米労働省が発表する8月雇用統計の市場エコノミスト平均予想で、非農業部門雇用者数は前月比+14.5万人と7月からさらに伸びの鈍化が予想されている。ただ、失業率は3.6%と、7月に続き約50年ぶりの低い水準が維持される見込み。



雇用統計の先行指標のひとつである民間部門の雇用者数を示すADP雇用統計の8月分は前月比+17.7万人と、伸びは予想を下回り1月来で最小となった。同統計は労働省が発表する雇用統計での雇用者数を平均1.6万件上回る傾向にある。また、一部で行われた従業員ストの影響では1月にあたり1000件雇用減となるため、伸びの鈍化は必至と見られる。



製造業の雇用も引き続き冴えない。8月NY連銀景況指数雇用者数は-1.4と、+4.7からマイナスに転じた。フィラデルフィア連銀景況指数の雇用も-6.0と、7月-1.0から一段と悪化。コンファレンスボードが発表した雇用現況で雇用が「十分」との回答は40.3%と、2月から低下基調にある。前年同月47.6も下回った。これに対し、「不十分」との回答は45.6%と、2月から6カ月連続で上昇。前年同月の40.8を上回った。「困難」との回答も14.1%と、11.3%から上昇。昨年の11.6%も上回り、消費者が雇用市場への自信を無くし始めたことが新たに証明された。



最新7月JOLT求人件数も882.7万件と予想950万件を大幅に下回り、21年3月以降ほぼ2年超ぶりの低水準となった。雇用市場への自信をあらわすと注目している自主的退職者数は25.3万人減の354万人と、21年2月来で最低。採用者数も16.7万人減の577万人と2021年1月来で最低となった。さらに、JOLTの回答企業が31%にまで低下していることで、統計の正確性が疑問視されており、実際は労働市場が一段と悪化していると警戒している市場参加者も少なくない。



失業率が依然歴史的な低水準で推移しているほか、週次失業保険申請件数が20万件台で安定していることは労働市場の強さを示すが、米雇用統計ではネガティブサプライズに備える必要もある。



■8月雇用先行指標

ADP雇用統計:+17.7万人(予想:+19.5万人、7月:+37.1万人←+32.4万人)



NY連銀景況指数雇用者数:-1.4(+4.7)

週平均就業時間:-10.7(+0.3)

6カ月予想

雇用者数:+24.9(+13.2)

週平均就業時間:‐1.0(-5.9)





フィラデルフィア連銀景況指数

雇用:-6.0(-1.0)

週平均就業時間:6.3(-3.0)

6カ月予想

雇用:12.0(21.3)

週平均就業時間:8.3(16.5)



フィラデルフィア連銀非製造業

雇用:フルタイム8.1(11.9)、パートタイムー0.7(?3.9)

週平均就業時間:-1.5(+3.4)

6カ月予想

雇用者数:+21.3(+13.1)

週平均就業時間:+16.5(0.6)





週次失業保険申請件数



08/19/23|  230,000|  -10,000|  236,750|   n/a

08/12/23|  240,000|  -10,000|  234,500|   1,702,000

08/05/23|  250,000|   23,000|  231,500|   1,711,000

07/29/23|  227,000|   6,000|  228,250|   1,684,000

07/22/23|  221,000|   -7,000|  233,750|   1,692,000

07/15/23|  228,000|   -9,000|  237,500|   1,679,000

07/08/23|  237,000|  -12,000|  246,750|   1,749,000

07/01/23|  249,000|   13,000|  253,500|   1,721,000



コンファレンスボード消費者信頼感指数

現在の業況

雇用

十分:40.3(7月43.7、前年同月47.6)

不十分:45.6(45.0、40.8)

困難:14.1(11.3、11.6)

6カ月後

雇用:

増加:16.7(16.6、17.1)

減少:18.0(15.6、19.6)

不変:65.3(67.8、63.3)

所得

増加:16.5(17.8、16.6)

減少:12.4(9.9、13.9)

不変:71.1(72.3、69.5)



■市場8月雇用統計予想

・非農業部門雇用者数:予想:+17万人、6月:+18.7万人)

・失業率:予想:3.5%、7月3.5%)

・平均時給:前年比予想:+4.3%、6月:+4.4%)