4月22日(土)から4月24日(月)までの3日間、静岡県牧之原市にある静波サーフスタジアムにてパラサーフィンフェスタが行われた。22日(土)は障害者を対象としたサーフィン体験会、23日(日)〜24日(月)は一般社団法人UNIVA(本社:熊本県)が主催、NSA(一般社団法人日本サーフィン連盟)が後援となりパラサーフィン・ジャパンオープンが開催され、ISA(国際サーフィン連盟)が定めた国際ルールに則り試合が進められた。

採点基準はスピード・パワー・フローに加え各選手のスタイルも加点のポイントとなった。今大会の参戦国は日本・アメリカ・オーストラリアの3カ国から男女合わせ総勢40名のパラサーファーが静波サーフスタジアムに集結し、2日間の熱戦が繰り広げられ、観客動員数は3日間合計で3,258名の来場となった。

「パラサーフィン・ジャパンオープン」

パラサーフィンには大きく5つのカテゴリーがあり、その中でも障害レベルで細かくクラス分けがなされており、Prone1、2・Sit・VI 1、2・Stand1、2、3・ Kneelの9つのクラスとなる。

パラサーフィン・ジャパン・オープンの2日間は曇り先行で、晴れ間はあるものの寒の戻りで風が冷たく肌寒い中繰り広げられた。予選を勝ち上がった各クラスのファイナリストが熱戦を繰り広げた最終日は各選手ライト・レフト共に2本ずつ計4本のベスト2と数少ないライディングでの採点で、緊張感ある試合運びとなった。

Proneクラス

パーカー・オレニック(USA)

Proneは腹ばいで自立でテイクオフできるか、介添者がプッシュするかで分かれ、自立パドルできるクラスが、Prone1だ。そのProne1を制したのがアメリカからエントリーしたパーカー・オレニック(USA)。波のボトムとハイラインを華麗に使い、ライトの波のみで、6.83と5.67トータル12.50をメイクし、優勝に輝いた。

藤原智貴(JPN)

一方、Prone2は介添者とのコミュニケーションによりテイクオフをプッシュしてもらいライディングをする。昨年のISA世界パラサーフィン選手権大会が記憶に新しく、世界第3位となった藤原智貴(JPN)が貫禄のライディングで、6.67と6.80トータル13.47で勝利した。

Sitクラス

辰巳博実(JPN)

Sitクラスでは辰巳博実(JPN)がライトの波でなかなかポイントを伸ばせずにいた中、石原望(JPN)が板の破損でやむ得ず棄権した為、ここで辰巳博実(JPN)の優勝となった。優勝決定後もレフト2本を乗り、プレッシャーがなくなったのか、のびのびと大きなラインを描き6.83と7.33をメイクした。

VI クラス

葭原茲男(JPN)

VI 1は全盲から光覚までのクラスで微かな光の感覚のみでのサーフィンとなる。介添者がウネリからブレイクまでの秒数をカウントし波に乗る。ここで介添者が選手の板や選手自身にタッチしプッシュしたり方向を整えたりすることは違反となり、シビアな競技である。VI 1クラスのエントリーは葭原茲男(JPN)のみで、ここまで波を掴むことができずノーライドと苦戦を強いられてきたが、ファイナルヒート最後の波をキャッチした。ぼんやりとした光しか見えない中で、まさに経験と研ぎ澄まされた感覚でテイクオフからスタンド、ライディングまでも決め4.00をマークした。

藤崎滋(JPN)

VI 2は2名のエントリーとなり、部分盲でVI1クラスと比べると軽度とはなるものの、VI1クラス同様に介添者がコールし波をキャッチする。レフトで両者ともライディングし、かなりの混戦クロスヒートとなったが、最後の波で藤崎滋(JPN)がレフトとは逆のライト方向にフェイスをうまく乗り継ぎ7.83ポイントの高得点をマークし逆転優勝となった。

Stand クラス

加藤真吾(JPN)

Standクラスは健常者と同じ様に板の上に立ち上がりライディングする。クラスグレードは身体の障害部位によりクラス分けとなる。Stand 1では、加藤真吾(JPN)と近藤健太郎(JPN)とのシーソーゲームとなり、両者共にライディングする度に修正を重ねポイントを上げてくる。しかし、加藤がレフト側で掘れたセクションでトップへのアプローチと軽快なスナップで7.07ポイントをゲットし、トータル14.40で優勝を決めた。

伊藤建史郎(JPN)

Standクラスはボトムtoトップでのアクションが主となり、いかに際どいセクションにアプローチできるかがキーとなった。Stand 2では、伊藤建史郎(JPN)が安定のライディングで2位以下の選手を引き離し、7.33と7.60でトータル14.93で圧倒的強さを見せて優勝した。

勝倉直道(JPN)

Standクラスの中でStand 3は一番重度な障害となるが、そのハンディーキャップを感じさせないようなボトムtoトップと、波を大きく使ったライディングで勝倉直道(JPN)がライトで6.17と3.00をまとめた。レフトでは、残念ながらドクターストップがかかりノーライドだったものの、トータル9.17で優勝に輝いた。

kneelクラス

マーク・ MONO・スチュアート(AUS)

ジャパンオープンの最終ヒートとなるkneelクラスでは、世界絶対王者と呼ばれるマーク・MONO・スチュアート(AUS)が圧巻のライディング。解説が言葉を失う程のパーフェクトバレルで、共にパーフェクト10をたたき出し、トータル20ポイントで貫禄の優勝を飾った。

