[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;30848.07;+165.39
TOPIX;2152.00;-0.40


[後場の投資戦略]

 日経平均は下落してスタートも切り返して反発している。米株式市場の取引終了後に発表された半導体エヌビディアの決算が実績および見通しともに市場予想を大幅に上回るポジティブサプライズとなり、東京市場でも半導体株がけん引している。一方、米債務上限問題の先行き不透明感がくすぶるなか、半導体関連を除けば軟調で、東証株価指数(TOPIX)やマザーズ指数は下落している。

 25日の夜間取引の日経225先物は米国株安を受けて一時30400円まで下落していた。前日までの続落で調整色を強めていた日経平均が本日30500円を下回っていれば、ムードは一段と悪化していたことが想定されたため、本日の日経平均の上昇と節目の30500円キープは投資家心理を支える点では大きそうだ。

 一方、外部環境を巡っては先行き不透明感が強まっている。米債務上限問題については、デッドラインが近づいているなか、いまだに合意の兆しを明確に見せていない。また、イエレン米財務長官は、6月1日にも米連邦政府が資金枯渇に陥ると改めて警告し、財務省短期証券(TB)の6月1日満期のレートは一時7%上回った。さらに、格付け会社のフィッチ・レーティングスは24日、米国の長期外貨建て発行体デフォルト格付け(IDR)「AAA」を「レーティング・ウオッチ・ネガティブ」に置いたと発表した。今のところ相場への影響は限られているが、2011年の相場を彷彿とさせるようで嫌な印象だ。

 他方、すでに沈静化は時間の問題で相場の関心事の中心から外されてきたインフレについての警戒感が高まっている。前日に発表された英国の4月消費者物価指数(CPI)は市場予想を大幅に上回り、食品・エネルギーなどを除くコア指数は3月から大きく加速。これを受けて24日の取引では英国債利回りが急上昇、トラス前政権が財源の裏付けのない大型減税計画を発表して市場が混乱に陥った時以来の高水準を付けた。

 さらに、米国では、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が「インフレが2%目標に向かって低下しつつある明確な兆候が得られるまでは、利上げの停止を支持しない」と発言。これら複数の材料が相まって、米債利回りも大きく上昇している。

 他方、米債利回りの上昇を受けて、為替の円安・ドル高トレンドが強まっており、足元でドル円は1ドル=139円台後半と、140円超えを窺う水準にまで上昇している。こうした円安が東京株式市場の下値を支えているともいえるが、これだけ円安が進んでいる割には日経平均の動きも鈍ってきており、明らかに22日までの状況とは変わってきている様子。円安が素直に日本株の上昇につながりにくくなっているあたり、投資家心理が垣間見えるようで、注意を払うべきだろう。

 また、海外勢の日本株高シナリオの一つには「植田日銀体制下での金融緩和継続」も挙げられていたが、ドル円が140円台を超えてくると、日本国内でも沈静化したはずの輸入インフレの再燃が想起される。これが来年以降の春闘での賃上げ継続を連想させれば、日銀の緩和継続のスタンスに疑念が持たれる場面も出てくるかもしれない。米債務上限問題だけでなく、金利・為替の動向、これらとの株価の連動性などを今後注意深く見守っていきたい。
(仲村幸浩)