長崎県対馬市は九州北方の玄界灘に位置し、博多へ130km、韓国の釜山へ50kmの距離にあり、南北80km、東西18kmの西日本の要衝である。この対馬において韓国資本による土地の買収が拡大し、自衛隊の隣接地域まで領土の浸食が着々と進行している。我が国の安全保障上の危機と捉え、その現状と今後の対策を検討したい。



対馬の歴史は、663年に朝鮮半島で勃発した白村江の戦いにはじまり、674年に厳原が国府の地となり、以来大陸との交易の要衝となっている。その後も日清・日露戦争、第2次世界大戦そして現代に至るまで、国防の最前線の島としてその名を馳せている。対馬には現在も陸海空3自衛隊および海上保安部が所在し、監視活動など警戒任務を実施している。



対馬の人口は、2020年7月末現在約2万9,700人である。1998年は約300人に過ぎなかった韓国からの観光客は、2007年には6万5千人、2018年には島の人口の14倍の約41万に膨れ上がった。2007年夏には海上自衛隊対馬防備隊本部の隣接地にあるリゾートホテルが韓国資本に買収され、翌2008年にも同様に隣接地約3,000坪が島民名義で韓国資本に買収されている。韓国資本による対馬における買収土地の比率は0.26%である。やるかどうかは別として、買い戻しなどの対策は可能な範囲に留まっているものと思われる。



自衛隊の基地の周りでの土地取得を制限する法律は、残念ながら該当するものがない。1925年に施行された「外国人土地法」では、「第1条、外国人・外国法人が属する国が制限している内容と同等の制限を政令によりかけることができる。また、第4条では、国防上必要な地区においては、政令により、外国人・外国法人による土地の権利取得を禁止、または、条件、制約をつけることができる」と、規定している。2008年に「日本の領土を守るために行動する議員連盟」が、この問題に関して政府見解を質した。それに対して2009年に鳩山内閣は、「法的効力の有効性は確認するものの、運用は検討していない」と答弁した。さらに2010年、菅首相は「規制に政令が必要だが、現在は存在せず、事実上、この法律は有名無実だ」と答弁している。また、法務省は「WTO協定を踏まえれば、外国人であることを理由に、土地取得を法律で制限することは困難」との解釈を示している。



2005年3月、韓国慶尚南道馬山市議会は「対馬の日」条例を出席議員全員の賛成で可決し、「対馬島が韓国領土であることを内外に知らしめ、領有権を確立する」と規定した。また、2007年に前海軍作戦司令官の金成萬は、対馬への軍事侵攻計画を作成するように韓国政府へ進言している。さらに、2008年7月には、韓国のハンナラ党の二人の国会議員が「対馬は韓国領土であり、日本は対馬を韓国政府に即時返還すること」を求める返還要求決議を韓国国会の外交通商統一委員会に付託している。



決して、韓国からの観光客の来訪を否定するものではないが、国も自治体も各種施策に安全保障の視点を加えることを提言したい。次のような状況を想像してもらいたい。島内の宿泊施設が次々に韓国資本に買収されると、地主も、店主も、利用客も韓国人という状態になる。そして、韓国人観光客は韓国資本のホテルに宿泊し、韓国資本の飲食店及び免税店でお金を使い、日本は場所を提供するだけという消費サイクルになる。対馬は韓国領であると案内するガイドが現れ、いたるところにハングル文字の看板が溢れるようになる。いよいよ国境の島対馬は、日本人には住み心地の悪い場所になってしまうかもしれない。



対馬の戦略的重要性を認識した政府は、韓国資本の土地買収や過疎化対策として「国境対馬振興特別措置法案」を検討した。その議論の過程で、対馬のみならず有人国境の離島の振興を主眼とした特別措置法も提唱し、2016年4月には「有人国境離島の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法」を施行、8都道府県71島を選出した。この法律では、(1)島民の運賃の低廉化、(2)生活・事業物資費用の負担軽減、(3)雇用機会の拡充、(4)安定漁業の確保、などが謳われている。



島民支援の発想は理解できるが、それに加えて対馬観光の振興のため、日本人観光客を誘致し、交通費や宿泊費用の補助など、対馬に行き易くする政策を付け加えることはどうだろうか。対馬の将来像を考えると、さらなる過疎化、高齢化、主要産業の衰退が見込まれる。そのため、企業や教育機関の誘致及び有事に備えた自衛隊の各部隊の増強などの選択肢もあろう。



在韓米軍の撤退や朝鮮半島統一などが起きると、現在の南北朝鮮両陣営の境界線である38度線が対馬海峡まで下りてくることが考えられる。そうなると、難民の上陸への対処が必要となり、武装工作員が紛れ込む可能性も疑う必要が出てくる。我が国の安全保障上、国家が対馬の防衛態勢拡充のための施策を講じる必要性について考えるべき時であろう。