恐らく多くの人が、隣の家計に興味を持っているのではないでしょうか。自分の生活水準が、他の家に比べてどうなのかを知りたいという人は少なくないと思います。

特に、「貯蓄ってどのくらいしているものなの?」、「借金をしている家庭はあるのかな?」といった疑問は、誰しも考えることでしょう。

もちろん人は人、自分は自分です。人様の貯蓄や負債の状況を知ったところで、どうなるものでもありませんが、何事も平均値というか、世の中の一般的な状況を把握しておくことは必要です。その数字に満たなかったら、平均的な水準まで持っていくためにはどうすればよいのかを考えて実践すればいいのです。

みんなの貯蓄額はいくらくらい?

まず、気になるのは貯蓄額でしょう。

総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)」(令和5年5月12日)によると、2人以上の世帯における2022年の貯蓄現在高は、平均で1901万円です。

「ええっ?」と思われる方も多いのではないでしょうか。ただ、この数字は全年代での平均値ですから、数字は上方に引っ張られる傾向があります。貯蓄額が100万円の人もいれば、1億円以上の人もいて、その平均値を計算すると、どうしても高額な貯蓄をしている人の数字に引っ張られます。

そのため、中央値といって、貯蓄現在高が最も少ない人から順番に並べ、その中央に位置する世帯の数字をあわせて見る必要があります。恐らく、この中央値が最も実感に近い数字でしょう。2022年の家計調査報告では、貯蓄現在高の中央値が1168万円でした。

ただ、この平均値と中央値も、2人以上世帯のうち「勤労者世帯」に限定するとさらに下がり、勤労者世帯の平均値は1508万円、中央値は928万円でした。それだけ勤労者世帯ではない、高齢者世帯がたくさんのお金を貯め込んでいることになります。

実際、2人以上世帯で世帯主の年齢階層別に貯蓄の平均値を見ると、以下のようになります。

40歳未満・・・・・・812万円
40〜49歳・・・・・・1160万円
50〜59歳・・・・・・1828万円
60〜69歳・・・・・・2458万円
70歳以上・・・・・・2411万円

出所:「家計調査報告(貯蓄・負債編)」(令和5年5月12日)

中央値は公表されていないので、やや実感から離れた数字であるように思う方もいらっしゃるかと思いますが、全体の平均貯蓄現在高が1901万円と高額だったのは、60〜69歳、70歳以上の貯蓄現在高に引っ張られていることがよくわかります。

貯蓄は何で運用されている?

では、これらの貯蓄は何で運用されているのでしょうか。貯蓄の種類別貯蓄現在高を見ると、相変わらず預金偏重であることがよくわかります。

2人以上世帯のうち勤労者世帯で見ると、2022年の貯蓄現在高が1508万円で、それがどのような金融商品別になっているのかを見ると、

通貨性預貯金・・・・・・556万円
定期性預貯金・・・・・・384万円
生命保険など・・・・・・321万円
貸付信託・金銭信託・・・5万円
株式・・・・・・・・・・91万円
債券・・・・・・・・・・17万円
投資信託・・・・・・・・81万円
金融機関外・・・・・・・52万円

出所:「家計調査報告(貯蓄・負債編)」(令和5年5月12日)

以上のようになりました。

リスク性商品である株式と投資信託の合計金額が172万円ですから、貯蓄現在高に対する比率は11.4%に過ぎません。逆に通貨性預貯金と定期性預貯金の合計額が940万円ですから、貯蓄現在高に対する比率は62.3%も占めています。

これに貸付信託・金銭信託と債券をあわせれば、その金額は962万円になり、さらにどういうタイプかまでは分からないものの、払い込んだ保険料に対して、それを上回る保険金が下りるはずの生命保険の額を加えると、貯蓄現在高の85%を占める1283万円が、比較的安全性の高い金融商品で運用されていることになります。

ちなみに、2022年時点では、通貨性預貯金の現在高が定期性預貯金のそれを上回っていますが、遡って2017年時点を見ると、通貨性預貯金の371万円に対して、定期性預貯金は445万円でした。

本来、運用という観点からすれば定性預貯金の現在高が、通貨性預貯金のそれを上回るのが普通ですが、超低金利が長期化した中で、実は通貨性預貯金に預けても、定期性預貯金に預けても、実際に受け取れる利息には大差がないことに多くの預金者が気付いたのだと思います。

受け取れる利息に大差が無ければ、一定期間解約ができない定期性預貯金に比べ、いつでも自由に解約できる通貨性預貯金にメリットを見出す人が多いということです。

借金の平均額は?

では、次に負債、つまり借金の状況について見てみましょう。

2人以上世帯を年齢階層別で見た時、負債保有世帯の割合が最も高いのは40〜49歳になります。ちなみに年齢階層別の比率は次のようになります。

40歳未満・・・・・・58.2%
40〜49歳・・・・・・66.1%
50〜59歳・・・・・・51.4%
60歳以上・・・・・・17.9%

出所:「家計調査報告(貯蓄・負債編)」(令和5年5月12日)

歳を重ねてまで借金はしたくないということか、それとも定年時に抱えていた借金を退職金で清算したからかは定かでありませんが、60歳以上で負債を抱えている比率は大幅に低下します。

その理由として、負債の大半が持ち家購入によるものという点が大きいのではないかと考えられます。

住宅・土地のための負債の割合の大きさ

年齢階層別に負債現在高と、それに占める「住宅・土地のための負債」の額を比較してみましょう。カッコ内の数字が「住宅・土地のための負債」になります。

40歳未満・・・・・・1469万円(1392万円)
40〜49歳・・・・・・1226万円(1150万円)
50〜59歳・・・・・・620万円(549万円)
60〜69歳・・・・・・207万円(161万円)
70歳以上・・・・・・90万円(75万円)

出所:「家計調査報告(貯蓄・負債編)」(令和5年5月12日)

これらの数字を見ると、40歳未満から50〜59歳の年齢階層では過半数の人が家計で負債を抱えており、その大半が住宅ローンであることが分かります。

「人生の最大目的は住宅ローンの返済」などと皮肉の1つも言いたくなりますが、そのくらい住宅ローンの負担は重いということです。

賃貸派か、それとも持ち家派かは、永遠に結論の出ない神学論争ですが、子々孫々まで家を残すという時代ではありませんし、単身者世帯が年々増加傾向をたどっている点から考えれば、長期の住宅ローンを組んで持ち家を購入する意味は、徐々に無くなりつつあるようにも思えます。