[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;30892.47;+318.54
TOPIX;2168.15;+10.30


[後場の投資戦略]

 日経平均は7日続伸と驚異的な躍進劇をみせており、東証株価指数(TOPIX)とともにバブル崩壊後の最高値を更新している。対ドルでの円安が前日からさらに1円ほども進むなど追い風が吹いているとはいえ、日経平均は直近1カ月間だけで2000円以上も上昇している。

 前日に東京証券取引所が発表した投資部門別売買状況によると、海外投資家は現物・先物合算で7699億円の買い越しとなり、現物だけでも5884億円と大幅な買い越しとなった。現物については、これで3月最終週(3月27−31日)から6週連続の買い越しとなり、累計では2兆9068億円にも及ぶ。将来の反対売買による決済を伴う先物ではなく、現物でこれだけの規模を買い越しているあたり、今回の海外投資家の動きには単なる買い戻しの域を超えたものが感じられる。

 米シリコンバレー銀行(SVB)が破綻した3月第2週(3月6−10日)から海外投資家の売り越しが続いたのは3月第4週(20−24日)までで、この3週間で現物では累計2兆1580億円売り越していた。一方、翌週の3月第5週(27−31日)から4月第4週(4月24−28日)までの間に現物で累計2兆1581億円とほぼ同額買い越した。この時点では筆者はまだ単純な買い戻しに過ぎないと考えていたが、5月に入ってからも現物の買い越しが続いているあたり、最近、市場関係者の間で指摘されている通り、海外投資家が日本株に対する見方を変えてきたことは確かといえる。

 一方、今週半ば以降の動きについては、東証プライム市場の値上がり銘柄数と値下がり銘柄数がほぼ拮抗するなか、値がさ株など指数寄与度上位の銘柄の上昇が指数をけん引している動きが明確に見られていることから、現物より先物主導の動きに変化しつつあると考えられる。実際、18日の日中取引および夜間取引の合計取引高は8万4000枚超えと、直近4営業日と比較して3万枚近くも増加した。昨夕から始まった19日付けの夜間取引での日経225先物の取引高もすでに3万枚超えと夜間取引としては異例の多さであり、売り方の買い戻しなどを巻き込む形で先物主体相場への転換が窺える。

 前日の当欄「『もうはまだなり』もピークアウトも意識する水準」で指摘したが、5月の国内大型連休入り前から日経225先物およびTOPIX(東証株価指数)先物で売り方上位となり、5月2日以降には225先物での売り越し基調が鮮明になっていたドイツ証券は、17日に225先物とTOPIX先物でともに大きく買い越しに転じた。そして前日も225先物は小幅だった一方でTOPIX先物では大きめの買い越しが続いていた。同証券の手口は商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの動きとの連動性が高い傾向があるため、先物主体の短期筋もやはり日経平均の3万円突破を受けて、買いの流れに乗じてきたようだ。

 ただ、今週から、現物主体の動きから先物主体の動きに切り替わっているとすれば、3月末以降から進んできた日本株の独歩高基調はやはり一旦は小休止の域に入るのではないだろうか。日経平均が本日バブル崩壊後の最高値を更新したことでさすがに上昇一服感や達成感もこれまで以上に強まってくると考えられる。ここまでの強い基調から大幅な値崩れは想定しづらいが、29000円台半ばあたりまでの調整は十分にありえるだろう。海外勢の日本株に対する見方が変化しつつあるとはいえ、世界景気の先行き不透明感が強いなか、日本株だけがいつまでも独歩高を続けるとは想定しづらい。ここからは、これまで指数をけん引してきた半導体関連などのハイテク株よりは、指数対比で出遅れ感の強い銘柄などに着目した方がよさそうだ。
(仲村幸浩)