物価の上昇が止まりません。総務省が発表した2022年10月分の消費者物価指数(全国、総合)は前年同月比3.7%の上昇となり、インフレの進展が明らかになりました。

【消費者物価指数(全国、総合)の前年同月比】

総務省「2020年基準消費者物価指数」より著者作成

物価が上昇する今、家計を見直してみてはいかがでしょうか。おすすめは通信費の見直しです。2020年12月3日にNTTドコモが格安プラン「ahamo(アハモ)」を発表し、他の大手2社も追随しました。以前より料金が低いプランが充実しているため、通信費を改善しやすくなっていると考えられます。

ところで、なぜ大手通信キャリアはそろって格安プランを導入したのでしょうか。背景には総理大臣の働きかけがありました。

格安プラン導入は首相のおかげ?

通信大手が相次いで格安プランを打ち出したのは、菅元首相の訴えが影響したとみられています。菅氏は官房長官時代から日本の通信料金の高さを問題視しており、たびたび料金引き下げの余地について発言していました。

菅氏が2020年9月に総理大臣に就任すると、翌月に国は「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」を公表します。「分かりやすく納得感のある料金・サービスの実現」を明記し、携帯料金の引き下げ姿勢を鮮明にしました。

これを受け、まずはNTTドコモが2020年12月3日に格安プラン「ahamo」の導入を発表します。次いでソフトバンクが同月22日に低価格ブランドの導入を発表し、KDDIも翌月13日に同様の発表を行いました。いずれも2000円台の基本料金で、月に20ギガバイトのデータを使用できる内容でした。

出所:各社のプレスリリースより

こういった経緯で、大手通信キャリア3社に低料金のプランが出そろいます。それまでMVNO事業者(いわゆる「格安スマホ」)でないと難しかった低価格が、大手でも実現できるようになりました。

【大手通信キャリアの業績】

※2023年3月期(予想)は第2四半期時点における同社の予想

出所:各社の決算短信より

【大手通信キャリアの株価(2022年1月4日を100とした場合)】

Investing.comより著者作成

苦しくなった楽天モバイル

大手の格安プラン導入は私たちにとってうれしいニュースですが、楽天モバイルは苦々しく思っているかもしれません。

モバイル通信事業(MNO)に新規参入した楽天モバイルは、これから顧客を獲得する時期でした。2020年4月に低価格を武器にした「Rakuten UN-LIMIT」で取り込みを図りますが、1年もしない間に大手3社がそろって格安プランを導入したことになります。価格に対する訴求力が相対的に下がったことで、楽天モバイルの顧客獲得は厳しいものになったと言わざるを得ません。

楽天モバイルは基地局の設置や広告といった先行投資が続いており、楽天グループには費用負担が重くのしかかっています。今期の第3四半期において、同社は「モバイル」セグメントで3800億円以上の赤字を計上し、全体でも2580.9億円の純損失となりました。通期の業績予想は開示していませんが、厳しい状況が予想されます。

【楽天グループの業績】

※2022年12月期(予想)は、第3四半期時点で開示されていない

出所:楽天グループ 決算短信より

【楽天グループの株価】

Investing.comより著者作成

見直しは少数派? 下がらない家計の通信料金

通信業界で激しい価格競争が展開されていますが、実は家計が負担する通信料金はそれほど下がっていません。大手3社が一斉に格安プランをリリースした2021年3月以降も、家計の携帯電話通信料はおおむね1万円前後、消費支出全体に占める割合も3.5%前後でほぼ横ばいです。リリースから日が浅いこともありますが、格安プランへ見直す人は意外に少ないのかもしれません。

【家計の携帯電話通信料(2人以上世帯)】

総務省「家計調査」より著者作成

通信料のように毎月発生する固定費は、見直すと家計改善の効果が長く見込めます。手続きは少し面倒ですが、格安プランへの変更を検討してみてはいかがでしょうか。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。