〇為替攻防睨みつつ、安倍再生相場の可能性を探る〇



今の日本株には致命的な欠陥がある。海外株高の大きな原動力になっていると見られる「債券から株式への資金シフト(グレートローテーション)」が極めて限定的な点だ。債券(国債)を売っているのは銀行と生損保、買うのは日銀だ。銀行と生損保は債券を売っても株式を買えない。自己資本規制があるためで、銀行(都長地銀)が株を買い越したのは06年、生損保は07年が最後だ。今は株価が上がれば、保有比率が上昇しないように売り出す機関になっている。



海外相場の主戦場は債券市場。26日の米市場は、ハト派的なFOMC声明を受け(バランスシート縮小開始時期を明示せず、インフレ率の弱さを認め、12月利上げシナリオがやや後退)、10年債利回りが2.33%から2.29%に低下、ドルが全面安となった。米株は金融株が軟調になったが、AT&Tやボーイングの好決算を投影し、3指数揃って最高値更新。やや誇張して言えば、債券を買っているのは仮需、売っているのは実需、実需分の換金資金が株式市場に流れ込む構図が活きていると考えられる。



日本株の上昇は、海外との比較での出遅れ感が第一になるが、ここに為替要因が介在する。現実の為替は日銀政策の奏功で、ドル円110〜115円ゾーンで安定しているが、潜在的な円高懸念が圧迫している。大きな上昇局面(ゾーン切り上げ)はアベノミクス・スタートの13年前半と黒田バズーカ第二弾(ハロウィン緩和)の14年11月〜15年6月の2回に限られる。日銀の追加策は事実上無くなったことを見ると、第3波はアベノミクスの動向(経済再浮揚策)がカギを握ると考えられる。



安倍内閣の危機感が一気に高まったことで、逆説的に見れば、反転攻勢の機会も生まれる可能性が出てきた。第一の基盤は、自民党内の支持基盤再構築が進行していると見られる点。20日、安倍首相は岸田外相と会談し、閣外への離脱が噂された岸田外相は安倍政権を支える姿勢を再表明した。麻生副総理に近い蔵内・獣医師会会長が加計問題で火消しに動いたことで麻生派も安倍政権を支える意向と解釈できる。加えて25日の二階派会合で、アベノミクス推進方針を確認した。安倍首相の出身母体の細田派を加え、主流派体制を固めたと思われる。余談だが、外相就任が噂される茂木政調会長は訪問先のインドで26日夜、スワラジ外相と会談を行った。海洋の自由航行確保での連携強化で合意したが、安倍首相の政策推進意欲を投影したものと受け止められる。



二階派は、自衛隊の存在明記などの改憲を提言、経済政策では14年の消費税引き上げで消費が低迷しているとして、10兆円規模の補正予算と来年度予算の年率3〜4%の拡充を目指す、とした。二階幹事長は「国土強靭化計画」の推進者として知られ、防減災、地方創生に強い意欲を持っていると思われる。第二の基盤となる政策再構築に活かされるか、注目点となる。



日本が財政拡張策に踏み切るとの見方が出れば、日本株評価に大きな刺激になり得る。折しも、トヨタの全固体電池による電気自動車、塩野義のタミフルを上回るインフルエンザ治療薬の治験成功、国立がん研による「血液1滴、がん13種早期発見」、国交省の「橋の安全基準、100年に設計基準改定」など、新技術系の話題が続出している。不人気と同様、流れは速く、ムードも高め易い。そもそも、15年6月の日経平均高値20868円を抜くこと自体が、アベノミクス再信認につながるものと考えられる。



以上



出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/7/27号)