1815年のナポレオン戦争終了までに200%に達したイギリスの政府債務(対GDP比)は、1914年までに25%へ低下した。第二次世界大戦後、イギリスの政府債務は259%、アメリカは112%に達したが、アメリカは1980年代初頭に31%に、イギリスは1990年までに25%にまで低下した。



コロナショック対応のための経済対策を受けて、多くの国で当面の政府債務は拡大する公算が大きい。米連邦予算委員会は、2020年の財政赤字が3.8兆ドル超(GDP比18.7%)、2021年には2.1兆ドル(同9.7%)、2025年までに合計11兆ドル強と予測した。政府債務残高は、危機前のGDP比80%弱から2020年度末までに100%を超過、2023年までに第二次世界大戦直後の記録(106%)を上回り、2025年までにGDPの107%に達する見通しとされている。



IMFは5月7日付の「コロナ時代の国有企業」で、109ヵ国、約100万社のサンプルから、国有企業の生産性は民間企業と比べて平均で3分の1低いと主張した。「政府部門の関与が強まることで民間部門の活力が毀損される」という仮説には一定の説得力があるようにも感じられる。しかし、既存の研究における政府債務と経済成長の関係は必ずしも明確ではない。



2010年にReinhart、Rogoffは「政府債務がGDP比で90%を超えると、経済成長率が劇的に減速する」との研究成果を公表した。この検証結果には誤りが含まれていたようだが、一定水準を上回る債務比率(GDP比で95%や96%など)が経済成長に悪影響を及ぼすと主張する研究も存在する。一方、2014年に公表された「Debt and Growth: Is There a Magic Threshold?」では、政府債務のGDP比が90%を超える国では1人当たりGDPの成長率が低かったが、15年平均で見るとそういった傾向は確認できないとされた。むしろ政府債務比率が上昇している国が、下落している国よりも低成長にある点が強調されている。



(株式会社フィスコ 中村孝也)