安倍晋三内閣の支持率低下に歯止めがかからず、今後の政権運営に不透明感が増しています。自民党総裁選や衆院議員任期を来年に控え、金融市場には政局リスクが広がりをみせることも予想されます。今後の政治日程から、どのようなシナリオが描けるでしょうか。





7月2日の東京都議会選挙で自民党が歴史的惨敗を喫したのは想定通りでしたが、その前日に東京・秋葉原で応援演説に立った安倍首相に対する「辞めろ」「帰れ」コールは、政治情勢の潮目の変化を政権内外に知らしめました。実際、政権寄りの国内メディアからも批判的な報道が出始め、支持率は半月で40%台から10ポイント程度に低下、一部の調査では30%も割り込んでいます。これまでは「テールリスク」とされた安倍首相の退陣シナリオが、現実のリスクとして認識され始めています。





今後の政治日程をみると、年内は自民党人事・内閣改造(8月)、憲法改正の発議(年内)、2018年に入って通常国会(1-6月)、日銀総裁人事(3-4月)、自民党総裁選(9月)と続き、秋以降は改元に向けた皇室行事が集中する見通しです。安倍首相としては、総裁選に勝利して総選挙を乗り切ったうえで2019年10月の消費増税や2020年夏の東京オリンピックを見届け、2021年9月の自民党総裁任期満了で退陣するストーリーを思い描いているはずです。その間に憲法改正を実施したい考えに変わりはないでしょう。





逆に、安倍首相が避けたいシナリオは、支持率がなお下がり続け、解散を求める声に抗しきれずに総選挙に臨み、議席を減らした挙句の辞任。もう1つは、まさかの総裁選敗北による退陣でしょう。自民党内では今後、財政政策論議が活発化するとみられ、安倍首相を支持する成長重視派と、反アベノミクスの財政規律派に色分けされつつあります。これが総裁選の争点になっても不自然ではなく、今後党内対立に発展する可能性もあります。





安倍政権を支えてきた株価にも、影響が及ぶかもしれません。日銀は物価2%上昇の達成に向け、金融緩和策の一環で国債や上場投資信託(ETF)などを購入していますが、目標達成時期は後ずれし、日銀内でもその有効性が疑問視されています。黒田東彦総裁は今後についても買入れ継続を打ち出しているものの、「官製相場になって割安感が生まれず、個人投資家が買いにくい」(証券業界)との声もあり、支持率低下とともに政策への批判が強まるかもしれません。一段の株高・円安に振れる展開は見込みにくい状況です。





安倍首相は第1次政権時代に参院選敗北で求心力を失い、わずか1年で辞任しました。2012年の再登板は憲法改正などの実現のほか、そのような不名誉な過去の払しょくを期したと推察されます。そうであるなら、支持率が下がりきらないタイミングで「損切り」の発想で解散に打って出た方がきれいな形で政権を手放すことができると思われます。もっとも、早期解散・総選挙で敗北して退陣する可能性もありますが、それも潔い去り際と言えるのではないでしょうか。



(吉池 威)