シェール革命で注目されたファンド
「米国MLPファンド(毎月分配型)Bコース/円ヘッジなし」(愛称:THE MLP B)は、2013年に設定された投資信託です。当時は「シェール革命」をきっかけにアメリカの産油量が増加したことから、MLP(※)に投資するTHE MLP Bには大きな資金が集まりました。
ただし、近年はMLP市場の規模が縮小傾向にあり、THE MLP Bの純資産総額も低迷が続いています。
※MLP:Master Limited Partnership。主にエネルギー事業から得られる収益を投資家に還元するアメリカの共同投資事業形態。出資持分が取引所に上場している。
【米国の原油生産量(バレル)】
【米国MLPファンド(毎月分配型)Bコース/円ヘッジなし】
しかしTHE MLP Bは2022年、ある珍しい理由で純資産総額が急増する場面が見られました。
税務処理で純資産が増加した珍しいケース
THE MLP Bの純資産総額は2022年10月、前月比でおよそ40%上昇しました。理由は、同銘柄の税務処理が変更されたためでした。
【純資産総額(2022年9月30日=100)】
そもそも純資産総額とは、投資信託が持つ資産全体から負債を差し引いた金額のことをいいます 。THE MLP Bは、将来の税負担に備え、運用益の一部から引当金として負債を計上していました。
しかしTHE MLP Bが投資対象を個別のMLPからETFへ切り替えた際、計上すべき引当金の額が減少し、純資産総額が急増することになったのです 。基準価額も大幅に上昇し、1日で約35%も値上がりしました。
利回りを求める人におすすめ
MLPは、原油といった天然資源のパイプラインや貯蔵施設などの利用料が主な収益源です。エネルギー価格が上昇すると、それらの設備の稼働率が上昇する思惑が働きやすく、MLPも値上がりする傾向にあります。
例えばロシア・ウクライナ問題などをきっかけにエネルギー価格の上昇が見られた2022年は、THE MLP Bの運用成績も良好なものとなりました。エネルギー価格の上昇が続くなら、今後のパフォーマンスにも期待できるかもしれません。
【基準価額+分配金(2021年末=100)】
またMLPは収益の大半を配当として支払うことから、利回りが比較的高い点も魅力です。THE MLP Bのポートフォリオにおける平均配当利回りも7%を超えています(2022年11月末時点) 。長く保有することで配当収入が積み上がり、基準価額を押し上げる効果に期待できるでしょう。
なお、THE MLP Bはファンド・オブ・ファンズであり、直接の投資対象はドイツ銀行グループのRREEF・アメリカ(以下:RREEF)が運用する「エネルギー・レボリューション・ファンド」 です。RREEFは不動産やインフラに特化した運用会社で、1975年にアメリカで設立されました 。現地の専門家に運用を任せられるのも、THE MLP Bの強みの1つです。
ただし、エネルギー価格が下落すればMLPも値下がりが予想されること、市場規模の小ささなどから値動きが比較的大きいことには注意が必要です。
【米国MLPファンド(毎月分配型)Bコース/円ヘッジなしの概要】
銘柄 | 米国MLPファンド(毎月分配型)Bコース/円ヘッジなし(愛称:THE MLP B) |
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運用会社 | ドイチェ・アセット・マネジメント |
ファンドのタイプ | 海外型(その他資産) |
設定日 | 2013年12月19日 |
信託期間 | 2024年7月19日まで |
決算日 | 毎月19日 |
受渡期間 | 7営業日 |
販売手数料(最大、税込み) | 3.3% |
信託報酬(全体、税込み) | 1.855% |
信託報酬(販売会社、税込み) | 0.935% |
信託財産留保額 | 0.3% |
主な販売会社 | SMBC日興証券(ホールセール限定)、東海東京証券、りそな銀行 |
執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。