不動産投資に成功すると、高額な収益を得られる可能性があります。不労所得を得るために不動産投資にチャレンジする方も多いでしょう。中でもアパート経営は収益性が高く、人気があります。

しかしアパート経営に失敗してしまう方も少なくありません。安易に手を出してしまうと、高額なローンだけが残ってしまう可能性もあるので注意が必要です。

今回はアパート経営で大失敗してしまった広瀬さん(仮名、40代男性)のケースをもとに、不動産投資の落とし穴をチェックしましょう。

広瀬さんの場合

広瀬さんは地方居住の会社員です。40代で、妻と2人の子どもがいます。妻も働いていますが子どもの学費にもお金がかかりますし、生活は楽ではありませんでした。以前から「副業をして収入を増やしたい」と考えていたところでした。

そんなとき、ネット上で「不動産投資で不労所得を得られる」という広告を発見しました。そこでは「会社員でも億の資産を築いている人が多く存在する」「本業の収入を超えた」「将来の年金代わりになる」など気になるコピーが多く並んでおり、広瀬さんはすっかり魅了されてしまったのです。

妻とも相談し、一度面談を受けてみることにしました。

営業マンによる勧誘

広瀬さんが不動産投資会社の営業マンと話をすると、営業マンは以下のようなことを言って投資を積極的に誘ってきました。

「広瀬さんと同じくらいの年収でも、賢い人は投資を行って億の資産を築いている人がたくさんいる」

「会社員は融資を取り付けやすいので不動産投資に有利」

「現在、将来年金をもらえるかどうか不確かな中で、不動産を所有していたら年金代わりになって安心」

「不動産投資は税金対策にもなる。会社員でも賢く節税している人が多い」

「もし不動産投資に関心があるなら、弊社がとっておきの物件をご紹介できる」

広瀬さんがアパート経営に関心を持っていると言うと、おすすめの一棟もののアパートを紹介してくれるということでした。

高額なローンを組んでアパートを購入

広瀬さんは営業マンの言葉にすっかり魅せられてしまい、それならアパートを購入して不動産投資家になろうと決めました。

不動産会社に物件の紹介を依頼すると、「利回り10%」という好条件の物件を紹介されたのです。利回りとは、投資した金額に対する収益の割合です。

物件の購入価格は7000万円でしたが、不動産会社の試算では、「ローンはアパートからの収益金で十分に払える」という説明でした。ローンを払い終わったら、毎月40万円の収入を自動的に得られる計算です。

広瀬さんは「そんないい話ならぜひお願いしたい」と思い、その物件の購入を決めました。妻にも相談しましたが、「良さそうな話だから契約してもいいんじゃない?」と言われました。

またアパートのある場所は広瀬さんの知らないエリアでしたが、営業マンを信頼していたので特に現地を見に行くこともしませんでした。

融資金額について、広瀬さんに頭金を入れる資力はなかったので、7000万円の物件をフルローンで購入しました。

空き室が多い…修繕費がかかる、利回りが違う!

広瀬さんがアパート経営を始めてしばらくして気付いたのですが、物件から得られる収入について、不動産会社から当初に受けていた説明とは異なるように感じました。

利回りは10%もなく、実際には5%程度のような気がしたのです。おかしいと思って調べてみると、アパートに空き室が生じているのが原因と分かりました。
不動産会社の想定利回りには空き室リスクが勘案されておらず、満室を想定したものとなっていたのです。現実には空き室が発生するので、満室想定の利回りより低くなるのは当然です。

また広瀬さんが購入したのは中古アパートだったので、いろいろな場所に傷みがあり、修繕が必要になりました。もちろん大家が負担しなければならないので、修繕費用がかさみます。入居者が入れ替わるときには敷金を返還する必要もありました。もちろん毎年の固定資産税もかかります。こういった費用についても事前にシミュレーションしていなかったので、地味に響いてきました。

もろもろを総合して差し引き計算すると、アパート経営は赤字になってしまったのです。

●広瀬さんの運命は… で紹介します。