米連邦準備制度理事会(FRB)の年内利下げが見込まれるなか、ドル・円相場の先行きは読みづらい状況になってきました。世界的な貿易環境や欧州の政治リスクで他の主要通貨も売られやすく、結果としてドルが押し上げられる場面もありそうです。





平成から令和にかけての10連休は無難通過と思われましたが、終盤になって米中貿易摩擦が再燃し、円買い圧力が強まりました。6月に入ると米トランプ政権がメキシコからの輸入品に制裁関税を設ける方針を示したことで、アメリカの強硬な通商政策で市場センチメントは悪化。ドル・円はこの1カ月間で111円台から107円後半に値を切り下げ、「先読みは困難」(市場筋)との声も聞かれます。





足元のドル売り要因は、米中摩擦の影響でアメリカの景気減速に思惑が広がり、FRBの利下げに現実味が増したことです。実際、6月3日に発表されたISM製造業景気指数など製造業関連をはじめ経済指標の弱さが目立ち始めました。市場は年内1回の「利上げ」を見込んでいたのが、現時点では1-2回の「利下げ」観測に転じています。早ければ7月にも実施されるとの見方から、ドル売りは加速しました。





そうした背景から、ドル・円は6月第1週の取引で107円80銭台に軟化しました。次の下値メドは、1月4日終値の107円50銭台です。ドルはそれを下抜けるとさらに売られ、その日に付けた「フラッシュ・クラッシュ」の際の104円台まで下げるでしょうか。中国は米国の制裁に対する報復としてレアアースの輸出規制に言及しており、両国の対立がさらに先鋭化すればドル売り・円買いは避けられません。





他方、欧州発の政治リスクで欧州通貨も実は買いづらい地合いになっています。欧州連合(EU)の財政規律をめぐりイタリア政府の反EU路線が強まるなか、連立政権内の対立の表面化によりユーロ売り基調は継続。また、イギリスではメイ英首相の退陣に伴う後任選びが本格化していますが、最有力候補のジョンソン前外相が選出されれば合意なきEU離脱の可能性が高まり、ポンド売りが再開しそうです。





ユーロ圏経済はインフレの鈍化が目立ち、欧州中銀(ECB)も緩和的なスタンスを維持せざるを得ないでしょう。また、中国と交易関係の深いニュージーランド、オーストラリアは景気減速で相次いで中銀が利下げを決めています。資源国通貨も原油価格の弱含みで積極的な買いは手控えられそうです。そうなると、利下げが見込まれても高成長のアメリカが「最もマシ」との判断からドルが選好される可能性があります。





6月第1週はドル売り基調が鮮明になった影響から、主要通貨の上昇でクロス円が強含み、ドル・円は下落局面でも底堅く推移しました。目先は米連邦公開市場委員会(FOMC)や英保守党党首選び、G20大阪サミット、そして通常国会会期末と重量級のイベントが続きます。ただ、株価や長期金利の影響を受けるものの、やはりドル選好地合いで極端な下げは見込みにくいというのが筆者の見立てです。



(吉池 威)



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