ドル・円相場の底堅い値動きが続き、次の節目となる140円が視野に入ってきました。一方、米国経済のリセッション懸念で、ドル高はそろそろピークにも見えます。しかし、円安には歯止めがかからず、参院選で大勝した岸田政権の政策運営が注目されそうです。





安倍晋三元首相が街頭演説中に襲撃され、その後死亡が確認されると、「アベノミクス」終えんを嫌気した円買いでドル・円はいったん下落。ただ、その日の夜に発表された米雇用統計で非農業部門雇用者数が予想を上回り、雇用情勢の改善による米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げへの思惑がドルを押し上げました。一方で減速懸念も根強く、一段のドル買いは抑制されています。





そして7月11日の参院選で自民党が圧勝すると、翌日の東京市場はご祝儀相場となり、株高・円安が再開。さらに日銀の黒田総裁が異次元緩和の継続方針を強調したことで、ドル・円は節目の137円台に浮上しました。ユーロ・ドルのパリティ付近での攻防でドルは下押しされる場面もありますが、ドル・円の値動きは底堅く、目先は具体的な上値抵抗線が乏しいため140円を目指す展開となりそうです。





ドル・円は目下1998年以来24年ぶりの高値圏で推移するほか、足元の実質実効為替レートは日銀データで1980年以降の最低水準に落ち込み、市場参加者のほとんどが円安の未体験ゾーンといえるでしょう。1998年はアジア通貨危機やロシア危機に見舞われた年として記憶されています。FRBの緊急利下げなどが市場を翻ろうし為替相場は乱高下しましたが、当時を語れる人は少ないかもしれません。





それだけに140円台という高水準で推移するドル・円は想像しがたく、徐々に失速するとの見立ての方が現実的に思えます。実際、金融機関がまとめた今後の見通しではインフレ高進の一服や景気減速懸念による金融引き締め後退の観測が示されており、ドル高は7-9月期がピークとの指摘が散見されます。半面、日銀は緩和一辺倒のため、引き続きドルをはじめ主要通貨を押し上げる要因は残ります。





また、今週来日したイエレン米財務長官は為替介入について「例外的な状況でしか正当化されない」と政府・日銀の円買い介入に釘を刺しています。鈴木俊一財務相が最近の円安を憂慮していると説明したものの、「既読スルー」されたもようでドル高・円安の流れを変えることはできそうにありません。ドル・円が今後、150円台、160円台に進んでも、政府は日米の力関係に身を任せるつもりでしょうか。





風向きを変えるとすれば岸田政権の政策運営でしょう。自民党の最大派閥である安倍派の四分五裂は避けられず、今後は宏池会系の岸田派の増強などの可能性もあります。「リベラル」を自称する岸田首相が9月の党人事・内閣改造でムードを刷新できれば、円安も次第に収束すると期待しています。



(吉池 威)





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