最後の最後に記録だけでなく記憶に残る大会となった。

主催 UNIVA代表 コメント

UNIVA代表田中慎一郎氏

UNIVA代表田中慎一郎氏は最後に『今年も大きな怪我もなく無事に終われることができ、私としてはホッとしております。昨年に比べ規模も大ききくなり、参加者・来場者の方々が盛り上がっている事を、肌で感じております。運営側としても本当に嬉しく思っています。みなさんまた来年も是非この静波の地で会いましょう!』と語り、3日間のパラサーフィンフェスタは閉幕した。

まだまだ認知の少ないパラスポーツ・パラサーフィンだが、今年の11月にISA世界ワールドパラサーフィン選手権大会がハンティントビーチで行われることが決まっている。今年11月には2028年のロサンゼルス・パラリンピックでパラサーフィンが追加種目となるか否か、決定する。
今後もパラサーフィンには、まだまだ注目が集まるだろう。

アナザーコンテンツにはサーフィン体験・VR体験にパルクールも⁉

プールサイドでは今大会の会場を模した仮想空間でイベントを体験できるVR体験会も行われていた。

22日は障害者を対象としたサーフィン体験会が行われた。ウェーブプールという規則性かつ安全性が確保された中で、体験に特化したビギナーウェーブで参加者は思い思いに波に乗った。波に乗るための自立パドルができない参加者には、プッシャーと呼ばれるスタッフが押し、乗り終えたあとはキャッチャーというスタッフがサーファーをキャッチする体制がとられていた。この体験会は普段なかなか味わえないということで募集から直ぐ定員に達し、波に乗るという非日常的な体験ができる大人気のコンテンツである。

NATSUKI氏

今大会のライブ配信スタッフとしてイベントを陰ながら支えていた、NATSUKI氏によるフリースタイルのパルクールパフォーマンスも実施された。NATSUKI氏は九州を中心に活躍しており、今回はスタッフ車両で作られた即席パルクールステージで華麗な技を披露し、会場を沸かせた。

手前左から藤原智貴さん・つーはーさん : 奥左から大坪瑠実さん・井上鷹さん・ごわすさん

特設ステージでは、エキシビジョンに参加した三刀流プロサーファー井上鷹氏を始め、昨年カリフォルニア州ピスモビーチで行われたISA世界パラサーフィン選手権大会で銅メダルリストの藤原智貴氏、ミスコンテスト世界グランプリの大坪瑠実氏に加え、YouTuberのごわす氏と同じくYouTuberのつーはー氏によるトークセッションが行われた。

ステージ上のスポンサーボードでは自由に落書きアートができる余白があり、来場した子供たちが楽しそうにラクガキをした。

左から東田トモヒロ氏・生方亮馬氏・ジョシュ・ボーグル氏

ステージ上では音楽ライブも始まり、まずは邦楽2.0による三味線・琴・ギターという組み合わせのインストルメンタルな和のライブに、サーフシーンではお馴染みのシンガーソングライター東田トモヒロ氏によるアコースティックライブへ続く。さらに今大会に選手としても参戦中のレゲエシンガー jahliこと生方亮馬氏と東田トモヒロ氏が急遽オファーした、ハワイから参戦中のジョシュ・ボーグル氏も登壇し、トリオライブを披露した。

山本拓也氏

今大会のキービジュアルをデザインした山本拓也氏のライブイベントも行われた。

エキシビジョンの様子エキシビジョンの様子

またエキシビジョンでは、サーフスタジアム契約ライダーの池田未来・佐藤季・三輪ヒロヤなど、地元のプロサーファーをはじめ、海外選手やパラサーフィン日本代表選手に加え、井上兄妹によるサーフセッションが行われた。

ライブ配信の実況・解説にはWSLなど数々のサーフィン大会でもお馴染みのNICOさんと解説の水野亜彩子さん。

パラサーフィンフェスタとは?

「未経験者から世界のトップまで、全員が楽しめる世界唯一のオール・インクルーシブ・パラサーフィンイベント」をコンセプトに一般社団法人UNIVA(ユニバ)(本社:熊本県・代表者:リハビリテーション科医師 田中慎一郎氏)が主催となり、2022年7月に”国内初&最大規模のパラサーフィンイベント”第1回『静波パラサーフィンフェスタ』を静波サーフスタジアムにて開催した。来場者数は、当初の予想をはるかに上回り500名を超えた。選手たちの熱気と共に会場は盛り上がり、負傷者・体調不良者を出すことなく無事にイベントは終了。後日のアンケートでは、また参加したい100%、大会満足度91%と高評価を得ている2022年に初開催されたイベントだ。

パラサーフィン(アダプティブサーフィン*)とは?

生まれつきや事故などによって、体に障害を持っている方が行うサーフィンのこと。さまざまな身体的個性やチャレンジを持ったサーファーが、オリジナルのスタイルでサーフィンできるようなクラスが、計9種類ある。型にハマらない自由なサーフィンを楽しめる点は、サーフィンが持つ競技性の魅力でもある”スタイル”をより引き立たせるパラサーフィンの特色であり面白さだ。 選手達のチャレンジ精神、困難を乗り越える創造的な工夫が垣間見れるのも、観客の心を揺さぶるポイントである。

2028年のロサンゼルスパラリンピックの公式種目となる可能性も高いことから、注目度が高まることが予測され、2022年のISA世界選手権大会では日本チームは、メダル4つ、国別8位入賞という結果を残しており、今後もパラリンピックなどの国際大会での活躍が期待されている。

*パラサーフィンとアダプティブサーフィンの名称の違いはなくISAやJOCではパラサーフィンという名称を用いているが、選手間ではアダプティブ(適応する)サーフィンのほうが馴染みがあるため、現状は明確な区別がなく混同されている。

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