「X Games Chiba 2023」BMXフリースタイル フラットランド種目がZOZOマリンスタジアム(千葉県千葉市幕張)にて大会最終日である2023年5月14日(日)に開催され、世界の並いる強豪を退けて日本代表の片桐悠選手が金メダルを獲得した。

日本では2回目の開催となったX Gamesだが、昨年19年ぶりに復活したこのフラットランド種目が現在開催されているのはこの千葉大会のみ。年間複数回行われているX Gamesシリーズの中で年に1回しか行われないこの種目の大会に、世界最高峰の選手たちの中からわずか8人が招待され、この由緒あるX Gamesの舞台で世界最強の座が競われた。

多くの観客が会場に訪れた。
photograph by Naoki Gaman/X Games

今回の競技フォーマットはトーナメントのノックアウトバトル方式。今回は前日の悪天候の影響から細かなルールとスケジュールが変わり、本来予定されていた競技開始時間が大幅に前倒しとなり朝9時からとなった。

また各選手の持ち時間は120秒から90秒で変更となった上で、トリック・ルーティーンを見せている間のみ持ち時間がカウントダウンされていく形に。選手たちは限られた持ち時間の中で、次戦に勝ち上がるべくベストトリック及びベストルーティーンを披露することとなった。

なお日本人選手からは内野洋平選手、片桐悠選手、佐々木元選手、早川起生選手という日本国内のみならず世界のBMXフラットランド界を代表する4名が招待選手として出場した。

以下は、今大会最注目の決勝戦と3位決定戦の大会リポート。

X Games初出場初優勝を達成したBMXフラットランド界の神童。新たな時代の幕開けを感じさせる圧倒的な勝利。

今大会は昨年同様に世界大会優勝経験を持つベテランライダーたちはもちろんのこと、そこへ近年世界大会で大活躍中の若手選手である片桐と早川の2名が招待され、決勝はベテランと若手が対峙する構図の中で世界一の座を巡る戦いが繰り広げられた。

前日の悪天候の影響もあり、朝早い時間からの競技開催となり各選手がコンディションを整えることに苦戦を強いられたイレギュラーな戦いの中で、そんなプレッシャーを物ともせず見事金メダルを獲得したのは今大会最年少選手の片桐悠。

片桐悠の代名詞「フルバイクフリップ」
photograph by Brett Wilhelm/X Games

片桐は昨年大会にもリザーブ選手として招待されていたが、惜しくも出場は叶わなかったため今回が念願のX Games出場となった。リアトリックを基本スタンスとし、高難易度の大技を飄々と簡単そうに決める彼は世界最先端のライディングをする選手として近年世界から注目を集めている。そんな片桐は準決勝で何度かミスをするもすぐに切り替えてペダルを軸とする高難度のリアトリックと自身の得意技である「バイクフリップ」をメイクし決勝へと駒を進めた。

決勝では、昨年日本まで来ていたもののコロナウイルス陽性反応が出てしまい、惜しくも大会出場を逃したことから今大会へ並々ならぬ思いを持って挑み、勝ち上がってきたカナダのジーン・ウィリアム・プレボーストと対峙。片桐がプレボーストとバトルで顔を合わせるのは昨年12月に開催された「Red Bull Circle of Balance」の決勝以来。前回プレボーストに負けている片桐にとってはリベンジマッチとなった。

ジーン・ウィリアム・プレボーストのライディング
photograph by Brett Wilhelm/X Games

リアトリックでの高速のスピンが特徴的なプレボーストは、決勝でも身体を半身乗り出してペグ重心のパドルから「バックスピン」やフレームを縦に跨ぐ「デストラック」、ワンハンドの「アンダーテイカー」など、終盤ではペグからペダル軸にスイッチさせながらスムーズにスピン系のトリックをメインに組み込んだルーティンを魅せた。しかしスリップダウンのミスも目立ち、納得いくランで決勝を終えることはできなかった。

一方で片桐は決勝戦というプレッシャーを感じさせないランを魅せる。序盤でスリップダウンのミスがあるも即座にタイマーを止める仕草を見せその様子は冷静そのもの。自分のペースを保ちながら、ペダルの上での「バリアル」から「ハーフバイクフリップ」でペグ荷重にトランスファー、そこからもう一度「フルバイクフリップ」で締める完璧なルーティン。しかし今日の彼はそれだけに止まらない。

