〈前編のあらすじ〉

今回の相談者、藤井成美さん(仮名)は、45歳の会社員。夫の貞弘さん(仮名)と2人で暮らしています。

筆者(FP)が開催したライフプラン勉強会がきっかけとなり、個別のFP相談に訪れました。

その場で、まず成美さんから語られたのは成美さんが40歳前後の頃に行った不妊治療のこと。約3年間不妊治療をしたものの、子どもは授からず、「子どものいない人生」を選ぶに至ったと言います。

そんな成美さんを前向きにさせたのは「デコパージュ」との出合いでした。最初は教室に通って習っていましたが、やがて自宅で教室を開くまでに腕が上がりました。

成美さんは勤めている会社を辞めて、デコパージュの制作や教室に専念したいと言います。ただ、老後資金準備など「マネープラン」のうえでそれは可能なのかということ、また金融機関の人に勧められて購入した投資信託は“利益が出ているかどうかさえ分からない”状態で資産運用の相談もしたいと言います。

後編では、藤井家の家計や成美さんの持つ投資信託をチェック、FPがアドバイスを送ります。

●前編「」はこちら

会社を辞めて新しいことにチャレンジできる?

藤井家の家計と資産状況は、以下のとおりです。

貞弘さんの年収:600万円
成美さんの年収:250万円
夫婦の月間生活費:25万円
預貯金:夫婦合計600万円
投資信託: 400万円(すべて成美さん名義)
住宅ローンの残債: 500万円(残存期間18年)

子どものいないご夫婦なので成美さんが仕事を辞めても、生活に困ることはなさそうです。また、貞弘さんは相談時点で42歳であり、老後資金を準備する期間も十分にあります。

「(勉強会で)ライフプランを作ってみて会社を辞めても大丈夫そうだと思ったのですが、やはりそうですよね。あのとき、数字で確認してよかったです」と成美さん。

教育費がかからず、住宅も取得済みなので、資産運用は老後資金準備に的を絞れます。老後資金準備をするうえで、まずおすすめなのはお2人で限度額いっぱいにiDeCoに加入すること。

会社を辞めると、貞弘さんの扶養に入る可能性の高い成美さんは、iDeCoの所得控除のメリットはなくなります。それでも公的年金が減額されても影響を受けない、加入者固有の財産を作ることは有意義なはず。

その他の資金はつみたてNISAで投信積立の非課税運用ができれば、途中で資金が必要になったときにも引き出せます。

毎月分配型投資信託に潜む問題点

次に、確認したのが投資信託の運用実績。金融機関に勧められて買ったとのことで、すべて毎月分配型です。運用成績はどれもパッとせず、中でも海外債券に投資するタイプの商品の成績が不振で純資産額が少ないことが気になりました。

なんとそのファンドの純資産額は10億円程度しかなかったのです。投資信託では運用資産が少なすぎると効率的な運用ができないため、期待した成果が上がらない恐れが出てきます。その場合、信託期間の途中で運用をやめて投資家に信託財産を返還する、「繰上償還」が行われる可能性があるのです。繰上償還になると、値下がりして含み損のある状態であれば、損失が確定してしまいます。繰上償還が行われる条件は投資信託の目論見書に「ファンドの純資産総額が○億円を下回ることとなった場合」のように記載されています。

また、成美さんは受け取った分配金をそのままにしていました。使う予定のない余裕資金であれば、分配金を受け取らずに再投資したほうが複利効果で資産を成長させられます。また、分配金の頻度は少ないほうが、運用効率は良くなるのです。

「投資信託は住宅ローンでお世話になった銀行の人に勧められて、断りづらくて。私は貯金と投資信託の違いにも関心がなく、今日やっと、損をしていることが分かりました。本格的に資産運用のアドバイスを受けたほうがいいですね」と成美さん。

大切なパートナーとの人生

会社を辞めて、好きな道で生きることを決めた成美さん。

「自宅の教室の生徒さんを増やしたり、カルチャーセンターで講師をしたりして……私のお小遣い分くらいは稼ぎたいです」と声も弾みます。デコパージュは“楽しみ”から、この先の“チャレンジ”に変わったのです。

もう一つ、子どもを諦められた理由を打ち明けてくれました。

「私はいわゆる晩婚でしたけど、縁あってとても優しい男性と結婚できました。子どもができなかったのは残念ですが、彼がいればそれだけで十分じゃないかと思うようになりました」

彼女が話しているあいだも、夫・貞弘さんのことを語るときの表情からその思いはひしひしと伝わってきていました。

投資信託については後日、成美さんから連絡があり、「先生(※彼女は私のことを先生と呼んでくれます)が指摘された投資信託、やはり償還されることになりました。この際だから、全面的に入れ替えることにします」とのことでした。

彼女からはその後も「リピート相談」をいただくようになり、夫婦仲良く充実した生活をしている成美さんに、私も元気をもらっています。

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