日経平均は3日続伸。53.98円高の26601.03円(出来高概算6億7000万株)で前場の取引を終えている。

 16日の米株式市場でNYダウは小幅に続伸し、26ドル高となった。原油先物相場の上昇とともに関連銘柄が買われたほか、景気の影響を受けにくいディフェンシブ株の上昇も相場を下支えした。ただ、長期の年限の金利低下にもかかわらずハイテク株を中心に売りが出て、NYダウは一時300ドルあまり上昇してから失速。S&P500指数は-0.39%、ナスダック総合指数は-1.20%となった。本日の日経平均もNYダウ同様、8円高と小幅に上昇してスタート。朝方は前日終値を挟んだもみ合いとなり、26440.62円(106.43円安)まで下落する場面もあったが、香港株高などを受けて前場中ごろを過ぎ一時26709.26円(162.21円高)まで上昇するなど、やや方向感に乏しい展開だった。

 個別では、郵船<9101>や川崎船<9107>の上昇が目立ち、東エレク<8035>もしっかり。リクルートHD<6098>は決算を好感した買いが先行するもやや伸び悩んでいる。INPEX<1605>は原油高を受けて5%近く上昇し、ENEOS<5020>は連日で年初来高値を更新。また、急反発の日医工<4541>や債務超過解消のレオパレス21<8848>が東証プライム市場の上昇率上位に顔を出し、米社との経営統合に向けた株式公開買付け(TOB)実施が発表されたキトー<6409>はストップ高水準での買い気配となっている。一方、レーザーテック<6920>やトヨタ自<7203>が軟調で、ソフトバンクG<9984>も小安い。アサヒ<2502>は決算を受け原材料高への警戒感が強まり、東証プライム市場の下落率トップ。また、その他の決算発表銘柄では電通G<4324>などが大きく売られている。

 セクターでは、鉱業、海運業、石油・石炭製品などが上昇率上位。一方、食料品、銀行業、輸送用機器などが下落率上位だった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の53%、対して値下がり銘柄は43%となっている。

 本日の日経平均は前日終値を挟んで上下100円あまりのレンジでもみ合い、結局小高く前場を折り返した。日足チャートを見ると、5日移動平均線が上向きに転じ値動きもまずまず悪くない印象を受けるが、26700円台に位置する25日移動平均線手前で伸び悩み。個別・業種別では米株と同様に原油を中心とした市況関連株が堅調。一方、ディフェンシブ色の強い食料品はアサヒの決算を受けて原材料高への警戒感が強まっているとみられ、長期の年限の米金利低下により銀行株もさえない。東証プライム市場の下落率上位には成長期待の高い中小型株が目立つ印象だ。前引けの日経平均が+0.20%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.14%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆4000億円あまりとなっている。

 新興株ではマザーズ指数が-2.20%と3日ぶり大幅反落。日足チャートを見ると、5日移動平均線を一時的に上回っても戻りに弾みが付かず、値動き改善への期待が持ちづらいか。好決算の小型株が買われているとはいえマザーズ指数の押し上げには力不足で、中小型グロース(成長)株安の流れからメルカリ<4385>などの主力IT株は揃って軟調だ。

 さて、16日の米市場では10年物国債利回りが2.88%(-0.04pt)に低下。5月上旬に一時3%台に乗せてから足踏みが続いている。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.68%(-0.01pt)。こちらも4月下旬に一時3%台まで上昇してから低下に転じている。11日発表の4月消費者物価指数(CPI)などを受け、インフレピークアウトへの期待が広がっているとの見方もある。

 もっとも、原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI6月物)は1バレル=114.20ドル(+3.71ドル)まで再び上昇してきた。供給増加が緩慢ななかで中国の経済活動再開などにより需要が回復するとみられ、需給ひっ迫が意識されている。米ハイテク株安もインフレ懸念の根強さを感じさせる動きだろう。このところ米著名投資家や識者らが相次ぎインフレを睨んだ資産配分に言及している点にも触れておきたい。

 今回の決算発表シーズンでは、アサヒに限らず、日本を代表する企業であるトヨタ自などでコスト高の逆風が強く意識された。日経平均の予想EPS(1株当たり利益、日本経済新聞社が公表するPERから逆算)は4月15日時点の2085.70円に対し、5月16日時点では2009.62円に減少している。PER13.2倍、PBR1.15倍となっているが、こうしたEPS推移を見る限りバリュエーション向上への期待を持ちにくいだろう。

 16日発表の5月のニューヨーク連銀製造業景況指数が-11.6(予想+16.5、前月+24.6)となるなど、このところ世界的に経済指標の悪化も目立つ。相対的に日本株が優位になるとの期待の声もあるが、「世界の景気敏感株」としての位置付けが強いだけに、積極的に持ち高を増やそうとするグローバル投資家が出てくるか見通しづらい。TOPIX先物について、日々の取引手口情報や日本取引所グループの公表する投資主体別売買動向を見ても買い越しの動きは限定的だ。

 再び米市場に目を向けると、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)が27.47(−1.40)とじりじり低下。下方ヘッジ(あるいは投機)目的のプットオプション(売る権利)の持ち高解消の動きが窺えるにもかかわらず、米株式相場の上値が重いのは気掛かりだ。買い持ち(ロング)投資家の戻り売り圧力が強いとみられる。ベア・マーケット・ラリー(弱気相場のなかでの株高)での戻りは限られ、再び売り持ち(ショート)が積み上がる場面では下値不安が高まる可能性がある。

 その他、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が0.5ptペースでの利上げに再三言及している点に安心感を覚える向きもあるようだが、FRBが9日に公表した「金融安定性評価」では株式等のバリュエーションが依然として高いなどと評価されているようだ。かねて当欄で指摘しているとおり「FRBは市場にフレンドリーではない」と改めて認識すべきだし、仮にFRBが金融引き締めを緩めるようならインフレ懸念は一段と強まるだろう。同報告書で流動性の悪化により金融市場の急変に警鐘を鳴らしているように、日本株もなお不安定な展開が続くとみておいた方がよさそうだ。
(小林大純)