S&Pの「Global Debt Leverage: Risks Rise, But Near-Term Crisis Unlikely」では、世界の債務残高比率(対GDP比)が2020年265%から2023年に256%へ低下し、近い将来において債務危機の発生する可能性が低いと主張されている。今後2年以内に債務危機が発生する可能性が低いと見る理由は、期待される景気回復、2021年央までのワクチン普及、良好な資金調達条件などである。2020年の世界の債務残高比率は前年から14%ポイント上昇すると見込まれるが、そのうち2/3が債務増加、1/3がGDP減少の影響である。



一方、債務不履行は2009年以来のレベルにまで大幅に増加する可能性が高いとされている。投機的格付社債のデフォルト率は、2020年9月時点で米国が6.3%、欧州が4.3%であったのに対し、2021年6月時点での過去1年間のデフォルト率は、それぞれ12.5%、8.5%に上昇することが見込まれている。経済を悪化させる方向のリスクが警戒されており、景気回復の停滞、パンデミックの継続的な蔓延やワクチンの不備、金利の持続的な急騰と信用スプレッドの劇的な拡大、今年以降の債務の伸びの目立った減速がないこと、消費需要の回復が予想よりも少ないこと、などが挙げられている。

また、パンデミックが始まって以来、特にラテンアメリカやサハラ以南のアフリカなどで、ソブリン債に対するネガティブな見通しが増えている。投機的格付けのソブリン債は、本質的に財務が脆弱であり、格下げに伴うショックの影響を受けやすい。新興市場やフロンティア市場の多くでは、財政・金融の柔軟性が限られており、対外的な不均衡も大きい。経済的なリスクを負うことなく、債務を発行したり、中央銀行の信用を拡大したりする余地は限られよう。



(株式会社フィスコ 中村孝也)