米国国務省による2018年の人権報告書では、海外各国を対象として、個人の人格の尊重、市民の自由の尊重、政治プロセスに参加する自由、政府の汚職と透明性の欠如、人権侵害の疑いに対する国際機関および非政府機関の調査に対する政府の姿勢、差別・社会的虐待・人身取引、労働者の権利などが評価されている。



「恣意的逮捕または留置・拘留」に関する冒頭の言及を見ると、日本は「法律により恣意的逮捕や留置・勾留は禁止。市民社会団体は警察が外国人イスラム教徒に対する民族的プロファイリングおよび監視を行っていると報告」、中国は「恣意的な逮捕と拘留は深刻な問題。法律は、公安職員に広範な行政拘禁権限、正式逮捕または刑事告発なしで長期間個人を拘留する能力を認めている。法律は、法廷での逮捕または拘留の合法性に異議を申し立てる人の権利を規定しているが、政府はこの要件を遵守していない」、香港は「法律は、恣意的な逮捕および拘留を禁止し、法廷で逮捕または拘留の合法性に異議を申し立てる人の権利を規定しており、政府は一般にこれらの要件を遵守」としている。定量的な評価が実施されているわけではないが、言及量は「香港<日本<中国」の順に多くなっている。香港に関する記述は非常に簡潔であるのに対して、日本は「原則はあるけれど・・・」という書き方が多く、中国はほぼ全面否定に近い。なお、この内容はあくまでも2018年の状況である。2019年の民主化運動を受けて、香港の書きぶりがどのように変わるかは興味深いところであろう。



「カルロス・ゴーン問題」では、日本の検察問題に焦点が当たることになった。刑事訴訟法の恣意的乱用はかねてより指摘されていたことであったが、ここまで世界的に注目されるのは今回が初めてである。英米法に近いはずの刑事訴訟法は、海外から批判されている。刑事人権侵害の諸制度は、戦時中の治安維持法体制を引きずり、旧刑訴法を引きずって「新刑訴」の条文となって現在に及んでいる面がある。外形的な法体系だけでは評価できないという典型例であろう。



日本の法制度を前提とすると、ゴーン氏の不法出国を擁護することは難しい。ただ、日本の特殊性に焦点が当たった状況で、日本に高度人材を受け入れ、東京を国際金融シティとして成長させられるかは疑問である。世界に周知されてしまった以上、「カルロス・ゴーン問題」を奇貨とすることを期待したいところである。



写真:ロイター/アフロ