる所得税の計算】
退職所得(所得税が課税される金額) = (退職収入 − 退職所得控除額)÷ 2
 
【一括払い時の退職所得にかかる所得税の計算】

 
・1年未満の月は1年とカウントする→(例)9年7ヶ月は10年
上記の退職金の控除額を考えるとわかりやすいのですが、例えば、大学卒業後に入社、60歳で退職した方の「退職金所得控除額」は2060万円です。退職金が2060万円以下なら、一括払いの受取時の税金は0円です。
 
また、年金として分割で受け取る場合には、「公的年金控除額」を元に計算をされますが、他の所得との合算で決まりますし、社会保険料などにも影響がでてきます。状況によって異なりますので、税理士やFPに相談をしてベストな方法を選んでみてください。
 

早期退職や転職の際の諸注意

定年退職前に退職金を受け取ると、大金ゆえについつい普段できないことにお金を使ってしまいがちます。もちろん、それは悪いことではありませんが、注意が必要です。
 
そもそも退職金は、臨時ボーナスではなく「老後の資金」として考えられ、それを前払いで受け取ったのです。お金を使った分、「老後の資金」の補填をしていかなくては老後破綻を招きかねません。
 
税金も安かったし、たくさんお金がはいったから、大盤振る舞いでぜいたくに海外旅行に行こう! という気持ちが湧いたら、ちょっと考えてみてください。
 
最近では、企業の退職金制度も変化してきており、「確定給付型」から自らが運用する「確定拠出年金型」に変遷してきています。
 
筆者のところにも「会社の退職金制度が確定拠出年金に急に変わったが、わからない」という問い合わせがあります。「退職金」も含めた将来の年金は、「受給されるものではなく、自ら作るもの」へ移行しています。
 
退職金に関して向き合うことは少ないと思いますが、まずは「金額を知ること」でしょう。そして、将来の受け取り方に関しても、研さんしてみてください。
 
※2019/10/23 内容を一部修正させていただきました。
 
執筆者:寺門美和子
ファイナンシャルプランナー、相続診断士

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