2019年8月29日、カブドットコム証券(現auカブコム証券)が上場廃止となりました。上場廃止といっても、経営破綻したわけではありません。通信大手「KDDI」の出資に伴う処置で、現在も主要なネット証券の一角としてサービスを提供しています。

なぜ通信会社のKDDIが証券会社に出資したのでしょうか。背景を探りましょう。

KDDIが証券業に進出。金融の総合企業に

KDDIがauカブコム証券に出資した背景には、金融事業を収益の柱に育てたい思惑があるとみられています。2023年3月期〜2025年3月期における中期経営戦略では5つの注力領域が示されましたが、その1つが金融事業でした。金融事業は、売り上げ・営業利益の2桁成長を目指す目標も明らかにしています。

出所:KDDI 2022年3月期決算説明会 (決算ハイライト・質疑応答)

KDDIはauカブコム証券だけではなく、さまざまな金融企業をグループに持ちます。証券や銀行、運用会社といった資産運用サービスだけでなく、保険やローン事業まで手掛けており、もはや金融の総合企業といっても過言ではありません。

【KDDIグループの主な金融企業】
・auカブコム証券(証券業)
・auアセットマネジメント(投資運用業、投資助言・代理業など)
・auじぶん銀行(銀行業)
・ライフネット生命保険(生命保険業)
・au損害保険(損害保険業)
・auフィナンシャルサービス(クレジットカード事業、貸金業など)

出所:KDDI KDDIグループ

海外で売り上げが伸びにくい通信業にとって、国内の少子高齢化は大きな懸案事項です。現在5兆円を超える売上高があるKDDIも、新たな収益源は欲しいところでしょう。金融事業が次の成長を支えるドライバーとなるか、要チェックです。

【KDDIの業績】

※2023年3月期(予想)は、同第1四半期時点における同社の予想

出所:KDDI 決算短信

主要ネット証券5社が全てアメリカ株に対応! 魅力をおさらい

今年に入り、auカブコム証券と松井証券がアメリカ株式の取り扱いを開始しました。これで主要なネット証券5社(SBI証券、楽天証券、マネックス証券、カブコム証券、松井証券)全てがアメリカ株式に対応したことになります。

【主要なネット証券5社におけるアメリカ株式のリリース日】
・楽天証券:1999年11月(旧ディーエルジェイディレクト・エスエフジー証券)
・SBI証券:2003年8月(旧イー・トレード証券)
・マネックス証券:2008年8月
・auカブコム証券:2022年1月
​・松井証券:2022年2月

アメリカには「アップル」や「マイクロソフト」といった世界的な大企業が多く上場しており、アメリカ株式の時価総額は世界の株式時価総額のおよそ6割を占めています。2位の日本が5%強ほどなので、アメリカ市場がいかに巨大か分かりますね。グローバルな視点を持つと、むしろ日本株式に投資している人の方が珍しいといえます。

【全世界株式に占める時価総額上位3カ国(2022年7月末時点)】
1.アメリカ:61.97%
2.日本:5.39%
3.イギリス:3.78%

出所:MSCI ACWI Index(ドル建て、グロス)

これまで全体的に大きく値上がりしてきたこともアメリカ株式の魅力でしょう。例えば代表的なアメリカ株式指数「S&P500」は、過去10年間でおよそ3倍になりました。1年あたり約11.6%上昇した計算です。これほどのリターンを得られるなら、投資家から人気があるのもうなずけますね。

【S&P500の推移(2012年7月〜2022年7月)】

Investing.comより著者作成

アメリカ株式は1株単位で購入できるメリットもあります。日本株式は原則100株単位でないと売買できませんが、アメリカ株式は1株、2株……のように小さい株数から取引可能です。少額で投資したい人、多くの銘柄に分散投資したい人にとっては向いているでしょう。

アメリカ株の信用取引が解禁! ルールを確認

2022年7月、アメリカ株式の信用取引が解禁されました。信用取引とは証券会社に証拠金(担保に相当)として現金や有価証券を差し入れ、資金や株式を借りて行う取引を指します。自己資金より大きな金額で取引できること、「買い」だけではなく「売り」から取引を始められる点が主なメリットです。

アメリカ株式の信用取引は、証拠金のおよそ2倍までの金額で取引できます。例えば100万円分の証拠金を差し入れた場合、約200万円分の取引が可能です。

ただし、信用取引の評価損は証拠金から差し引かれます。アメリカ株式の信用取引では、証拠金の評価額が取引金額の30%を下回った場合、取引を続けるには30%を回復するまで追加で証拠金(いわゆる「追い証」)を差し入れなければいけません。追加の証拠金を差し入れない場合、一般的にその証券会社のルールに従って強制的に決済されます。 

仮に200万円の信用取引を行った場合、維持しなければいけない証拠金は60万円です。当初差し入れた証拠金が100万円の場合、20%以上下落すると証拠金の評価額が60万円を下回る(100万円−200万円×20%=60万円)ため注意してください。

また、アメリカ株式にはストップ安がありません。日本株式では見られないほど急激に下落する可能性があるため、あまりに大きな金額で取引しないようにしましょう。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。