今週は引き続き米国の債務上限交渉の行方に注目が集まる。マッカーシー下院議長が早くて週末にも交渉妥結し、今週下院で討議が可能との楽観的見通しに期待観も一時ひろがった。しかし、共和党が政府側が歩み寄りをみせず理にかなわない提示を理由に交渉を中断。イエレン財務長官が6月1日にも連邦債務が上限に達すると警告する中、交渉が難航し債務不履行リスクが上昇するとドル売りにつながる。また、財務長官がさらなる銀行合併が必要となる可能性を大手銀の最高経営責任者(CEO)に伝えたとの報道も金融不安の再燃につながっており、引き継き状況を睨む展開。



そのほか米国では1−3月期国内総生産(GDP)改定値や米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として注視しているPCEコアデフレーターの4月分、さらに5月ミシガン大消費者信頼感指数、指数の長期期待インフレ率に注目が集まる。また、英国では消費者物価(CPI)が発表される。予想を上回ると利上げ観測にポンド買いが強まる。



FRBはまた5月2日-3日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を公表予定。債務上限問題や金融状況に不透明性が存続する中、6月連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げの可能性を探る。FRBはこの会合で0.25%の追加利上げに踏み切った。地銀破綻をきっかけにした金融混乱の中、システム全体への影響は限定的との見方に基づき、インフレ制御を優先した。同時に、「追加利上げを予想する」との文言を声明から除き、今後利上げを停止する選択肢も残した。4月PCEコアデフレーターは横ばい予想。インフレの遅い鈍化が確認されると利上げ観測を強めドル買いにつながる。



週次失業保険申請件数は特に増加が見られず、失業率も過去50年間で最低水準を維持するなど、労働市場のひっ迫が緩和する兆候はあまり見られない。さらに、インフレもピークに達したものの、改善ペースは遅い。長期期待インフレは逆に上昇が見られ、6月FOMCでの利上げ確率も一時に比べ上昇傾向にある。政策金利がピークに達する中、FRB高官の追加利上げへの意見も分かれている。数名の高官は1980年以降で最も急速な金融引き締めによる経済や金融への影響を見極める必要があると主張している。一方で、インフレが高過ぎで、まだ、十分な金融引き締め域ではないと、追加利上げを支持する高官もいる。パウエル議長は19日のイベントで信用ストレスを受けて想定していた程高く金利を引き上げる必要がないかもしれないとの見解を示した。「まだやるべきことがある」との言及もなく、ハト派ととらえられた。ただ、次回の金融政策を巡り決定はしていないとしており、今後発表される雇用統計やインフレ指標動向次第と考えられる。



■今週の主な注目イベント



●米国

23日:5月製造業・サービス業PMI速報、4月新築住宅販売件数、5月リッチモンド連銀製造業指数、ローガン米ダラス連銀総裁があいさつ

24日:連邦公開市場委員会(FOMC)議事録公表

25日:4月シカゴ連銀全米活動指数、週次失業保険申請件数、1−3月期国内総生産(GDP)改定値

26日:4月個人所得・支出、PCEコアデフレーター、4月卸売在庫速報、4月耐久財受注速報、5月ミシガン大消費者信頼感指数確定(26日)、などが予定されている。また、連邦準備制度理事会(FRB)は24日に連邦公開市場委員会(FOMC)議事録を公表する。



●ユーロ圏

23日:ユーロ圏製造業・サービス業PMI、デキンドスECB副総裁が基調演説、ナーベル独連銀総裁が討論会参加

24日:独IFOビジネス景況観

25日:独GDP



●英国

23日:製造業PMI

24日:CPI、英中銀ベイリー総裁が基調演説、WSJインタビュー



●中国

22日:ローンプライム金利



●日本

26日:東京CPI



●NZ

24日:NZ準備銀行金融政策決定会合