市場のテーマはインフレから景気後退に移り、日銀の緩和政策を背景とした過度な円安は一服したもようです。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)はドル高を事実上容認し、ドル・円はなお上昇基調を維持。今後、為替介入で相場の上昇を抑制できるでしょうか。





足元で発表された米国の消費者信頼感指数やISM製造業景況指数が想定よりも弱い内容となり、インフレ高進と景気減速が同時に進むスタグフレーションの到来が懸念されています。アメリカのみならずユーロ圏やオセアニアにもその警戒が広がり、世界経済の先行き不透明感が深まってきました。そのため安全通貨買いに振れ、ドルと円への買いがドル・円相場を下押しする展開が続いています。





しかし、パウエルFRB議長は前週の討論会で、為替相場に「責任を負わない」と最近のドル高をなかば容認。一方、岸田政権が参院選前に閣議決定した「骨太方針2022」は大胆な金融政策や機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略で「アベノミクス」復活のような印象を与えました。参院選で与党が勝利すれば、日米中銀の政策方針の違いを背景にドル買い・円売り再開の可能性もあります。





東京商工リサーチによると、円安を原因とした6月中の企業倒産件数は5月に続きゼロでした。が、ウクライナ戦争などにより原材料や資材、燃料の高騰が中小企業の業績を圧迫。コロナ禍による業績の低迷から抜け出せないなか、円安がさらに進めば業績を悪化させると予想されます。そうなれば、政府・日銀がいずれ円安に歯止めをかけなければならない場面もあるでしょう。





主に日銀の緩和解除と政府の為替介入が考えられますが、日銀の政策転換は困難です。また、円買い(ドル売り)介入は外貨準備高の限度があるほか、政府保有の米国債の売却にもつながり、かえって日米金利差の拡大によりドル高・円安を招く危険もあります。そうした理由から、為替介入も不可能とみられています。といっても、「注視する」だけでは円売り安心感に一撃を食らわすことはできません。





世界を見渡すと、主要国から新興国まで多くの国々がドル高に伴う自国通貨安に苦しんでいます。例えば、インドは直物と先物を組み合わせてルピー買い介入を仕掛けましたが、逆にルピー安を助長してしまい、現在はスムージング介入に絞ったようです。また、ベトナムも積極的なドン買い(ドル売り)介入を繰り返しているものの、ドン安のペースを少々弱める程度にとどまっています。





日本では、ほとんどの市場関係者が国際的同意を得られないとの見方から為替介入に否定的です。ただ、自国通貨を防衛するのに、諸外国の同意を得たり手段を選んだりする必要があるでしょうか。常套句の口先介入だから、投機筋から「やる気がない」と見透かされてしまうのです。本当に「断固たる措置」なら、日本に追随する国もあるはず。そうした「協調介入」によるドル高阻止が待たれます。



(吉池 威)





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