エンディングノートや遺言書を書いていても、それが適切なときに人に伝わらなければ意味がありません。日本総合研究所の調査によると、エンディングノートを書いた人の3人に1人が、その保管場所を「誰も知らない」と答えています。

●驚きのデータが明らかに… 

後半では、調査結果をもとに「最期の意志」をどのように人に伝えればいいのかを考察します。

自分の望んだ通りにしてもらうために

「自分の考えが伝えられなくなったとき、治療・ケアを受ける場所や財産の相続等について、あなたの希望と家族・友人の考えが違う場合どうしてほしいか」という質問に対して、おひとりさま(未婚の人、独居の人)は「私が望んでいた通りにしてほしい」「私が望んでいたことを基本として相談して決めてほしい」と回答する割合が高い特徴がありました。

また、死後の対応については「誰かがどうにかしてくれる」のではなく、「できるだけ人に迷惑をかけないよう準備したい」という意見に賛成する人が8割以上でした。

自分が病気や死亡によって意思を伝えられないとき、できるだけ周囲は自分の望みを反映した選択をしてほしい、また、そのときに周囲の負担を減らしたいという気持ちは多くの人が持っていることが分かります。しかし、それを実現するための仕組みはいまだに十分なものがあるとはいえません。

自分の希望を知っている人はどれくらいいるか

「治療やケアに関する希望について、自分の代わりに医療機関や支援者に伝えてくれるように依頼した相手がいるかどうか」という質問に対して、13.3%の人が「既に依頼をしてある」と答えました。また、「いざとなれば依頼できる人がいる」と答えた人も22%いました。

しかし、未婚の男性や配偶者と離別した男性の8割以上は誰にも話していないと答えていました。

「何かを相談したり、話し相手となってくれる友人・知人がいない」という回答が平均より高かったのは、未婚の人、独居の人、50代男性、既婚男性、配偶者と死別した男性、配偶者と離別した男性、未婚の男性、親族がいない人でした。

また、未婚の男性の45.2%が、月1回以上連絡を取る友人・知人がいないと回答しました。

自分の意思を伝えるためには、エンディングノートや遺言書のように意思を書き残すだけでなく、周りの人との普段の付き合いの中で自然に価値観や意向を共有しておくこともできます。特に、配偶者や子供が成り行きで自分の代弁をしてくれるような状況にない人は、より意識的に自分の意思が人に伝わるようにしておく必要がありますが、実際はなかなか難しいことのようです。

文蔵さん(60歳男性)の学び

エンディングノート講座に参加して、文蔵さんはこれまで考えていたよりももっと細かなことまで情報を整理しておかねばならないことに気付き、やや気が重くなりました(詳しくは)。書けない人が多いこともうなずけます。

一方で、市役所は独自サービスとしてエンディングノートの保管場所をデータベースに登録してくれ、必要になったときに病院などに伝えてくれるのだそうで、それは良いアイデアだと思いました。

講座の最後にはお茶会があり、文蔵さんは数名の男性とテーブルを囲みました。自分と同じように1人暮らしの人も多く、思いの外話が弾み、連絡先を交換することもできました。勇気を出して一歩踏み出すと、意外とこれからも新しい人間関係が作れるかもしれないな、と、久々に明るい気分で帰宅しました。これからも機会を見つけて地域のイベントに参加してみるつもりです。

●ある日、文蔵さんは亡くなった妻のことを思い出し…