10月18日、イランのモハンマドジャバド・ザリーフ外相は声明で「2015年の国連安全保障理事会(以下「安保理」という)決議で規定された武器禁輸措置が自動的に解除された」と発表した。この解除に先立ち、ハッサン・ロウハニ大統領は「どこの国とも武器の輸出入が自由に行えるようになる。国民の忍耐、抵抗のおかげだ」と勝ち誇った。JCPOA(包括的共同行動計画)に基づいて核兵器開発の大幅な制限を受け入れたことで、2015年にイランは過去の国連制裁をすべて解除されたが、武器禁輸は安保理許可制という形で5年間維持された。2020年10月18日をもって武器禁輸措置が解除され、武器の輸出入の制限から解放されることになった。



これに対し、10月18日、ポンペオ米国務長官は「核合意に記載されたイランへの制裁復活の手続きを行った。トランプ大統領は、イランとの武器取引に関わった個人・団体に対して制裁する措置の大統領令に署名した」と米国独自の制裁発動を発表した。



2019年6月にペルシャ湾での米軍無人機が撃墜され、同年9月にはサウジアラビア石油施設攻撃が行われた。これに対してトランプ大統領は、2020年1月にイランの英雄である革命防衛隊ソレイマニ司令官をイラクで殺害した。双方の報復合戦を経て、両国の対立が激化したまま現在に至る。2020年6月の米国共和党調査委員会による国家安全保障戦略報告は、「イランを世界有数のテロ支援国家」と指定し、「アルカイダ、タリバン、ヒズボラ、その他のテロリストネットワークを支援し、アメリカ軍と同盟国に脅威を与えている。さらに、アラビア海と紅海での航行の自由を脅かしている」と断定した。「周辺国においてもサイバー攻撃、化学兵器の使用、暴動や内戦の誘導など、中東を不安定化させている」と非難している。



イランのザリーフ外相は、6月16日にロシアのモスクワでラブロフ外相と会談し、武器禁輸措置解除への支持を取り付けた。解除後にロシア製の地対空ミサイルシステムS400やスホイ30戦闘機の購入も合意されたようだ。アミール・ハタミ国防相は、8月にモスクワでの軍事展覧会へ出向き、すでに防空ミサイルシステムや戦闘機の視察を終わらせている。イランは、インドに続くロシア製兵器の最大の輸入国の一つになるだろう。



さらにザリーフ外相は、10月11日に中国南西部の騰衝(テンチョン)で王毅外相と会談し、中東の緊張を緩和する新たな協議の枠組みについて意見交換した。両外相は「すべての当事国が平等に参加し、地域相互間協議の枠組みを創設し、対話を通じた相互理解と中東における安全保障の問題解決法を探る」と声明を発表した。

これまでの経済制裁や新型コロナウイルス流行の影響でイランの財政力は疲弊している可能性が高い。イランの経済再生には、欧州等との貿易回復が優先されよう。イランによる各種の兵器取得は限定的との見方から、武器禁輸措置解除後直ちに、イランの暴走や地域の不安定化はないと見られている。