日本不動産研究所が11月25日、「第47回不動産投資家調査(2022年10月現在)」の調査結果を発表しました。この調査は1999年4月1日が第1回調査で、毎年4月1日と10月1日を調査時点として、アセット・マネジャー、アレンジャー、開発業(デベロッパー)、保険会社(生損保)、商業銀行・レンダー、投資銀行、年金基金、不動産賃貸などに、Aクラスビルや賃貸住宅一棟、商業店舗、物流施設・倉庫、宿泊特化型ホテルの期待利回りのほか、今後1年間の不動産投資に対する考え方、市況感などをアンケート調査したものです。また、「特別アンケート」として、今回はコロナ禍、円安、地政学問題などによる不動産市場への影響についても調査しています。

全体的には投資用不動産の期待は高まる傾向に

まず、投資用不動産の期待利回りですが、オフィス、住宅、物流施設、ホテルについては低下しました。期待利回りが低下するということは、逆に物件価格が上昇するということです。もちろん、たとえばオフィスでも場所によって差があるので一概には言えませんが、全体的に見ると投資用不動産に対する投資家の期待は高まっていると言えます。

まず立地や設備に優位性があるAクラスビルの期待利回りを見ると、東京都では丸の内、大手町、虎ノ門、六本木、港南、渋谷がそれぞれ今年4月1日時点の期待利回りに比べて0.1ポイント低下しました。これらの地区における不動産価格は堅調に推移すると期待されています。他の東京都内地区では日本橋、赤坂、西新宿、池袋が前回調査と変わらずで、期待利回りが上昇した地区はありませんでした。

主な政令指定都市においては、仙台、名古屋、京都、大阪御堂筋、大阪梅田、広島、福岡の期待利回りは0.1ポイントの低下ですが、札幌は0.2ポイントの低下となりました。政令指定都市のなかでは札幌の不動産価格の先高観が強まっていると考えられます。

賃貸住宅一棟の期待利回りでは、東京城南はワンルームタイプ、ファミリータイプのいずれもが0.1ポイントの低下ですが、札幌はワンルームタイプが0.3ポイントの低下、仙台が0.2ポイントの低下、神戸が0.2ポイントの低下、広島が0.3ポイントの低下となっており、地方の大都市圏が堅調に推移しています。またファミリータイプは、札幌、仙台、横浜、大阪、福岡が0.2ポイントの低下で、やはり先行き堅調であると見られています。

不動産投資の新規投資は「積極的」と過去最高水準で回答

商業店舗はまちまちです。都心型高級専門店は名古屋、京都、神戸が0.1ポイント低下していますが、東京銀座、札幌、仙台、大阪、広島、福岡は変わらず。郊外型ショッピングセンターは東京、札幌、福岡が0.1ポイントの低下で、仙台、名古屋、京都、大阪、神戸、広島は変わらずでした。

Aクラスビル、賃貸住宅一棟、商業店舗の期待利回りは、基本的にいずれもリーマンショック前の水準を下回っています。たとえばAクラスビルの東京(丸の内、大手町)は、リーマンショック前が3.8%だったのが、リーマンショックで一時的に4%台半ばまで上昇しましたが、直近では3.2%まで低下しました。つまり現在の期待感は、リーマンショック前に比べて高いことを意味しています。

賃貸住宅はワンルームタイプ、ファミリータイプとも、リーマンショック前の期待利回りが5%だったのが、現在はファミリータイプが3.9%、ワンルームタイプが4%ですし、商業施設は東京銀座の都心高級専門店が、リーマンショック前で4%だったのが直近は3.5%に低下。東京の郊外型ショッピングセンターは、リーマンショック前が5.5%だったのが、直近は5.2%まで低下しています。

物流施設の期待利回りは、東京江東地区で2011年4月が6%超だったのが、2022年10月には4%まで低下しました。この間、ECが大きく普及し、倉庫など物流施設に対するニーズが大きく高まったことがわかります。

また、宿泊特化型ホテルは、コロナ禍で宿泊客が大幅減になった2020年4月、10月と期待利回りが上昇しましたが、再び人流が戻ってきたことによって、東京、札幌、仙台、京都、福岡は、0.1ポイントの低下となりました。

全体的に不動産投資に対するスタンスは強気です。新規投資を積極的に行うという回答比は、2009年4月調査では45%まで低下しましたが、2022年10月には95%まで上昇しました。2020年4月はコロナ禍による先行き不透明感によって、新規投資を積極的に行うという回答比はやや低下しましたが、今は過去最高水準で推移しています。

ただ、市況感については過去4回の調査において、現在ならびに半年後を「ピークである」とする回答が最も多かったということです。つまり、ピークの状態が続いているわけですが、これが減退局面に移行するとしたら何が引き金になるのでしょうか。

日本の不動産市場が警戒するのは金利上昇局面

「日本の不動産投資市場に対して、それぞれのトピックスが、今後どのような影響を及ぼすと思いますか」という設問に対して、ネガティブな影響が及ぶと考えられるトピックスとしては、「日銀による金融政策の変更」が75.2%。次いで「物価の高騰」が66.2%、「米国FRBによる金融政策の引き締め」が62.4%となりました。物価が高騰すれば金利は上昇するので、いずれにしても日本の不動産投資市場にとって、金利上昇が最もネガティブな要因であると、多くの投資家は考えているのが分かります。

ちなみに「コロナウイルスの感染状況」については、過半数である57.1%が「ニュートラル、若しくは影響は極僅か」というものでした。不動産投資市場にとっても、ウイズコロナが常態化しつつあるようです。

また、「不動産投資市場の今後の成長ファクターについてお答えください」に対する回答としては、「市場参加者の多様化(海外勢や公的年金・SWF等のさらなる参入)」が186ポイントで、トップでした。特に海外勢については、新興国と違って日本の場合、財産権が法律でしっかり守られること、治安が安全であることに加え、昨今では大きく進んだ円安によって、海外から見た日本の不動産価格が割安に見えることから、積極的に投資する動きがあります。

なお、「不動産投資市場の今後のリスク要因(但し、新型コロナウイルス感染症は除く)」としては、「金利の上昇」が圧倒的に多く、281ポイントでした。現状、日銀は金融緩和を継続する様子を見せていますが、これまでアベノミクスを金融面で支えてきた黒田日銀総裁の任期満了が来年4月に迫っており、新総裁が誰になるのかにもよりますが、金融緩和政策が修正される可能性も否定できません。それだけに当面、金利の動向からは目が離せなくなりそうです。