〇諸策に方向感なく、企業業績が押し上げ〇



夏場の変動要因と見られた、「オバマケア代替法案(その後のトランプ政策)」、「ブレグジット交渉」、「米中100日対話」、「朝鮮半島南北対話」など、揃って成果が無く、世界の政治情勢は方向感が得られない状況が続いている。仮に、進展があったとしても、強い抵抗・反対運動となっていた可能性もあるので、何とも言えないが、現状追認的なムードの一因と考えられる。



その中でも、世界の株高構図が続いているが、6月初めまでの米5大ハイテク企業が牽引する力強さを欠いている印象だ。この間、最も目立ったのはドル安で、IMM通貨先物市場(7/18現在)では、1年超ぶりに19.1億ドルの売り越しに転換した。ユーロ建玉の買い越し額は9.1万枚、6年超ぶりの大きさ、国境の壁で大幅売り越しだったメキシコペソは11.3万枚の買い越し。見返りに円は12.7万枚、14年1月以来の売り越し水準。米トランプ政策の期待が剥げ落ち、追加利上げシナリオが後退していることが背景と考えられる。ECBが秋には出口策を議論するとの見方が後押しした。



日本株は、潜在的なドル安円高懸念が圧迫していると考えられる。同時に、米中貿易是正交渉の失敗は、米国の貿易規制を強めるとの警戒ムードが漂う。断片的に、「米中で世界の鉄鋼生産能力削減を協議」、「米軍需産業保護を狙い、鉄鋼、アルミ以外も流入抑制を検討(大統領令署名)」などが伝えられる。日本株の業種別株価指数の6ヵ月前比(7/21現在、トランプ政権発足時)を見ると、TOPIXの+6.29%に対し、石油-4.82%、海運-5.13%、銀行-2.73%、証券・商品先物-3.37%などと並んで、輸送用機器-3.86%が目立つ。日本の対米黒字の主因は自動車で、しばしば取り上げられる。米国の自動車販売が頭打ちなのも悲観的に見られている。中国での日本車販売は好調が伝えられるが、他業種ほど中国恩恵を楽観的に見られていないようだ。規制が検討されている鉄鋼などが価格安定効果などの恩恵を受けているのと対照的(中国は米産牛肉に続き、コメの輸入解禁にも踏み切るので、農産物への影響が注目される)。



米国では、株式ファンドへの資金流入に対し「秋の暴落論」を唱える向きが出て来たり、ドル安恩恵が乏しい(税制改革遅延のダメージ=小型株の実効税率32%、大型株26%、もあり)小型株に割高観測が強まっている(PERはラッセル2000が26倍、S&P500は17.3倍)。業種別には、一般消費財、エネルギー、ヘルスケア関連など。とくに小売業への見方が厳しい。日本では金曜日夜に、カタログ通販大手千趣会が100億円の最終赤字転落を発表した。総じて、内需の弱さ、構造変化への乗り遅れの代表的事例と受け止められる。米国と類似した産業構造の変化を投影しよう。



今週は4-6月決算発表が本格化する。全体として企業業績の好調が押し上げ要因になると期待される一方、表面上の決算の良し悪しだけでなく、バックグラウンドを詮索した選別物色の流れが想定される。





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出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/7/24号)