アメリカのトランプ大統領が就任してから半年あまり。内政・外交とも混乱に次ぐ混乱で、支持率は下がる一方です。しかし、だからといって野党・民主党が政権批判の受け皿になれていないのもまた現実です。トランプ氏は、早くも2020年の再選に意欲を示しているようですが、民主党はこの先巻き返しに転じることができるでしょうか。





昨年11月の大統領選にロシア政府が関与したとされる「ロシアゲート」疑惑は、選挙戦の最中にも囁かれていましたが、関連報道はトランプ氏就任後に一層熱を帯びています。ある短期筋は「ドル売り要因として、連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め期待の後退よりもインパクトが大きい」と指摘しています。実際、今月下旬にはトランプ陣営関係者の議会証言が警戒され、ドル・円は110円台に値を下げました。一方、公約のヘルスケア関連法案についても、議会運営の調整が進まず成立には至っていません。





トランプ政権のそんな体たらくにもかかわらず、民主党は支持を集められずにいます。今年4月から6月にかけてカンザス、モンタナ、ジョージア、サウスカロライナの4選挙区で行われた補欠選挙で、民主党はいずれも敗れています。もともと共和党の牙城ではありましたが、民主党はロシアゲート疑惑が深まった機にトランプ氏への批判票を取り込むことで議席を奪い、来年の中間選挙に向け党勢回復につなげたい考えだったようです。しかし、狙い通りにはいきませんでした。





民主党が多くの有権者から信頼を失ったのは、昨年の大統領選での指名候補争いが原因です。当初は泡沫候補とみられていたサンダース氏が反エスタブリッシュメントを訴えたことで本命のクリントン氏を激しく追い上げ、支持率は拮抗。それでも、民主党執行部は大手メディアと一体となって「女性初の大統領」を誕生させようと、サンダース支持が多いとみられた無党派層の投票を制限するなど、途上国並みの挙に出ます。こうした世論を無視した露骨な戦略は、修復不能な党内の分裂を生み、そのまま本選を迎えました。





民主党としては「黒人」の後は「女性」を大統領に送り出し、多様性をアピールする思惑だったのかもしれませんが、大手メディアを使って無理やり「クリントン大統領」を世論にしようとしたことが敗因でしょう。その代償はあまりにも大きく、選挙から8カ月以上経っても復活の狼煙(のろし)はみえず、「反トランプ」を唱えるばかりです。3年後の大統領選で再選を目指すトランプ氏の対抗馬として誰が名乗りをあげるのか、といった話題もあまり聞かれないのが実情ではないでしょうか。





もちろん、次の対抗馬は来年の中間選挙の結果などをみながら絞り込んでいくと思われますが、「スター」不在は否めず、一部ではヒラリー氏の再チャレンジやオバマ前大統領の再登板といったウワサまであります。それだとプロレスの「遺恨マッチ」のようなエンターテインメントでしかありません。もっとも、与党の対抗勢力が弱体化しているために指導者が独裁化する傾向が、日本をはじめ多くの国にみられます。民主主義の総本山であるアメリカで、野党に転落した民主党がどのように立て直すか、見守りたいと思います。

(吉池 威)