少子高齢化で若い世代は年金の「払い損」なのか?

若い世代を中心に、公的年金に対して「払った保険料が戻ってこないのでは?」「年金が受け取れないのでは?」という、損得や受給できるかどうかを不安視する声があります。

そもそも公的年金制度は“保険“であるため、元を取るとか損得で論じるものではありません。また、社会保障制度で加入義務があるものです。

しかしながら、少子高齢化を目の当たりにしてモヤモヤと不安を抱く気持ちも分かります。

ただ、やみくもにモヤモヤする前に「本質」に目を向けることも重要で、まずはそこから解説していきます。

ポイントは…

1.公的年金は終身年金であり、老齢・障害・遺族と予測できない生活上のリスクに備える「保険」

2.日本の公的年金制度が「世代間扶養の賦課方式」を採用するには理由がある。公的年金がなかった場合、少子高齢化のなか、個々人の財力だけで高齢者を扶養していかなければならない

3.確かに、賦課方式にもデメリットはあるものの、持続させるための施策がある

それぞれ解説していきます。

年金は自分ではどうしようもできない「困った!」に対応する総合的な保険

厚生労働省のホームページ内では、「なぜ公的年金制度は必要なの?」という問いに対し、「私たちの人生には、自分や家族の加齢、障害、死亡など、さまざまな要因で、自立した生活が困難になるリスクがあります。こうした生活上のリスクは、予測することができないため、個人だけで備えるには限界があります。これらのリスクに備えるための仕組みの一つが、公的年金制度です。公的年金制度は、あらかじめ保険料を納めることで、必要なときに給付を受けることができる社会保険です」とまとめられています。

公的年金は老後に支給される老齢年金が真っ先にイメージされやすく、特に資産形成層の皆さんにとっては、「かなり先に受け取るもの」のイメージが強いかもしれませんが、公的年金がカバーするのはそれだけではありません。

ケガや病気で障害を負ってしまった(障害年金)、一家の大黒柱が亡くなってしまった(遺族年金)など、予測できない人生のリスクに公的年金は対応します。

様々なリスクに備えた“総合的な保険”といってもよいのではないでしょうか。

賦課方式と世代間扶養

現在、日本の公的年金は、「世代間扶養の賦課方式」を採用しています。現役世代が保険料を納め、そのときの年金受給者への支払いに充てています。子が親に仕送りをしているイメージです。

自分の納めた年金が、自分の老後のための積立でないことにモヤモヤを感じる人がいるかもしれません。

しかしながら、自分が納めた年金を積立する「積立方式」を採用した場合、急激なインフレ等があると、積み立てた年金の価値が著しく減少してしまう可能性があります。つまり、現役時代に貯めた年金額が、受給時には“目減り”しかねないということです。一方、賦課方式は経済変動に強いというメリットがあります。

それに、そもそも年金制度がなかったら――高齢になった親の暮らしを子や親族が支えることになります。果たして自身の生活を営みつつ、負担できるでしょうか? 難しいと感じるかたも多いはず。年金には高齢者の暮らしを社会全体で支える、という側面があることも忘れてはいけません。

少子高齢化が進めば、年金は足りなくなる…に対応する具体策

ただ、賦課方式にも懸念点はあります。

それは少子高齢化の進む日本で、収支のバランスがとれるかということです。現役世代の支払う保険料(収入)だけでは、年金受給者への支払い(支出)とのバランスが取れなくなる可能性は誰にとっても想像に難くないでしょう。

そういった事態を避け、“持続可能”な年金制度を目指して行われたのが、2004年の改正です。

主なポイントは以下の3点でした。

・基礎年金の国庫負担割合(税金投入)を従来の3分の1から2分の1へ引き上げ

・保険料を2017年まで、段階的に引き上げること
…例えば、厚生年金保険料は、2004年の13.58%から、毎年0.354%ずつ引き上げ、2017年に18.3%になった時点で固定されるなど。

・マクロ経済スライドの導入
…おおまかにいえば、物価上昇率から「スライド調整率」を差し引いて年金支給額を計算すること。これによって支出の抑制を図っています。

また、改正して終わり、ではありません。人口動態や経済状況のシミュレーションは変化する可能性があるため、5年に1度、現在の状況と今後おおむね100年間の見通しについて、“点検”する「財政検証」の実施も決まりました(よく年金制度の「健康診断」とも言われています)。財政検証では、所得代替率が50%を上回る給付水準を確保するために給付額が調整されています。

さらに言えば、年金積立金の存在を知らないかたはまだまだ多いのかもしれません。給付に充てられなかった部分は積み立てられ、年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)が運用を行っています。GPIF運用開始以来の累積収益額は100兆円を超えています。このような明るい材料はあまり報道がされず、運用損を出したときだけ報道が強調される傾向があります。こうした報道に乗じて、「将来年金がもらえなくなる」と煽るようが報道も多いことも年金に対する不安を助長しているのかもしれませんね。

まとめ

公的年金は、保険料収入だけでなく、国庫負担と積立金が財源となっています。

基礎年金(国民年金)の半分が国庫から負担されることから、自身が日々の生活で納めている税金分を受け取ることができず、逆に損をすることになるかもしれません。「払い損になるのでは?」と保険料を納めないという考えはありえないはずです。

「どうせ、年金はもらえない」という風評に惑わされることなく、将来の生活を支えてくれる制度であることを認識することが大切です。

でも年金の歴史をご紹介してきました。さまざまな “紆余曲折”を経て、現在の公的年金制度が確立されてきたことを鑑みても、モヤモヤが少なくなるよう小まめに制度を見直してもらうことと、私たち一人ひとりが義務である保険料を納付し、「人生のリスク」に備えられるように公的年金の理解を深めることが必要ですね。