「複雑すぎてわからない」「改正、改正って毎年のように変わるけど、負担が増えるだけでしょ」「興味ない」など嫌われ者の『税金』。背景や原則を知ることで、少しだけ見方が変わるかもしれません。   2020年1月から給料や個人事業の利益から課される「所得税」の控除が見直されます。何が変わるのか、手取り額に影響があるのか、確認してみましょう。  

税金の役割〜互いに支え合い、よりよい社会のためには。公的サービスの充実が不可欠

改正点に触れる前に、そもそも「税金って?」というところから考えてみましょう。
 
日本の治安のよさや美しさが世界トップレベルであることはご存じでしょう。充実した社会保障や公的サービスには、コストがかかります。そのための費用が「税金」で賄われているのです。環境が整備され、住みやすい日本にするためには、一人ひとりが、できることを負担していく必要があります。
 
経済力のある人、それほどでもない人、養う家族の多い人、病気の家族を抱えている人など、同じ収入でも、置かれている立場で、オサイフ事情は異なります。「公平の原則」において、その人ごとの負担に配慮がされています。
 

所得税計算の仕組み〜収入と所得って何が違うの?

自営業の場合、年間を通して得た売り上げを「収入」、商品などの仕入れ等「経費」を差し引いて「所得」(事業所得)を算出します。
 
会社員の場合、会社から給与や賞与として支払われた金額が「収入」です。通常、会社員などの給与所得者には経費という概念がありません(特定支出控除を認められる場合がありますが、ここでは割愛します)。
 
そこで、「このくらいの収入だったら、このくらいの経費がかかるだろう」という概算で経費相当額「給与所得控除」を差し引き、算出された金額が、「所得」(給与所得金額)となります。
 
公的年金等受給者の場合は、公的年金等収入から公的年金等控除を差し引いて、所得(雑所得)を算出します(※個人年金などその他の雑所得がある場合を考慮していません)。
 
こうして算出された「所得金額」から、社会保険料控除(健康保険や年金保険料など)、基礎控除や配偶者控除などの「所得控除」を差し引いた金額が「課税所得金額」です。「課税所得金額」に対して、超過累進税率(所得が高いほど適用される税率が高くなる仕組み)を適用して税額が計算されます。
 

基礎控除額が所得によって変わる〜対象となる人、影響のある人

所得金額から差し引くことのできる「所得控除」のひとつである基礎控除額は、これまで、一律で38万円でした。改正により、納税者本人の合計所得金額に応じた控除額となります。
 
●対象となる人 (収入のある)すべての人
●影響のある人 合計所得金額が2400万円以下であれば、控除額が+10万円に増えますが、2400万円超の場合は段階的に−6万円、−22万円となり、2500円を超えると控除は消滅します。(※納税額への影響は、後述します。)
 

 

給与所得控除の引き下げ〜対象となる人、影響のある人

会社員等の給与所得者が経費相当額を差し引くことのできる「給与所得控除」は、改正により10万円ずつ引き下げられます。これまでの年収1000万円超に対する220万円の上限が、年収850万円、さらに控除額195万円に引き下げられました。
 
●対象となる人 すべての給与所得者
●影響のある人 年収850万円以下は−10万円。年収850万円を超えると最大−25万円となります。
 

 

年収850万円以下の給与所得者の場合は、実質的に変わらない。

上記の通り、所得控除のなかで、基礎控除+10万円、給与所得控除−10万円ですので、年収850万円以下の場合は実質的に今までと変わりありません。
 
パートで勤務する場合、年収「103万円の壁」と言われますが、
改正前 年収103万円−基礎控除38万円−給与所得控除65万円=課税所得金額 0円
改正後 年収103万円−基礎控除48万円−給与所得控除55万円=課税所得金額 0円
ですので非課税です。 
 

所得税額調整控除の創設〜負担を軽減するために

一方、年収850万円を超える人にとっては、増税となります。中でも子育て世代や介護中の世帯には、大きな負担となります。そのための配慮として、給与所得控除195万円と併せて差し引ける「所得金額調整控除」が創設されました。ただし、適用されるのは以下の条件のいずれかにあてはまる場合です。
 
・本人が特別障害者である場合
・23歳未満の扶養親族がいる場合
・特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる場合
 
所得金額調整控除額=(給与等の収入金額[年収]−850万円)×10%
ただし、年収1000万円超の場合は、一律年収1000万円で計算します(控除額15万円)。
 

公的年金等控除の引き下げ〜世代内・世代間の公平性の確保

これまで、公的年金等控除は、上限額の設定がありませんでした。
 
高所得の年金受給者や年金以外の所得がある人と、年金のみで暮らす人との不公平感を是正すべく、公的年金等収入が1000万円を超える場合の控除額に195.5万円の上限が設定されます。また、公的人金等以外の所得金額が1000万円超の場合の控除額が引き下げられます。
 

借金を次世代に残さない、よりよい社会のために。

人口減少、超高齢社会のなかで、社会保障を充実させてもらいたいし、環境も整備してほしい。そのための「税金」であり、個人個人の働き方や家族構成によって、さまざまな配慮が仕組みのなかに盛り込まれています。複雑でわかりにくいことは否めませんが、理解に努めたいものです。
 
源泉徴収票を受け取ったら、ぜひどこに何が書かれているのかチェックしてみてください。税負担を考慮した家計管理、ライフプランができれば理想的です。
 
なお、今回の改正において、税負担の面では影響のない方が大半と思われます。ただし、基礎控除や所得税額調整控除などの改正により「年末調整」関係の書類が複雑化されると予測されます。記入は、おそらく1年後となりますが、頭の片隅に置いておきましょう。
 
出典 
 
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士

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