2021年10月5日、AFPは、「フランスのアラン・リシャール元国防相ら超党派の台湾友好上院議員団4人が、10月6日から10日の間、台湾を訪問、10月7日には蔡英文総統と会談する」と報じた。また、ロイターは、「パリの中国大使館は3月、フランスの議員が台湾高官と面会することについて取りやめるよう警告しているが、フランス外務省は、『フランスの議員は、誰でも望む相手と自由に面会できる』と中国の警告を一蹴した」と報じている。



中東欧諸国の一部では、中国の人権問題や「一帯一路」の経済効果に懐疑的な見方が強まっており、中国と距離を置き、台湾に接近する動きが目立ってきている。2020年8月にチェコのミロシュ・ビストルチル上院議長率いる代表団が台湾を訪問した。その際、中国の王毅外相は「チェコ代表団による訪台は中国への挑発だ。中国はビストルチル議長の近視眼的行動と政治的投機に対する大きな代償を払わせるだろう」と恫喝した。



これに対し、フランス外務省は「欧州連合の一員に対する脅しは受け入れられない。我々はチェコと連帯する」と述べ、ドイツのマース外相も「脅迫はふさわしくない」と歩調を合わせている。チェコの老舗ピアノメーカー「ペトロフ」が中国からの注文を取り消されたと伝えられているが、現時点で、大きな代償に該当するような事象は確認できない。



中国は、仏独からの反発により、EUとの投資協定批准に与える影響を考慮し、行動を自制したと考えられる。英メディア等によると、リトアニア、チェコ、スロバキアの3カ国は、10月下旬、台湾の政府機関や民間企業幹部からなる視察団受入れを決定したと報じた。リトアニア、チェコ、スロバキアは、今年台湾に新型コロナウイルスワクチンを無償提供し、関係を深めている。





中国離れと台湾接近に意欲を示すのがリトアニアだ。今後10年間を対象とする「脅威評価2019」において、リトアニアは、ロシアの軍事的脅威の次に中国の影響力拡大を脅威としている。2021年5月、リトアニア議会は中国による新疆ウイグル自治区での人権侵害をジェノサイドと認定し、7月に台湾の代表処(大使館に相当)を首都ビリニュスに開設した。



中国と中東欧16カ国は、2012年に経済協力の枠組み「16+1」(後にギリシャも加わり「17+1」)を設立し、中国は中東欧諸国を欧州連合(EU)への影響力拡大に活用しようとしていた。しかし2021年2月の首脳会議では5カ国の首脳が欠席し、5月にはリトアニアがこの枠組みからの離脱を表明している。



「一つの中国」の原則を主張する中国は、国慶節に当たる10月1日から4日の間、台湾南西部の防空識別圏(ADIZ)に約150機の航空機を進入させた。これは、フランスのリシャール元国防相の台湾訪問や日米英蘭加ニュージーランド6カ国による沖縄南方での共同訓練への反発を示しているものと思われ、中台の間で緊張が高まっている。BBCによると、台湾国防部長は10月6日、「中国との緊張関係が過去40年で最悪の状態だ。両国の間で、偶発的な衝突の危険がある」と発言した。さらに台湾の立法院(国会)の委員会予算審査では、軍事的威圧を強める中国について「台湾を全面攻撃できる軍事能力を2025年に完了する」と報告している。



蔡英文総統は、米外交専門誌フォーリン・アフェアーズ11/12月号への寄稿で「台湾が陥落すれば、地域の平和と民主主義国の同盟体制に破壊的結果をもたらす。今日の世界における価値観の衝突において、権威主義が民主主義よりも優位に立っていることを示すことになる」と述べ、力による一方的な現状変更を試みる中国の脅威に対して、国際社会は台湾とともに立ち向かうべきだと訴えた。



わが国に目を向ければ、岸田新総理は、総裁選において「中国に対して権威主義的、独裁主義体制が拡大している」と述べ、「台湾海峡の安定や香港、新疆ウイグル自治区の人権問題に毅然と対応していく」と主張している。バイデン大統領と岸田総理は、電話会談において「インド太平洋及び世界の平和、安全、安定の礎である日米同盟の強さ」を確認した。さらに、バイデン大統領は、「自由で開かれたインド太平洋地域という共通のビジョンを推進する上で、日米両国が重要な役割を果たしていくため、今後数年間にわたって日米関係を強化していきたい」と述べている。また、麻生副総理(当時)は2021年7月、「台湾で大きな問題が起きると、間違いなく『存立危機事態』に関係してくると言っても全くおかしくない」と述べ、中国が台湾に侵攻した場合、集団的自衛権を行使できる事態になりうるという認識を示している。



台湾有事に際しての日米安保の枠組みが効果的に機能するためにも、わが国としての法整備や具体的な共同要領など、予め綿密な準備を整えておく必要があるだろう。







サンタフェ総研上席研究員 將司 覚

防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。



写真:REX/アフロ





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