バランス型の投資信託は、ひとつの商品で分散投資ができるため、はじめて投資信託を買う方に向いていると紹介されることが多くあります。この20年あまりはリーマンショックやコロナショックといった暴落時以外は、穏やかに値上がりしてきましたから、株式のような価格変動は怖いという方に人気です。

実際、企業型確定拠出年金(以下、「企業型DC」という)でも、iDeCo(正式名称:個人型確定拠出年金)でも残高ベースで約2割を占めています。しかし、世界的な金利上昇を受けて債券の価格が下がり安定上昇神話が崩壊しつつあります。この機会にどんな商品か知っていただけたらと思います。

低リスクバランスのメインである債券価格は下落基調

企業型DCやiDeCoの商品ラインナップに並ぶバランス型の投資信託は、ひとつではなく複数の資産に投資するタイプの投資信託で、株式7割 債券3割というようにその配分割合が固定しているタイプと、ターゲットデートファンドのように運用期間の経過とともに株式の割合を減らすタイプ、マーケット状況に応じて株式の割合を機動的に変えるタイプがあります。

中でも、配分割合固定のバランス型は、確定拠出年金という制度が日本で始まった当時に作られ、分散投資と言われてもどうしたらいいかわからない方の受け皿になってきた商品で、歴史があります。リスクの大きさによって配分割合が異なる3タイプがセットになっていて、最もリスクの低い低リスクのバランス型は株式の割合が少なく、債券の割合は7割というように大変高くなっています。

この債券という金融商品、どういうものか改めて説明すると、企業や国が事業を行うために必要な資金を得るために、お金を借りる際に発行する借用証書のようなものです。満期とその間の金利があらかじめ決まっていて、満期まで持てばあらかじめ約束された利息が支払われます。満期があって金利が付くというと定期預金のようですが、大きな違いは満期前に市場で売り買いができることです。つまり、価格が付き、それが変動するということです。

債券の価格は金利と支払いの信用力に大きな影響を受けます。例えば、私が今、年0.1%の10年国債を持っていたとしましょう。数年後、世の中の金利が上がってきて、例えば1%の金利が付く10年国債が出回っているとすれば、0.1%の金利しかつかない債券は魅力がないので安くしないと買い手が付きません。つまり、金利が上がるということは債券の価格は下がるということを意味します。

確定拠出年金制度が始まった2001年からこれまでの20年は、世界中の金利がおおむね下がってきたので、債券の価格というのは穏やかに上がってきました。それが2022年に入って、欧米の中央銀行が相次いで金利の引き上げを発表し、実行しているので、各国の債券の価格は下落しています。日銀は金融緩和を続けるとして金利は引き上げない姿勢を表明していますが、欧米、特にアメリカとの金利差が拡大する中、日本国債の金利もそろそろ上がるのではないかと少し上昇の気配を見せています。

気がかりなのは、低リスクバランスは安全という幻想

「債券」は「株式」よりも価格変動幅であるリスクが小さいので、債券のウェートが高いバランス型投資信託は名前の最後に「安定型」とついていることが多いです。「安定」という言葉からなんとなく「安心」というイメージを抱いて運用商品として指定している方が少なくないのではないでしょうか。

実際にリーマンショックの時も、株式市場は国内も海外も半分というような大暴落を期しましたが、先進国の格付けの高い債券の値下がりは株式ほどには下がりませんでしたから、低リスクバランスの投資信託は1割程度の下落にとどまりました。景気の下支えとして金利は全般的にはひき下げられてきましたから、債券はそのたびに上昇し、低リスクバランスの投資信託の価格もこの20年で倍ぐらいになっています。保有している方と話すと「分散はしているし、株式の割合が少ないので大きな値上がりは期待できないけれど、安心・安全」、中には「値下がりの心配はない」とさえ思っている方もいるのが気がかりです。

欧米の金利が上がってきている現在、本来であれば、組み入れ割合が少ないながらも金利上昇による債券価格の下落メカニズムを学ぶことになる外国債券部分の価格が、欧米の国債価格が値下がりしているにもかかわらず値下がりしていません。それは、為替が1ドル=115円から138円と大幅な円安になっていることから、円ベースに換算すると欧米の債券価格が下がっていないためです。

低リスクバランスの運用資産はその半分が日本の公社債です。日本の金利は下げる余地がなく、債券価格の上昇は見込めません。日銀が方針転換し金利を上げる、または上がるだろうという観測が流れれば、日本の公社債は買い叩かれ価格が下がることになり、低リスクバランスの投資信託は値下がりすることになります。すでに一部の海外ヘッジファンドなどにその動きがみられます。低リスクバランス型の投資信託にも下落リスクがあることを改めて認識していただきたいと思います。

金利上昇局面でリスクを減らすには

では、このような金利低下局面で、リスクが低い運用をするとしたらどうしたらいいのでしょうか。ひとつの方法としては元本確保型の定期預金を活用するという方法があります。定期預金はほぼゼロ金利で殖やすことは期待できませんが、評価額を減らすのを防ぐことはできます。これまで、低リスクバランスの投資信託で運用して増やしてきた年金資産の一部を定期預金に切り替えることによって目減りを防ぐことができます。

長期の資産運用では、マーケットの短期的な動きに一喜一憂して資産を売買することは資産を減らし、ストレスを増やすだけなので避けていただきたいのですが、日本の金利はこれ以上下げる余地がなく、債券の価格が上昇することは難しい状況です。長期的な経済動向から見通せる下落リスクがあるのであれば、それは適切に避けるべきだと思います。

株価にばかり注目が集まり、債券価格についてはトップニュースで取り上げられることはほぼありません。しかし、保有されているようでしたら、ぜひ、その動向、そしてその価格に大きな影響を与える金利や支払い能力(信用力)などのニュースも気にして、大切な年金資産の運用に役立てていただきたいと思います。