7月20日は中小企業基本法の公布・施行日であり、中小企業の重要性を広く周知するために「中小企業の日」とすることが2019年に決まりました。「中小企業の日」に加え、7月を「中小企業魅力発信月間」として日本全国で関連イベントなどが行われています。

日本経済を支える中小企業とは?

中小企業は日本の企業数の99.7%を占め、中小企業で働く人は全従業者数の68.8%です。日本経済における中小企業の重要性がうかがえます。

中小企業の定義

ところで中小企業とは、どの程度の規模を指すのでしょうか。中小企業基本法では業種別に以下のように定義されています。また、ここでの中小企業とは、法人だけでなく個人事業主も含まれます。

 

中小企業の中でも次のような規模の事業者は、小規模企業者と分類されます。

 

日本において小規模企業は全企業の87%を占めており、一口に中小企業といってもほとんどが小規模企業というわけです。

小規模な会社のおかげで日本経済が成り立っているといっても過言ではないでしょう。

中小企業は慢性的な人手不足に悩んでいる

厚生労働省「令和2年版厚生労働白書」より筆者作成

日本の会社の大多数は中小企業ですが、そこで働く人は全従業者の約69%であり、小規模企業では23%にすぎません。中小企業の人手は足りているのでしょうか。 

上記の表は、日銀短観の「雇用人員判断DI」(全産業)の推移です。「雇用人員判断DI」とは雇用人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を差し引いたもので、雇用人員の過不足を表す数値です。雇用人員判断DIがマイナスの状態は企業の人手不足を意味します。2012年ごろから大企業・中小企業ともに人手不足が拡大し、最近では中小企業でより深刻化しているのが分かります。

人手不足の原因は?

このような慢性的な人手不足の最大の原因として、日本の少子高齢化による20代から60代前半の生産年齢人口の減少が挙げられます。令和4年5月の有効求人倍率(1求職者あたりの求人数)は1.24倍と需要はあっても、働き手を確保するのは難しいというわけです。

また、コロナ禍を経て求職者の安定志向の傾向が強まり、大手を希望する人の増加も考えられます。

大企業と中小企業の給料はどれくらい違う?

働く人が勤務先を選ぶとき、収入は重要な要素です。大企業と中小企業の給料はどのくらい差があるのでしょうか。

厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、男女別の給与月額の平均は以下の通りです。

 

やはり、企業規模による給料の格差は小さくないといえます。

中小企業の強み、メリットとは?

中小企業が人手不足を解消するには、働く人に中小企業の良さを知ってもらう必要があります。大企業と比較するとネームバリューや待遇面が劣る中小企業ですが、規模が小さいことによる魅力もたくさんあるのです。

多くの業務を経験できる

中小企業では組織が小さく人員も少ないため、1人が複数の業務を兼務することがよくあります。例えば、営業パーソンが事務手続きまでを行ったり、現場作業に携わったりするケースです。こうした業務を経験すると事業全体を俯瞰できるようになり、経営感覚が身に付きます。与えられた役割分担をこなす大企業に比べて個々の社員の裁量が大きくなり、やりがいを感じやすくなります。

意思決定が迅速

中小企業では決定権のある役員の人数が少ないため、経営の意思決定が素早くできます。大企業では経営戦略などが採択されるまでには、多くの部署や人の承認を得なければなりません。組織が小さければ良いアイデアはすぐに取り入れられ、PDCAサイクルを回しながら改良していけます。よって、見つけた商機をつかみやすくなります。

昇進・昇給が早い

成果主義が取り入れられている中小企業では、業績アップに貢献した社員はすぐに昇進・昇給が可能です。年功序列が根強い大企業では、優秀な社員もポストがないためになかなか昇進できないケースがあります。昇進や昇給は社員のモチベーションに直結するため、業績が認められた社員はますます活躍するようになるでしょう。

転勤が少ない

全国に拠点を持つような中小企業は少なく、転勤が少ない点は働く人のメリットです。全国展開している大企業では、数年ごとの転勤は想定内です。転勤族の場合、子どもが転校を繰り返すために成長期の人格形成に影響を与える可能性があります。また、時期によっては単身赴任で家族が離れて生活するケースもあるでしょう。転勤がなければ家族で生活できるだけでなく、顧客との信頼関係を長年にわたって育むこともできます。

中小企業の生き残りのために

中小企業が生き残って行くために、人材の確保は欠かせません。そのためには、大企業にはない自社の魅力を広く発信する必要があるでしょう。また、できるかぎり労働環境や待遇を改善し、働く人にとって魅力的な会社であることが求められます。

執筆/松田聡子

明治大学卒業後、ITエンジニア、国内生命保険会社での法人営業を経て、2007年より独立系FPとして開業。コンサルティングの他、企業型確定拠出年金講師や執筆活動に従事。人生100年時代を最後まで自分らしく生きるためのお金のアドバイスと情報発信がライフワーク。日本FP協会認定CFP、DCアドバイザー、証券外務員二種。