連邦準備制度理事会(FRB)が6月連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げを実施する確率が上昇した。インフレの鈍化ペースが想定以上に遅く、労働市場も依然力強いことが背景となる。債務上限問題解決に目処がたったほか、地銀の混乱もいったん鎮静化したことも追加利上げの思惑を後押しした。



前回5月FOMCの声明で「追加利上げを予想する」とのガイダンスが削除され、景気減速や金融混乱を理由に市場はFRBが6月会合で利上げ停止するとの思惑をいったん強めた。しかし、週次失業保険申請件数には増加が見られず、失業率も50年来の低水準での推移を続けるなど、FRBが金融政策決定において重要視している労働市場にひっ迫緩和の兆しが見られない。消費や住宅関連指標も依然強い。FRBが特に注視しているインフレ期待で、ミシガン大消費者信頼感指数の長期期待インフレ率が想定外に2011年以降で最高となったことも追加利上げ観測を強めた理由のひとつ。



金利高値付近でのFRBの見解は分かれる。タカ派のセントルイス連銀のブラード総裁は利上げがインフレの保険になるとしながらも、次回会合にはオープンマインドで望むと利上げ停止も選択肢に入れた。ただ、主要なリスクはインフレが鈍化しないことや再び上昇することだと言及。タカ派色は弱めていない。米ダラス連銀のローガン総裁は「インフレにおいてFRBはまだ、必要な進展ができていない」との見解で、「現在のデータは、利上げ停止の段階にないことを示唆している」とした。ただ、今後のデータ次第で6月の利上げが必要にならない可能性も除外していない。ジェファーソンFRB理事は過去の利上げの遅行効果を辛抱強く見極めていく必要があると、利上げを停止し、経済やインフレの動向を見ていくことを支持する姿勢を見せた。



6月FOMCまでにはFRBがインフレ指標として注視しているPCEコアデフレータや消費者物価指数(CPI)、さらに最新雇用統計の発表が予定されている。さらに、金融システムにもいまだに不透明性が高い。債務上限交渉も妥結への期待があるとはいえ、行方は不透明。6月FOMCの利上げの可能性も流動的と見られる。