日経平均は大幅に6日続伸。440.05円高の30533.64円(出来高概算7億7311万株)で前場の取引を終えている。

 17日の米株式市場でダウ平均は408.63ドル高(+1.23%)と大幅反発。地銀の預金流出不安の緩和や4月住宅着工件数の増加を受けた景気後退懸念の緩和が投資家心理を改善させた。また、バイデン大統領とマッカーシー下院議長が債務不履行回避を確信していると発言したことも買いに拍車をかけ、終盤にかけて上げ幅を拡大した。ナスダック総合指数は+1.27%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+2.49%と大幅反発。米国株の大幅高を受けて日経平均は338.95円高からスタート。昨日からさらに1円超進んだ為替のドル高・円安も追い風に値がさ株やハイテク株に強い買いが入り、一時30667.13円(573.54円高)まで上昇。一方、急ピッチの上昇に対する警戒感が強まるなか、その後は30500円を意識した一進一退が続いた。

 個別では、米SOX指数の大幅高などを材料にレーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>が連日で大幅高となり、ローム<6963>、TDK<6762>のハイテクも高い。ファーストリテ<9983>、信越化<4063>など値がさ株も全般強い。円安を追い風にマツダ<7261>、デンソー<6902>が買われ、郵船<9101>、INPEX<1605>、コスモエネHD<5021>、三井物産<8031>など資源関連も上昇。自社株買いが好感されたソニーG<6758>、キヤノン<7751>は大幅高。岸田首相が米インテルの幹部などと面談と伝わり、新光電工<6967>とイビデン<4062>が急伸。クレディセゾン<8253>による持分法適用会社化が伝わったスルガ銀<8358>も大きく上昇。Twitterと認定代理店契約を締結したピアラ<7044>は一時ストップ高まで買われ、前日急伸したクオールHD<3034>、フェイスネットワーク<3489>は連日の大幅高に。

 一方、ソフトバンクG<9984>はハイテク株高のなか逆行安。NTT<9432>、KDDI<9433>の通信、JR東海<9022>、JR西<9021>の陸運のほか、日本郵政<6178>、アサヒ<2502>、エーザイ<4523>、花王<4452>などディフェンシブ系の一角が軟調。柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関してネガティブな報道があった東京電力HD<9501>は大きく下落。サイバーAG<4751>は、提供しているゲームについて子会社が訴訟提起を受けたことが嫌気され大幅安となっている。

 セクターでは電気機器、精密機器、機械が上昇率上位に並んだ一方、電気・ガス、パルプ・紙、、陸運が下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の48%、対して値下がり銘柄は47%となっている。

 日経平均は大幅に6日続伸し、2021年9月に付けたバブル崩壊後の高値30795円を窺う水準にまで一時上値を伸ばした。前日の米株式市場において久々に主要株価指数がそろって大幅に上昇したことや為替の一段の円安進行が追い風になっている。また、岸田首相が米インテルなど半導体メーカー幹部と面談することや、米マイクロン・テクノロジーが日本政府から2000億円の支援を受け、同社広島工場で次世代製品の生産を目指すことが伝わった。これらの材料を手掛かりに、指数寄与度の大きい半導体をはじめとしたハイテク株が大幅高となっていることが指数の引き上げに寄与している。

 米国株高の背景としては、くすぶっていた連邦政府の債務上限問題について進展の兆しが見られたことが挙げられる。バイデン米大統領は交渉の妥結に自信を見せたほか、マッカーシー下院議長もこの問題で合意をまとめられることを確信していると発言。当事者らからの楽観的な見通しを受けて投資家心理が改善した。また、米ウェスタン・アライアンスの預金が前四半期末から20億ドル余り増えたことが伝わり、地銀の経営不安が緩和したこともセンチメントを上向かせた。

 しかし、日経平均の急ピッチでの上昇については、さすがに過熱感を通り越して警戒感がくすぶりはじめたようだ。東証プライム市場の値上がり銘柄数を値下がり銘柄数で割った騰落レシオ(25日平均)は前日時点で143%と「買われ過ぎ」とされる120%を大幅に超えており、こうした状況は長期化している。また、日経平均の日足チャートをみると、25日移動平均線からの現状株価の乖離率は過熱感を示すとされる5%を大幅に超えてきている。

 少し前まで、日経平均は26000−28000円レンジが当面続くと言われていたが、現状の株価水準はレンジ上限を2500円程も上回る。もちろん、背景としては昨日の当欄「3万超えても勢いそのままの日経平均を考察」で指摘した通り、ここ数カ月の間に日本株に対する見方を大きく変えるような要素がいくつも重なったことが挙げられる。

 しかし、さすがに株価指数については一段の上昇を期待しにくい水準まですでに到達している。当初はたしかに海外投資家の日本株に対する見方の変化といった裏付けのある株価上昇だったともいえるが、今週に入ってからの株価上昇については「買うから上がる」、「上がるから買う」といった値動き重視の様相に切り替わっている印象も受ける。小さなきっかけで株価はもろく崩れることが予想され、上値追いには慎重になるべきだろう。

 また、前日の先物手口では興味深い動きが確認された。5月の国内大型連休入り前から日経225先物およびTOPIX(東証株価指数)先物で売り方上位となり、5月2日以降には225先物での売り越し基調が鮮明になっていたドイツ証券が、前日17日は225先物とTOPIX先物でともに大きく買い越し、買い方トップに躍り出た。これは売り方がいよいよ買い戻しに踏み切った証左ではないかと考えている。逆にいうと、売り方が遂に買い戻しを迫られたあたり、現状の株価水準は目先のピークに達したともいえそうだ。

 中国経済回復の勢い失速、それを裏付ける資源価格の軟化傾向、米国で徐々に増える企業倒産などの急速利上げの後遺症、米商業用不動産ローンの借り換え問題など、世界景気の先行きに影を落とす材料はいくつもある。こうした中にもかかわらず、現物の日経平均がバブル崩壊後の最高値に一時迫るところまで上昇してきたあたり、目先のピークを示唆している気がしてならない。

 本日は後場の日経平均の動きにいつも以上に注目したい。ここ数週間、日本株の独歩高ともいえる強い動きが続いてきたが、概ね共通していえることは後場が強いことだ。前場からの勢いがより加速する場合や前場にやや押されても後場は前場の高値を上回ってくることがよく見られた。上述したように日経平均が目先のピークを付けたとする予想が正しいのであれば、本日の後場の日経平均はこれまでとは異なり、前場高値を上回れず、前場よりも騰勢を弱める動きが見られるだろう。逆にそうならずに前日までと同様、後場に強い動きが見られれば、足元の日本株独歩高の状況はもう少し延長されることになりそうだ。ただ、仮に後者になった場合でも、日経平均がバブル崩壊後の高値を更新すればやはり目先のピークを迎えた可能性が高いと考える。
(仲村幸浩)