2011年11月7日、インスタント袋麺市場に革命児が誕生しました。東洋水産の看板商品「マルちゃん正麺」です。インスタントラーメンとは思えない食感が人気を集め、発売直後から市場を席巻しました。「うそだと思ったら食べてください」という印象的なコピーも話題を集め、今日まで続く人気商品となっています。

東洋水産はマルちゃん正麺が発売された11月7日を「マルちゃん正麺の日」としました。今日は革新的な製法で消費者の支持を集めたマルちゃん正麺について触れてみましょう。また水産業としてスタートした東洋水産が、即席麺を販売するに至った経緯も紹介します。

20億食突破のヒット商品

マルちゃん正麺は麺の食感にこだわり、5年の歳月をかけて開発されました。通常は麺を蒸した後に油で揚げるか熱風で乾燥させて完成させるところ、マルちゃん正麺は切り出した麺を生のまま乾燥させる「生麺うまいまま製法」で作られています。こうすることで従来のインスタント麺にない生麺のような食感が生まれ、累計出荷数は発売から1年で2億食を突破しました。

中小機構によると、2011年における袋麺の生産数量は17億7100万食でした。マルちゃん正麺は、発売するやいなや大まかに市場のおよそ1割を握ったことになります。業績にも寄与し、国内即席麺事業の売上高は大きく上昇しました。人気は今日まで落ちることなく、2022年2月にはシリーズ累計出荷数が20億食を突破しています。

【東洋水産の「国内即席麺事業」の売上高】
・2011年3月期:1017.55億円
・2012年3月期:1066.38億円
・2013年3月期:1169.74億円
・2014年3月期:1247.80億円

出所:東洋水産 決算短信より

【東洋水産の業績】

※2023年3月期(予想)は第1四半期時点における同社の予想

出所:東洋水産 決算短信より

【東洋水産の株価(2022年1月4日〜10月24日)】

Investing.comより著者作成

東洋水産の主力事業が即席麺になった理由

1953年に創業した東洋水産は、もともと築地市場で冷凍マグロの輸出を手掛ける水産業者でした。しかし現在、同社における水産食品事業のプレゼンスは低く、その割合は売上高でおよそ7%、営業利益では1%ほどしかありません。東洋水産の業績は、大部分を即席麺事業が支えています。

【各事業セグメントの割合(2022年3月期)】

出所:東洋水産 2022年3月期決算説明会資料

東洋水産の即席麺事業について、海外の売上高が大きいことに気付いた人もいるかもしれません。東洋水産は1972年から海外に進出するグローバル企業でもあり、これまで同社の成長をけん引してきました。特にメキシコでの人気が高く、現地では「すぐできる/簡単にできる」といった意味を持つ言葉として「Maruchan」が使われるほどです。

ところで、水産業として生まれた東洋水産が、なぜ即席麺を手掛けるようになったのでしょうか。

東洋水産は、1956年から魚肉ハム・ソーセージといった加工食品の販売も始めました。その需要が下がる冬季向けの商品として、1961年に即席麺の販売に乗り出したのです。いわば主業に付随するかたちで始まった事業でしたが、比較的早い時期に「赤いきつねうどん」(1978年)や「緑のたぬき天そば」(1980年)などの人気商品が続々誕生し、即席麺は東洋水産のメイン事業に育ちました。

【東洋水産の主な即席麺商品】

 

出所:東洋水産 商品情報

名は体を表さない? 名前がややこしい会社

東洋水産のように、社名から事業内容をイメージしにくい企業は少なくありません。有名な例が「日立造船」で、以前はタンカーなどを生産していましたが、現在は造船事業から撤退しています。ちなみに日立製作所グループとの資本関係もありません。

【事業内容をイメージしにくい社名の例】

 

別の有名企業と名前が似ている企業もあります。上場企業でも散見されるため、投資の際は間違えないよう注意してください。

【別の企業と混同しやすい社名の例】

 

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。