株価に影響が大きいのは、まずはやはり経済環境です。さらに、大幅な技術革新なども、その関連する業種に大きな恩恵または打撃を与えます。   AIやブロックチェーンなどの進展によって、フィンテックに防戦を強いられている銀行は、打撃を受けている業種の一例です。そして、もう一つ無視できないのが、世の中の価値観の変化です。  

飛び恥に視界不良の航空業界

「飛び恥」という言葉を見かけることが最近増えてきました。Co2を大量に発生させる飛行機に乗ることは地球温暖化に加担することにつながり、恥ずべき行為だという意味で使われます。
 
16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんをきっかけに広まった言葉ですが、欧州を中心にこの考えを支持する人は増えてきているようです。実際、スウェーデン国内の主要空港を運営するSwedaviaによると、2019年1月から11月の国内の乗客数は前年同期比で9%低下したといいます。国際線でも3%の低下でした。
 
一方、IATA(国際航空運送協会)の調査では、2018年の世界の旅客輸送実績は、国際線と国内線の合計で、輸送距離にして前年比6.5%増、座席供給量では6.1%増でした。
 
それでもIATAのCEOのジュニアック氏は、飛び恥は欧州の航空業界にとって最大の脅威であり、今後恐らく北米に、そして日本や韓国といったアジアにも広がりを見せていくだろうと予想しています。
 

ビジネスモデルが流行遅れとなりそうなアパレル業界

2019年9月20日、国連の気候行動サミットを前に、気候変動対策を求めるストライキが世界各地で行われました。そのうち、ニューヨークのデモでは、参加した若者の多くが古着を着ていたとの報道があります。
 
ファストファッションなどが服を大量生産し、それが大量廃棄にもつながっている現在のビジネスモデルに、反対の意思表示を示すためです。
 
実は、国連自体も8月から、「ファッションチャレンジ」という活動をスタートしていました(※)。古着のリサイクルやアップサイクルで、「持続可能なファッション」を作ることを目指そうというものです。
 
国連によれば、繊維産業は世界の温室効果ガスの約10%を排出し、また世界の廃水の約20%を生みだしているといいます。さらに、繊維素材の85%は、そのほとんどが再生利用可能であるにもかかわらず、最終的に埋め立てか焼却処分されているのです。
 
ただ、先端の流行やブランドを追い求めなくなったのは、気候問題に意識の高い若者だけではないかもしれません。日本でメルカリなどが大いに利用者を増やしていることを見ても、古着に対する抵抗感は一般的にも低下していることが感じられます。
 

食肉業界が警戒する肉離れ

世界でベジタリアンやヴィーガンが急速に増えているとされます。ヴィーガンとは、「完全菜食主義者」とも訳され、肉だけでなく、卵や乳製品などの動物由来のものも食べない人のことをいいます。
 
肉を食べない理由には、ダイエットや宗教などさまざまあると思われますが、最近では気候問題への配慮も目立ってきています。
 
牛の飼育には大量の水や穀物が必要となるのに加え、牛の消化器官からは温室効果ガスであるメタンが大量に排出されます。毎年、家畜の生産によって排出される温室効果ガスの影響は、世界中の運輸産業に匹敵するとされています。
 
ベジタリアンやヴィーガンの人数について精緻な統計は取りにくいものの、英国ではヴィーガン人口は2018年に60万人となり、英国の総人口の1.16%に相当するまでになったとする調査もあります(英ヴィーガン協会調べ)。
 
しかもそのうちの42%は、ヴィーガンに切り替えたのは2018年だと回答しており、増加の勢いが最近になって際立っていることがうかがえます。
 
食肉を避ける動きと軌を一にして、植物性の代替肉に対する関心が非常に高まっています。それを象徴する出来事として、米国で代替肉を開発、製造しているビヨンドミート社の株価が急上昇するということがありました。
 
同社は2019年5月にニューヨークのナスダック市場に新規上場し、公開価格は25ドルに設定されました。しかし取引初日の株価は66ドルとなり、その後も株価は大幅に上昇を続け、7月には一時240ドル付近まで上昇しました。
 
ここまでの上昇はさすがにバブルであったといえ、その後株価は下落に転じ、現在は75ドル程度(1月10日時点)で落ち着いています。しかし、投機的な動きを巻き込んでしまったとは言え、この分野に対する市場の期待の高さをうかがわせる出来事でした。
 
世の中の価値観の変化によって、これまで盤石と見られた業界であっても、足元が揺らぐ可能性があります。
 
もちろん、その変化が完全なものなのか、それとも一時的なはやりであるのかの見極めには注意が必要です。しかし、少なくとも上記に挙げた3例などは、根本に気候変動問題への危機感があるだけに、一時的なものではない可能性が高そうです。
 
世の中の価値観に自分を合わせる必要はないものの、資産運用で失敗しないためには、そうした変化に敏感である必要はありそうです。
 
出典 
 
執筆者:北垣愛
マネー・マーケット・アドバイザー

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