新NISA目前で、信託報酬の引き下げ競争はさらに熾烈(しれつ)に…

新NISAの開始を目前に控え、インデックスファンドの世界でさらなるコスト引き下げの波が押し寄せている。

新ファンドの設定と、それに追随する形で既存ファンドが信託報酬を引き下げるという構図は、これまで幾度となく繰り返されてきた。信託報酬率が低いということは、運用会社と販売会社、双方の実入りも相応に小さい。運用会社は必然的に「コストが低い」といううたい文句を武器にシェアを取りに行くこととなり、また、販売会社もポイント付与などのインセンティブを掲げて残高を積み上げていく必要がある。低コストインデックスファンドが資産形成のコア(中核)として定着した今、販売会社を巻き込んだ完全な「陣取り合戦」状態となっていることは否めない。

他方、投資家目線に立った場合、インデックスファンドのコスト低下は歓迎すべきトレンドと言える。というのも、インデックスファンドは、商品性に大きな違いがなく、信託報酬率の差が運用成績に直結するためだ。同じインデックスへの連動を目指すファンドなら、理論上、信託報酬は低いに越したことはない。

投資家側にもこうした知識が浸透するにつれ、コストを抑えるための工夫を凝らしたファンドの設定が目立つようになった。

ではここからは、本数が増加傾向にある低コストインデックスファンドを、運用手法別に解説するとともに、新NISAに向けて心得ておきたいポイントについても触れていく。

低コストインデックスファンドの運用手法は4種類

ファンド名だけでは識別が難しいのだが、実は、現存する低コストインデックスファンドは以下の4種類に分類できる。

① 直接投資型
② ETF内包型
③ 先物活用型
④ 指数「模倣」型

低コストインデックスシリーズとしては最大規模の残高を誇る、「eMAXIS Slim」(三菱UFJアセットマネジメント)や、「たわらノーロード」(アセットマネジメントOne)など、パッシブ運用(インデックス運用)体制を備える、大手運用会社のインデックスシリーズの大多数は①に該当する。最もオーソドックスな運用手法で、自社で運用を完結できるため、ベンチマークとして掲げる指数とのリターンの乖離(トラッキングエラー)が発生しにくい。

他方、「楽天・全世界/全米株式インデックスファンド」の「(元)楽天・バンガード・ファンド」シリーズ(楽天投信投資顧問)※1や、「SBI・V」シリーズ(SBIアセットマネジメント)などは、同じベンチマークを掲げたETFを「包む」ことで、運用体制の軽量化と低コスト化を実現している。ただし、投資先ETFの信託報酬がかかるという点はネックと言える。

※1編集部注 「楽天・バンガード・ファンド」シリーズは、2023年1月より、「楽天 インデックス・シリーズ」に名称を変更した。

上記2つと比べると数は少ないが、最近は、指数先物を活用したタイプのほか、類似指数を使用したタイプも登場している。

③の代表格は、「iFreeNEXT インド株インデックス」(大和アセットマネジメント)である。インドは、将来有望な投資先として人気が高まっているが、投資規制があり、①のような形でファンドを設定・運用するためには当局の認可が必要となる。そこで、当ファンドでは、指数先物を活用し、コストを抑えながらインド株式市場の値動きを享受するという方法が採られている。

なお、同じインド株式インデックスでも、「SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド」(SBIアセットマネジメント)は、ETFを組み入れているため、②のタイプに該当する。「SBI」が新NISAの成長投資枠の対象商品となっているのに対し、「iFreeNEXT」が現時点で対象から外れているのは、同じインド株のインデックスファンドでも、このように、運用手法に違いがあるためだ。

④は、ベンチマークの指数使用料(ライセンス料)を抑える目的で、“本家”とは異なる類似のインデックスをベンチマークに掲げ、運用を行うタイプを指す。MSCIやS&Pなど、指数の算出元に支払うライセンス料は、インデックスファンドの固定費の大部分を占める。そこで、全体のコストを圧縮するために、「<購入・換金手数料なし>ニッセイ・S米国株式500インデックスファンド」 (ニッセイアセットマネジメント)では、S&P500指数の代わりに、Solactive GBS United States 500 インデックス(配当込み、円換算ベース)を採用している。目論見書上に「S&P500」の記載は一切ないため、指数の解説文にある「米国市場に上場している時価総額上位500銘柄で構成され…」という文言から、同指数がS&P500に近いリスクリターン特性であると読み解くしかない。

以上の運用手法の特徴と、メリット・デメリットの一例をまとめた一覧である。

インデックスファンドの運用手法 ※2

直接投資型
〈特徴〉
ベンチマークとして掲げる指数と概ね同等のウェートで資産を組み入れ、運用を行う。
〈メリット〉
指数とのリターンの乖離幅(トラッキングエラー)を抑えられる。
〈デメリット〉
専門の運用体制を構築する必要がある。


ETF内包型
〈特徴〉
同じ指数をベンチマークに掲げるETFに投資を行い、実質的に指数と同等の運用成果を目指す。
〈メリット〉
運用体制を軽量化できる。
〈デメリット〉
投資先ETFの信託報酬がかかる。


先物活用型
〈特徴〉
指数先物を使い、実質的に指数と同等の運用成果を目指す。
〈メリット〉
投資制限がある投資先にも効率的にアクセスできる。
〈デメリット〉
先物利用のため、原則新NISAの対象外。
トラッキングエラーが大きくなる可能性がある。

指数「模倣」型
〈特徴〉
類似の指数を用いたり、既存の指数と概ね同等のリスクリターンを再現できるよう組入銘柄を調整したりして運用を行う。
〈メリット〉
大手指数算出会社を避けることで、指数利用のライセンス料を抑制できる。
〈デメリット〉
リスクリターン特性が本家の指数から乖離する可能性がある。
 

※2 楽天証券資産づくり研究所作成

インデックス運用でコストの重要性が強調されるのは、信託報酬の大きさがベンチマーク指数とのリターンの乖離に直結するためだ。理論上は、少しでも信託報酬が低いファンドを選択した方がリターンは向上するが、コスト競争が小数点第2、3位以下の限りなく「ミクロ」な次元に突入した今、運用成績の差も縮小している。運用手法が多様化する中、今後は、コスト以外の要因でベンチマークとの乖離が生じる可能性についても留意すべきだろう。

最後に、インデックス運用に「勝ち」「負け」はないということにも今一度触れておきたい。インデックス運用の最大のミッションは、ベンチマークの指数に連動することであって、他者を出し抜くことではない。

強いて言うなら、ベンチマークとの連動性が高いファンドほど「勝ち」であって、「他者を出し抜くファンド」は、完全にアクティブ運用の領域だ。アクティブファンドに関する引き出しを増やしておくことは、恒久化される新NISAで長期資産形成を行う上で、決してムダにはならない。この点も覚えておいてほしい。