片桐悠のライディング
photograph by Brett Wilhelm/X Games

最後に残された32秒。師匠である内野と軽くコミュニケーションを取った後に挑んだラストルーティン。アップサイドからバイクをそのまま横に2回転スイッチさせていくオールドスクールな玄人技や、バックスピンしながらの「ハーフバイクフリップ」、ペグからペダルへの重心移動など目まぐるしい動きの連続で、最後はバイクを縦に跨ぎながらペダル軸のスピンをメイク。見事なランを魅せてプレボーストへのリベンジを果たした。

観客に応える片桐
photograph by Brett Wilhelm/X Games

圧倒的なランで金メダルを獲得した片桐は両手を掲げて大きくガッズポーズすると、他の出場選手や仲間が駆け寄ってきて胴上げ。みんなで歴史的瞬間を称えて喜び合っていた。新たな時代の幕開けを感じさせる一コマだった。

そして3位決定戦ではマティアス・ダンドワとアレックス・ジュメリンによるフランスの親友・師弟同士のバトル。

フラットランドとストリートの技をミックスし、フロント・リア交互に使いながらダイナミックな技を魅せるオールマイティーなダンドワは、ツーフットの「ノーハンド・フロントスピン」や、リアトリックである「ノーハンド・スネークスピン」などスピン系を多く詰めこみ、トランスファーなどを駆使しながら軸をスイッチさせてロングルーティンを展開。先攻のアドバンテージもうまく使いながらジュメリンを圧倒していく。

マティアス・ダンドワのライディング
photograph by Brett Wilhelm/X Games

一方、ジュメリンはフロントトリックを中心にオールドスクールなトリックも交えながらルーティンを繰り出していく。比較的短いルーティンでまとめていく姿はダンドワと対照的だが、ルーティンの中で魅せた「ダブルブーメラン」や、最終ルーティンでメイクしたバックワーズの動きからの「ブーメラン」でリアタイヤにトランスファーし「ディケード」で締める動きは技ありだった。
ジュメリン自身もランが終わった時にガッズポーズを見せるなどやり切った様子だったが、この試合はダンドワに軍配。去年は獲得できなかったメダルが決まった瞬間にダンドワの喜びが爆発し、会場内駆け巡っては観客たちとハイタッチして喜びを共有していた。

優勝者コメント

優勝した片桐悠
photograph by Brett Wilhelm/X Games

片桐 悠 選手
「前日に競技ルールが変わったり、スケジュールが早い時間になったり大変だったんですが、本番は調子良くて優勝できて嬉しいです。本当にすごい楽しい大会で来年もチャンスがあれば出たいと思います!応援ありがとうございました!」

大会結果

左からプレボースト、片桐、ダンドワの順
photograph by Brett Wilhelm/X Games

優勝 片桐 悠 / 日本
準優勝 ジーン・ウィリアム・プレボースト / カナダ
3位 マティアス・ダンドワ / フランス
4位 アレックス・ジュメリン / フランス
5位 シーツェ・バン・メルケル / オランダ
6位 早川 起生 / 日本
7位 佐々木 元 / 日本 所属:鎌ヶ谷巧業
8位 内野 洋平 / 日本 所属:ベンヌ

大会概要

⼤会名称 : 【X Games Chiba 2023】 
開催期間 : 2023年5月12日(金)〜14日(日)- 3日間 – 13日(土)は雨のため中止
※詳細は公式HPをご覧ください。
大会会場:ZOZOマリンスタジアム (千葉県千葉市美浜区美浜1)
主催:X Games Japan組織委員会(株式会社XGJ、株式会社イープラス、株式会社ライブエグザム、株式会社CB、株式会社J-WAVE)主管:千葉市
後援:千葉県、一般社団法人ワールドスケートジャパン、一般社団法人日本スケートボーディング連盟、一般社団法人全日本フリースタイルBMX連盟、一般財団法人日本モーターサイクルスポーツ協会、一般社団法人TEAM JAPAN MX PROJECT、Bayfm
協賛:Monster Energy、HUF、INSTYLE GROUP、X-mobile、ムラサキスポーツ
協力:X Games Japan 千葉後援会、読売新聞社

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