ドイツ・ハンブルグで今月6-7日に開催された主要20カ国・地域首脳会議(G20)の集合写真は、足元のユーロ・ドルの値動きを暗示しているのかもしれません。ドイツのメルケル首相が前列中央に陣取り、アメリカのトランプ大統領は隅に追いやられているように見えます。





議長を務めたメルケル首相の右隣に中国の習近平国家主席、さらにロシアのプーチン大統領が並ぶ一方、トランプ大統領はといえば、左脇の方で所在なげにしていたのが印象的です。自国利益優先のため「パリ協定」を脱退したアメリカが、各国の冷ややかな目に耐え切れなかったわけではないでしょう。ただ、首脳宣言は「保護主義と闘う」で一致したものの、相変わらず保護主義を訴えるなど、トランプ政権下のアメリカが従来の指導的立場を放棄した姿は覆い隠せないようです。





実は、集合写真の左端に収まったのはトランプ大統領ではなく、フランスのマクロン大統領でした。39歳のマクロン大統領は5月のフランス大統領選で対立候補だった国民戦線のルペン党首を大差で破り、6月11日、18日の議会選でも自身が党首として率いる中道系「共和国前進」が圧勝。今や飛ぶ鳥を落とす勢いです。英語の使い手でもあるマクロン大統領はトランプ大統領に何やら話しかけながら自分が外側に回るという大人の対応を見せつけました。





メルケル首相も、自身が率いるキリスト教民主同盟(CDU)は今年に入って行われた州議会選に3戦全勝し、9月の総選挙でも勝利が見込まれるなど余裕が見て取れます。ドイツ語に堪能なプーチン大統領と差しで話し込む映像には、欧州連合(EU)とロシアの関係の深さが感じられました。また、マクロン大統領がトランプ大統領とメルケル首相の対話をお膳立てするようなシーンもあり、今回のG20はユーロ圏内の政治リスクを払拭しつつあるEUの健在ぶりが目立ちました。





足元のユーロの上昇は、欧州中銀(ECB)がこれまでの金融緩和策を転換させ、引き締めを進めるとの思惑によるものですが、政治のアク抜けも大きな要因です。他方、ドルに関しては、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)がECBより一足先に金利の正常化に着手したものの、当局のタカ派寄りの引き締め方針に懐疑的な見方が広がり、買いを集められていないようです。トランプ政権の政策運営の遅れや「ロシアゲート」疑惑も、ドルを買いにくくさせる要因です。





ユーロ・ドルは2008年7月に1.6ドルに到達後、リーマン・ショック以降は長期下落トレンドに振れていました。今年1月にはリーマン後最安値の1.03ドル台まで落ち込み、1.00ドルのパリティが視野に入っていました。しかし、その後は反転し、足元は1.14ドルまで戻しています。アメリカは、ドイツを通貨安誘導の監視対象国としていますが、アメリカがあえて望まなくても、通貨は国際政治の力関係で自然に修正されるでしょう。今回のハンブルグG20はユーロ復活のきっかけになったのではないでしょうか。



「吉池 威」