アメリカで起きている値上げラッシュ、現状は…

アメリカではインフレが加速しています。ガソリンの値段は、インフレと世界情勢の外因とがあいまってコロナの前の1.5から2倍です。SUVなどの大きな車を満タンにすると多額のお金になるので、クレジットカードを使っての給油では詐欺被害防止のための上限設定があり、一度に満タンにすることができなくなりました。食品もすごい勢いで値上がりし、ものによりますがコロナ前に比べて10〜20%は上がっているように感じます。レント(家やアパートの賃料)は2022年頭に全米平均で前年比17%の上昇です。とにかく生活費がどんどん上がっていて、今までの給料では立ち行かない家庭も多くなっています。

夫の勤め先も緊急措置として一律全員3%の賃上げが発表されました。パーセンテージというのはクセ者で、$200,000稼いでいる人は$6,000上がるわけですが、$50,000稼いでいる人は$1,500です。一方で、ガソリンやミルクや卵は誰に対しても一律に高くなるので、かなりの不公平感があります。

FRB利上げの影響は、まずローン金利に現れた

この40年ぶりのすごい勢いのインフレーションと、ここ2年程の好調な労働市場を背景に、米Federal Reserve(連邦準備制度)は3月に政策金利0.25ポイントの利上げ、5月頭には0.50ポイントの利上げを行いました。今後複数回にわたって利上げを継続するだろうとの予想です。

政策金利とは、Federal Reserveなどの国の中央銀行が金融機関に貸し付ける際の金利のことです。この金利は、大手金融機関同士が貸付を行う際の金利に影響を及ぼし、それが今度はプライム金利(銀行が、最も信用の高い顧客に貸し付ける際の金利)に影響を及ぼします。この意味で、Federal Reserveの政策金利はアメリカ経済全体に影響を及ぼす重要な金利ベンチマークです。

アグレッシブな利上げはいったい自分たちの生活にどんな影響があるのか、アメリカに暮らす人は不安と興味をもって見守っています。

政策金利の値上げはすぐにローン金利の上昇に反映されました。住宅ローンの金利はついこの前の2021年後半には2.50%程度まで下がっていたのですが、現在は5.00%から6.00%の間で推移しています。コロナ下で不動産市場が高騰しましたが、ここで少し値上がりが収まり、不動産の物件リストを見ていても値下げをする物件もちらほら現れました。アメリカでは家を担保にしてローンを組み、それを元手にリモデルや増築などするという形態がよくとられますが、利上げでそれらを見送る家庭も増えるでしょう。クレジットカードなどの金利も当然今後上がっていくと思われます。

住宅ローンの金利はすぐ上がりましたが、私たちが銀行にお金を預けるときの金利はなかなか上がりません。大手銀行の多くは市場金利が上がったからといってすぐに預金者に還元するわけではないようで、いまだに口座金利は0.01%とか0.02%です。大手銀行に比して高めの利子を誇るオンライン銀行は反応が比較的早く、それでも現在は0.06%とか0.07%です。この高インフレ下で、銀行に貯めておくお金はどんどん実質的価値を失っていく状態です。

どんなサイクルの中にあっても、ブレずに続けるべき投資は…

投資はどんな影響を受けるでしょう。まずは、新しく発行される債券の金利が上がりますが、すでに発行されている債券に関しては設定されている固定金利が新しい市場金利に比べて低いので、その金利の差を補うために債券の取引価格は下がります。すでに債券や債券ファンドを持っている場合は、価格低下を経験することになります。金利の上昇は直接的に債券価格に負の影響を与え、とくに期間の長い債券でより大きな下落を見ています。

株式に関しては、金利上昇の株価への影響は、債券への影響と比べるとより間接的です。市場金利上昇により、企業が資金調達をする金利が上がり、企業活動にネガティブな影響を与えることが予想されます。また、消費者活動に頼る企業、たとえば消費者がクレジットカードやローンなどを使って購入するような商品は、金利上昇で消費が抑えられるので、企業成績にネガティブな影響が出ると予想されます。つまり、企業にとってみればビジネスをするための資金調達コストが上がる一方で、売り上げが下がるというダブルパンチを受けかねず、それが株価低下につながる可能性があります。2022年頭まで好調だったアメリカ市場も下落傾向で、Vanguard発表の向こう10年間の利回り予想では、米株式市場は年平均2.0〜4.0%の範囲、中間値にしてわずか3%となっています。ここまで好調な労働市場にも影響を与え、リセッションを懸念する声も出ています。

激しいインフレに苦しむアメリカに住む日本人として、唯一うれしいのが20年ぶりの円安ドル高です。アメリカ市場の金利が全体的に上がるにつれ、米国債やその他ドルでの安全運用資産がより魅力的になるため、資金が海外からドルへと流れ、ドル価が上がりました。これを書いている5月頭現在1ドル130.57円です。実家のためにお墓を買うのですが、2021年に注文したものがはからずも支払いが今になり、実質15%ディスカウントです。

まあ、そういうことで、経済というのはつながっていて、2021年は株価が上がって喜んだかと思えば、今度はすごいインフレに苦しみ、そうかと思えば金利が上がって円安はうれしいが、株価も下がり債券も下がって投資ポートフォリオ的にはちょっと悲しい……全部都合よくはいきません。これが市場のサイクルということなのでしょう。株が下がるの、債券が下がるのと言いますが、投資については普段から「全世界分散のインデックス長期投資」をお勧めしているので、とりあえず何もしないでサイクルを乗り切るのがいいとアドバイスをさせていただいています。