世界経済の減速が警戒されるなか、豪ドルの底堅い値動きが目立っています。豪経済へのダメージは他の主要国に比べそれほど大きくないとの見方が背景にあります。米リセッション入りで「ドル1強」が収束するなか、存在感を示すことができるか注目されます。





7月27日に発表された豪4-6月期消費者物価指数(CPI)、翌28日の小売売上高はいずれも予想を下回り、回復持続を期待した豪ドル買いはいったん後退。ただ、8月2日開催の豪準備銀行の定例会合での利上げ幅拡大への期待はやや低下しているものの、前回と同様0.50pt利上げはほぼ確実視されています。豪ドル・ドルは0.70ドル付近と、今年6月以来1カ月半ぶりの高値圏に浮上しました。





米連邦準備制度理事会(FRB)は40年超ぶりのインフレを抑止するため、7月26-27日のFOMCで0.75ptの利上げを決定。ただ、パウエルFRB議長は今後の利上げペースを緩める可能性に言及しました。その後の米4-6月期国内総生産(GDP)は予想に反し1-3月期に続くマイナス成長で、定義上はリセッション入り。景気回復と金融引き締めによるドル買いは急激に巻き戻され、豪ドルを支えています。





足元は各国の金融政策の違いが通貨の強弱を分ける一要因になっています。商品相場の上昇とコロナ禍からの回復を背景としたインフレ高進で、豪準備銀行は今年5月、2010年以来約11年ぶりに政策金利の引き上げに踏み切りました。その後3会合連続の利上げ幅拡大でタカ派姿勢を強め、足元の政策金利は1.35%に到達。ただ、チャーマー豪財務相は最近の物価高と金利高を「一世代に一度の難局」と指摘しています。





それでも豪ドルが底堅いのは、要因がインフレや金融政策だけではないからです。7月22日に発表された主要国のPMIで欧米の悪化が目立ち、リセッションへの懸念が強まったものの、オーストラリアは世界経済の減速の影響を受けにくいとみられています。例えば、家計の債務よりも保有資産の方が圧倒的に大きいため、景気の腰折れにも十分持ちこたえられると評価されています。





一方、5月の総選挙では労働党が9年ぶりに政権を奪還し、アルバニージー内閣が発足。選挙公約として掲げていた雇用創出や最低賃金の引き上げといった政策が期待され、欧米と比べ景気後退リスクを弱めていることも豪ドル買いを惹き付ける要因です。特に欧州通貨に対して強みを発揮しているようです。同じオセアニアのNZドルに対しても2017年以来の高値圏が視野に入ってきました。





各国とも厳しい状況ですが、ドル失速後は豪与党による政策のプラス面が評価され豪ドルが選好される可能性もあります。



(吉池 威)



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