相続税を節税するために養子縁組を利用するご家庭が多数あります。しかし安易に養子縁組をすると、トラブルの種となる可能性もあるので注意が必要です。節税目的で養子縁組をする場合、税制や法制度について正確に理解しておく必要があるでしょう。
この記事では養子縁組で相続税を節税しようとした松村さん(仮名、70代男性)一家の事例をもとに、養子縁組で大失敗するパターンや対処方法をお伝えします。
松村さんのケース
松村さん(仮名、70代男性)はちょっとしたお金持ちで、相続税が発生する程度の資産を持っています。そこで常々「将来自分が死亡したとき、子どもたちに相続税の負担をかけるのではないか?」と心配していました。
そんなとき「富裕層は養子縁組によって節税するらしい」という情報を知りました。松村さんは「何だろう?」と思い詳細を調べてみると、以下のようなことが分かりました。
養子縁組をすると、相続税の基礎控除を増やして節税できる
養子縁組をすると、相続税の基礎控除を増やせる可能性があります。「基礎控除」とは、どのようなケースでも適用できる相続税の控除制度です。基礎控除の計算式は以下の通りです。
相続税の基礎控除=3000万円+法定相続人数×600万円
例えば相続人の数が2人の場合、相続税の基礎控除の額は4200万円です。この場合、遺産額が4200万円までは相続税がかかりません。一方、相続人数が3人になると、相続税の基礎控除の額は4800万円にまで上がります。この場合、遺産額が4800万円までは相続税がかかりません。
つまり基礎控除との関係では、相続人の人数が多ければ多いほど相続税がかかりにくい仕組みになっているのです。
養子縁組で法定相続人を増やす
養子縁組をすると、子どもが増えるので相続税の基礎控除の金額も上がる可能性があります。例えば子どもが2人いる方が孫と養子縁組をすると、「子どもが3人」として基礎控除を計算できます。すると孫の分、相続税の基礎控除枠が600万円増えるのです。
養子縁組をしたことで、課税対象遺産額が600万円減るので、相続税の節税につながります。
孫への遺産受け渡しによって一代飛ばせる効果もある
孫と養子縁組をする場合、基礎控除以外にも相続税の節税効果を期待できます。もしも養子縁組しなければ、まずは子どもへの相続、子どもが亡くなったときの孫への相続が発生するので、孫へ遺産が行き着くまでに2回分の相続税を払わねばなりません。一方、孫と養子縁組をすると孫へ直接遺産を受け継がせられるので、相続税を支払う回数が1回で済みます。
このように孫へ遺産を受け渡すことにより、相続を一代分飛ばして節税する効果も期待できます。
2人の孫と養子縁組
以上の知識を得た松村さんは、「それなら孫と養子縁組しよう」と思い、長男の息子と娘の2人と養子縁組しました。松村さんには長男と次男、長女の3人の子どもがいるので、養子縁組によって孫(長男の子ども2人)を入れると相続人数は5人になりました。
松村さんは「これで2人分の法定相続人が増えて基礎控除枠が1200万円増えるので、相続税を大きく節約できるはず」と考えていました。
養子縁組の落とし穴
その後、松村さんが死亡して相続が発生しました。そこで子どもたちが税理士に相談に行って相続税を計算すると、松村さんの考えていたこととは全く違うことが判明したのです。
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