相続税を納める基準となる2020年の「路線価」が、国税庁から7月1日に公表されました。今年に相続が発生した人は、相続税が実態より高い税額で計算されるおそれがあります。
 
今年の春以降、新型コロナ禍に見舞われましたが、公表された「路線価」は毎年1月の地価を基本にしており、コロナ禍の影響はまったく反映されずに、実際の取引価格より高くなる可能性もあります。

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コロナ禍だが30%超上昇の地点も

今回公表された「路線価」は、全国平均で前年比1.6%のプラスで、5年連続の上昇ですが、コロナ禍による影響は反映されていないことを注目しておく必要があります。
 
今年の3月以降猛威をふるった新型コロナウイルスは、生命の危険を人々に植え付けると同時に、経済活動の大きな停滞をもたらしています。経済活動は大きく縮小しており、それが土地価格にも深刻な影響を与えつつあります。
 
今年の路線価は、21都道府県で前年比上昇が見られます。全国的に見ると、各都道府県の平均路線価が上昇した上位が、沖縄県の10.5%、次いで東京都の5.0%、宮城県と福岡県が4.8%、北海道が3.7%と続いています。逆に下落したのは19県ありますが、下げ幅は小幅です。
 
代表的地点の路線価上昇率を見ても、沖縄県那覇市国際通りの40.8%を筆頭に、大阪市北区御堂筋の35.0%、横浜市西区横浜駅西口通りの34.5%、京都市東山区四条通りの27.9%など、大幅に上昇した地点が目立ちます。これらの地点がインバウンドの恩恵を非常に受けたことが明白です。
 
しかしコロナ禍で様相は大きく変わり、土地や住宅の取引価格も、明らかに下落基調となっています。マンションの価格は販売件数を絞り価格維持に努めているようですが、今後下落が進む可能性があります。
 
年初までは、東京オリンピック開催への期待感もあり、不動産の価格は高値で推移していました。ところが、コロナ禍での自粛ムードが定着すると様相が一変、経済活動の縮小は誰の目にもはっきりしています。
 

「路線価」は年初が基準、実勢とは乖離(かいり)へ

不動産などの相続が発生した人は、10ヶ月以内に納税が必要です。2018年以降、相続税の課税限度額が引き下げられ、少ない相続額でも課税対象となり、多くの人が相続税を納税することになりました。
 
土地の相続税は、多くの場合「路線価」が基準になります。公表される「路線価」が、納税時点での取引の実情を正しく反映していればよいのですが、そうではないのです。東京に限ってみれば、路線価は前年比で5%以上上昇している地点が多く、実際の取引価格とは乖離しつつあります。
 
「路線価」は国税庁が公表し、相続税と贈与税の算定基準になります。国土交通省が3月に公表している「公示地価」をもとに、その約8割の価格とされています。「公示地価」は、年初の土地の取引価格を参考に算出します。
 
つまり、コロナ禍によるマイナスの影響が反映されていないだけでなく、インバウンド効果と東京オリンピックへの期待感で、地価上昇に沸いていた時期の動きをもとに算出されているのです。そのため、インバウンドの恩恵を多く受けた東京・浅草地区の路線価は、前年比30%以上の上昇です。
 

東京で10%超上昇した地点も

では東京都の路線価は、どうなっているでしょうか。
 
商業地で平均5%以上、住宅地でも1%以上、前年より上昇しています。都内最高地点の中央区銀座5丁目では、高止まりで0.7%の微増でしたが、台東区浅草1丁目33.9%を筆頭に、足立区北千住3丁目22.0%、江東区豊洲3丁目18.9%、墨田区江東橋3丁目18.5%、北区赤羽1丁目17.3%など、商業地の多くの地点で上昇しています。
 
全国でも最高地点は、中央区銀座5丁目の4592万円ですが、台東区、江東区、北区、荒川区、足立区など、東京東北部の再開発が進み、都心へのアクセスが便利になった地点で10%以上上昇している地点が多いことがわかります。ただし都内の住宅地は、微増の地域が多く、商業地に比べると安定しています。
 
コロナ禍で、土地の取引価格がどの程度下落するかは見通せませんが、こうした下落傾向を今回公表された路線価は考慮してはいません。会社員のリモートワークが増えたことで、オフィス・スペースを縮小する企業が増え、オフィスの空室率は上がり、賃料は下落しつつあります。こうした事情も地価の下落要因となることは間違いありません。
 

地価大幅下落ならば補正の可能性も

路線価は7月時点ではなく、コロナ禍以前の実情が反映されています。土地を相続した人は、土地取引価格が下がっているにもかかわらず、高い路線価の基準で相続税を納めることになります。
 
土地を売却して納税をしようと考えている人が、思いどおりに売却できないケースも増えるかもしれません。高い評価額と低い売却額というダブルパンチに見舞われそうです。
 
「来年の路線価で相続税が払えれば」との話はできませんが、今年に比べ少ない納税額で済むことは確実です。今年中に土地の贈与を検討している人は、来年に延ばせば、納める贈与税は少なくなるかと思われます。
 
ただし、景気の後退などで大幅に地価が下がった場合は、補正が検討されます。路線価自体が公示地価の約8割になっているのは、多少の値下がりは織り込んだためです。
 
9月に国土交通省の公表する各地方自治体が調査した「基準地価」が、20%以上値下がりがはっきりした地点があれば、補正率を算出し納税額が減額される可能性が出てきます。納税期限も延長されるかもしれません。こうした補正を行うことで、納税者も納税に対する不満感を緩和できます。ただし、下落率が10%前後の地点では、補正は適用されないと思われます。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

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