2024年1月から、大幅に拡充予定のNISA制度。「制度の恒久化」「非課税投資期限の廃止」「総拠出額は1800万円まで」など大きな話題を呼んでいますが、このNISA制度を上手に活用できるかどうかがお金の不安をなくすための分かれ目だと、ファイナンシャルプランナー・山崎俊輔氏は言います。
話題の書籍では、新しいNISAの主な変更点と拡大部分、iDeCoを併用しながら貯金感覚で資産形成する方法について山崎氏が優しく解説。今回は本書より第2章「NISAは2024年にどう変わるのか?」の一部を特別に公開します。(全3回)
※本稿は、山崎俊輔著『新NISAとiDeCoでお金を増やす方法』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。
若者を中心につみたてNISAが普及
かねてよりNISAは、国民の資産形成に役立つ制度としての普及や発展が期待されてきました。スタート時は年80万円の一般NISAのみでしたが、これは年120万円に拡大され、ジュニアNISAやつみたてNISAも追加されてきました。
特に有効だったのは、つみたてNISAです。年間40万円という拠出枠は一般NISAに負けるものの、4倍の非課税投資期間は中長期投資を促すもので、かつ運用商品が消費者本位のものに限られたことで、「投資商品は、セールストークで短期売買を回転させるもの」という金融機関の思惑を封じました。
低コスト商品のみを認めるという金融庁のガイドラインは、規制の上限ではなく、さらに低いところで各社の商品開発競争を引き起こしました。
かつては「購入時に3%相当の販売手数料+年3%の運用管理費用」のような高コストの投資信託がざらにあったところ、今では「販売手数料ゼロ(ノーロード)+年0.2%以下の運用管理費用」となっているわけですから、競争の激しさが伺えます。
実際、つみたてNISAは若い世代の投資口座開設を促す受け皿として機能しました。2022年9月末のデータによれば、NISA口座が1753万口座、そのうち「つみたてNISA」が684万口座あります。
興味深いのはつみたてNISA利用者の「若さ」です。
一般NISAは60歳代以上が口座開設者の53.4%を占めるのに対し、つみたてNISAは20〜40歳代で73.0%と大きく逆転しています。50歳代までを含めると90%に達し、圧倒的に現役世代に利用されていることがわかります。
若い世代の少額からの長期積立投資というスタイルを現実にしたのが、つみたてNISAだったわけです。
岸田内閣の資産所得倍増計画プランが改革を加速させる
この流れを加速させようと岸田内閣が考え出したのが「資産所得倍増プラン」です。
「検討ばかりで実行力がない」と批判の多い岸田内閣ですが、国内で最終決定する前から国連演説などでNISAの恒久化について発言するなど、NISA改革については前向きな姿勢を示し続け、その流れのまま令和5年度税制改正大綱で、新しいNISA制度の概要が示されることとなりました。
NISAの改正については「本当に実現するの?」と懐疑的な人も多かったのですが、これから説明する改正内容を見ると、想像以上の大きな制度改革であり、またそれが合理的に制度を拡充するアプローチとなっています。
2024年には実施されない新NISAに要注意
ところで「2024年開始の新NISA」と解説している記事や雑誌、書籍で「年122万円」という数字が出てきたら注意してください。
これはウソ(というかお蔵入り)になったNISAの情報です。「もともと実施される予定だった2024年からの新NISA」なのです。
なんじゃそりゃと思うかもしれませんが、もともとは2年前に税制改正が認められ「2024年からはこうなります」と紹介されてきたものです。
ところが2022年12月の税制改正大綱ではこれを一気に上回る大きな枠で新しいNISAが2024年からスタートすることになりました。そこで、金融庁はこれから説明する新しいNISA制度のほうを選び、「古いほうの新NISA」は未使用のまま捨ててしまうことにしたのです。
古い書籍やウェブ記事には注意してください。
●第2回では、新NISAを使いこなすうえで必須の「現行NISAから新NISA」の変更事項を解説します。
『新NISAとiDeCoでお金を増やす方法』
山崎俊輔 著
発行所 フォレスト出版
定価 1,650円(税込)