「老後の備えは自分で作らなくてはいけない」そんな危機感がコロナ禍でさらに膨らみ、投資を始める人が増えている。しかし、そうはいっても奥深いのが投資の世界。慣れれば慣れるほど疑問や不測の事態に直面することも増えてくる。

そこで、この連載では「資産形成3年目だからこそ知りたい」用語や投資情報を解説する。第9回は「株主になること」がテーマ。会社に出資することで得られる恩恵や、株主が持つ権利について確認していこう。

株主とは、会社のオーナー

株式の購入を通して、企業に出資する人を株主という。株主には、出資の見返りとして企業からさまざまな権利が与えられる。

というと、「株主優待」を思い浮かべる人もいるかもしれない。しかし、株主優待は主に自社の製品やサービスを株主にプレゼントする“特典”にすぎない。

株主の権利の本質は、株主総会に参加して議決権を行使するなど、企業の経営に関わること、つまり会社のオーナーのひとりになることといえる。

では、株主になるとどのようなことができるのか?

まず、株主の立場や権利は「会社法」という会社の設立や運営などのルールを定めた法律によって保障されている。基本的に株主が持つ権利の大きさは、保有する株式の数、つまり出資金額の大きさに比例している。

そして株主の権利には、大きく分けて「自益権」と「共益権」の2種類がある。それぞれ簡単にチェックしていこう。

「自益権」は株主個人のための権利

自益権とは、株主が自身の利益のために認められた権利のこと。自益権の例として、以下の5つが挙げられる。

・利益配当請求権
・名義書換請求権
・株式買取請求権
・新株発行の差止請求権
・残余財産分配請求権

まず「利益配当請求権」とは、配当を受け取る権利のこと。配当は、後述する「株主総会」の決議で出すことが決まった場合に、所有している株式の数に応じて分配される。配当の受け取りは株式投資のメリットのひとつであるため、株主にとって重要な権利であるといえる。

株主が株式を第三者に譲渡した際に、株主名簿の記載事項を書き換えるよう企業に要求する権利が「名義書換請求」だ。株主であれば全員、名義書換請求を行う権利を有しているのだ。

株主は、企業による株式の発行や処分に対しても一定の権利を持つ。「株式買取請求権」では、株主が自己の保有する株式の買い取りを企業に求めることができる。ただし、この権利を行使できるのは「単元未満株式の買い取りを求める場合」と、「合併などの株主総会決議が行われた時に、議案に反対した株主が企業との関係を絶つために株式の買い取りを求める場合」のみと限定的である点に注意が必要だ。

また、企業が法令や定款に違反して新規で株式を発行しようとする場合、「新株発行の差止請求権」も行使できる。

さらに、企業が解散する際の株主の権利についても、認められている。それが「残余財産分配請求権」だ。残余財産分配請求権とは、企業が解散する際に余った財産の分配を受けられる権利のこと。負債の方が多かった場合は、残念ながら分配金はない。なお、企業が解散時に株主に分配される純資産(1株あたりの純資産)の大きさを株価と比べた指標として、「PBR(株価純資産倍率)」が参考になる。低ければ低いほど会社が解散したとき、株主に返還される資産が大きい。

「共益権」は企業の経営を左右する

「自益権」と別に分類される株主の権利である「共益権」とは、権利行使の結果が株主全体の利益に影響する権利のこと。

共益権は「単独株主権」と「少数株主権」の2つに大別される。

「単独株主権」はすべての株主が持つ権利

単独株主権とは、株式を1単元保有してさえいれば行使できる権利のこと。株主の権利を守るため、株式の保有期間は条件に問われない。例として、以下の2つが挙げられる。

・株主総会での議決権
・株主代表訴訟権

「株主総会」とは株式会社における最高の意思決定機関だ。会社法の第296条によって年に一度の開催が義務付けられており、人事や経営戦略などの経営に関わる議案が検討・決議される。株主総会での議決権は1単元株(100株)につき1票で、保有する株式の数が多くなればなるほど強い権利を持つことになる。

「株主代表訴訟権」とは、役員が違反行為をしたり経営判断のミスによって会社に損害を与えたりした際に、株主が会社に代わって賠償を求める訴訟を起こす権利だ。過去にはヤクルトが資産運用の巨額損失について訴訟が起こされたケースもある。また東京電力は福島第一原子力発電所の事故を巡り、当時の経営陣に対して株主らが訴訟を起こしており、現在も裁判が続いている。なお、株主は会社の代わりに訴訟する立場のため、勝訴した場合も賠償金は会社に支払われる。

株式の保有割合によって「少数株主権」が与えられる

少数株主権とは、一定数以上の株式を保有する株主に与えられる共益権である。一般的に、大株主優先の経営方針や経営陣の行き過ぎを防ぐために、企業に対して異議申し立てを行う権利を与えるものとされる。少数株主権の特徴は、一人の株主のみで条件を満たす必要はないという点だ。複数株主の議決権を合算することで条件を満たす場合は、複数株主全員による共同提案として請求できる。

行使できる権利は保有する株式の数によって異なり、主な権利としては以下の3つが挙げられる。

・株主提案権
・招集請求権
・取締役等の解任請求権

「株主提案権」とは、株主総会の議案を株主総会の目的(議題)とすることを請求できる権利だ。総株主の議決権の1%を保有している場合か、300個以上の議決権を6ヵ月前から保有している場合に与えられる。なお、提案できる議題は取締役の人事や報酬の改定など、株主総会で決を採れるものに限られる。

「招集請求権」は取締役に対して株主総会の招集を請求できる権利、「取締役の解任請求権」は取締役を任期の途中で退任させることを請求する権利を指す。いずれの権利も総株主の議決権の3%以上を6ヵ月以上保有している場合に与えられる。さらに、取締役が株主総会を招集しない場合は、裁判所の許可を取って株主が直接株主総会を招集できる。

株主の権利は、株主個人の利益と株主全体の利益の保護のために設けられている。配当などのメリットを享受し続けるためにも、企業の動向には目を配り、必要であれば共益権を行使して株式を所有する企業の発展に与したい。


文/中曽根 茜(ペロンパワークス)